突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

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3章 最強主人公

475日目その1~OSLC開催~

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寮での生活が始まって、約1か月近く。思ったより生活は思ったより快適だ。

外部との連絡は録音されているものの可能。
基本的には、外出不可。
ただし、未成年のメンバーも居るため、連休などは序列高位の護衛付きで帰宅もできる。

また、この地下施設には、全てが揃っている。
一つの街といっても過言ではない。
スーパーのような生鮮食品のお店から、様々なジャンルの洋服、アクセサリーなども売っている。
電化製品も売られていて、ゲームなど娯楽品もあるし、タバコも全銘柄揃っている。
ジムなども完備。温泉施設まである。
基本的に、何もかも全て無料だ。

また、能力を訓練するための場所『ドーナッツ』があり、半径100m、高さ20mのガラス張りになっているドーム状の空間がある。自由に利用可能だが、7時~22時までの時間制限はある。
ガラスの向こうは観客席になっていて、3階まで席が準備されていて、上部から観覧することも可能。VIP席も完備。ガラスに見えているこの素材は物凄い耐久性があるとのこと。なので、観客に気兼ねすることなく能力を行使することができる。
月末の大会でもここが使われる。

前職の対応だけでなく、今まで住んでいた住居の引っ越しや解約作業、親御さんなど家族への連絡、住民票などの変更、それに伴う銀行や保険などの住所変更手続き。必要な手続きは政府が上手くやってくれているらしい。
本人でもないのにどうやってんだろうか。

俺はアパートを残してもらったのだが、家賃などの維持費などは全額負担してくれるとのこと。

詳細が全く分からないが、今、外の世界で自分は”どういう状態”なっているのだろう。

また、ニヤニヤ1、2についても分かった。

ニヤニヤ1の水の能力者が首謀者。
『垂水 杏介(タルミ キョウスケ)』
16歳だそうだ。

ニヤニヤ2は土の能力者、垂水と同じ16歳で、
『地美 慌(ジミ コウ)』
序列は、土の5位。垂水は4位で2人ともちょうど中堅クラスの能力者だ。
未成年がこの2人しか居ないのでずっと一緒にいるようだ。

OSLCは、ざっくり以下のルールだそうだ。
・4つのグループに分かれたトーナメントで、勝ち上がった4名で最後に特殊ルールでの決勝がある。
・4つのグループは各序列1位が別々に配置され、それ以外はランダムだが、序列高位(4位以上?)になると対戦相手を指名することが可能。
・トーナメントは1対1。
・戦闘中は能力で作った50cm以上100cm以内の大きさの球を大体5m以上の高さに浮かべておく必要がある。球を置く位置はレーザか何かで空中に明示されていてその範囲に留めておかなければならない。これを守護球という。
・勝敗は、対戦相手を場外に出すか、浮かべている球を壊すと勝ち。球が範囲から外れたり、維持できずに消えても相手の勝ち。

球を作って浮かべたまま、戦闘を行うのはかなり大変だ。
意識が球と相手とに分散するから球を維持すること自体が大変だし、常に能力を発動しっぱなしの状態で、さらに相手を攻撃するというのもキツイ。
水元はこの25日間、かなり練習していたが球を浮かべながらとなると、戦いに力を使う事は難しいだろう。
まぁ、何事も経験だから、ガンバレって言っておいた。

前日にトーナメント表が発表され、宣言通り俺の1回戦の相手は垂水だった。
順調に決勝まで行けば不知火と当たる。
水元は、1回戦で里水と当たることになっていた。
後から聞いた話だが、新人は同能力の序列1位と1回戦当たるのが通例らしい。能力の使い方が微妙だから、1位と当てることで不測の自体にも対応できるように考えられたらしい。


ーOSLC開催ー

夢野「皆集まったわね。では、11月のOSLCの開催を宣言します!いつもそうだけど、大きな怪我のないように!1回戦の選手入場してください。」

そのアナウンスで、ドーナッツの中に入場する。
垂水が対面の入場口から入ってくる。
いつものニヤニヤ面はなく、真剣な表情に見える。

夢野「1回戦は新人の火火野君を指名した垂水君の戦いとなります。準備してください。」

俺は火で球を作りレーザの範囲に浮かべる。
50cmが微妙に分からんが、そこは厳密には判定されないとのこと。ある程度の大きさの球だったらOKだそうだ。
垂水も水で作った球をレーザの中に浮かべる。
能力の発動もスムーズで、かなりの実力者である事が伝わってくる。

垂水「…ムカつくが、お前の実力は俺より上だろう、でもこの大会は”それ”だけじゃ勝てないことを教えてやるぜ!」
火火野「それは、楽しみだ。」

俺はズボンのポケットに両手を突っ込んだ。
垂水は腕を腹の位置くらいの高さに、両の掌を上に向けた状態で構えた。

夢野「それでは…始めっ!!」

垂水が俺を見据えて、

垂水「ふん、素人が!」

そういうと、左手の指先にビー玉より一回り大きな水球が5個出現する。
左手を振り、俺に向かって5個の水球を放つ。

前に言った通り、俺には色で能力の発動はすべて見えている。
…こりゃチートって言われてもしょうがないな。
まぁ、水元の時みたいに能力の発動を邪魔することはしないでやる。

俺も”能力覚えたて練習”の時に、腕や指を使って能力を使った方が発動しやすいし、操作も格段にしやすくなる事を知った。
垂水が素人と言い放ったのは、俺がポケットに手を入れ、”それ”をしないように見えたからだろう。

5個の水球はまっすぐ俺に向かってくる。
それと合わせて、右手で野球のボール大の水球を3つ作り、時間差で俺の火球へ向かって放っている。

水球の大きさからみて、そっちが本命だろう。

垂水「終わりだな。恥を晒せ!!」

ジュッ!

守護球に当たる前に、垂水の放った水球は蒸発した。

垂水「何!」

俺に向かって放たれた5個の水球も火を出して蒸発させた。

火火野「球を壊されたら負けるんだ。それなりの防御を施しているのは当然だろう。」
垂水「球を見えない火で防御しているのか!?」
火火野「ちょっと違う。火球自体を強くしているのさ。”物凄く”な。どうする、小手先の力じゃ撃ち抜けんぜ?」
垂水「ぐっ。」

垂水は、両手に1個ずつバレーボール大の水球を出現させ、守護玉に向けて放つ。

垂水「フン!」

両の手を合わせる動作をする。
それに合わせて2個の水球が途中で合体し巨大化、そのまま守護玉に向かわせる。

火火野「ほぅ。」

ジュゥッ!

結果は変わらず。火球の近くで蒸発する。

垂水「…これでも無理なのか。」
火火野「…」

俺は違和感を感じていた。

火火野「お前、それ本気か?」
垂水「…なんだと。」
火火野「いや、本気ならいいんだ。さっさと終わらせよう。」

俺は火球を出現させる。

火火野「浮かべているのと同じくらいの力だ。お前に防ぐ手立てはない。」

垂水は何か考えているようだった。
天岩の方を少し見る。
そして、決意したような表情に変わる。

天岩「垂水、何考えてるの!!」

夢野のところにあるマイクで、天岩が喋っている。
対戦中、中の声は外に聞こえるが、外からはマイクの音声しか聞こえないようになっている。

火火野「やっぱり、なんか隠してるな。」
垂水「…あぁ。」
天岩「止めないさいよ!忘れたの!!」

その言葉で、垂水の表情が”迷い”を浮かべる。

火火野「おいおい。俺の聞いたお汁粉のルールでは、対能力者との実際の対戦を想定し、大きな実力差がない限り全力で戦う事ってあったぞ。何で全力を出しちゃダメなんだよ。」
天岩「あなたには関係ないよ!!」
火火野「関係大有りだね。もう、組織の一員なんだからな。夢野長官、全力を出すことに何か問題あるんですか?」

夢野は天岩からマイクを取る。
少し考えてから

夢野「何も問題ないわ。ルール通りだもの。」
天岩「長官!!」

マイクをオフにする。

夢野「彼のいう事は至極当然。変わるのは私たちの方よ。」
天岩「私は…納得できませんよ!あんな事、もう二度と起こしちゃいけないんです!!」

夢野と天岩がなんか揉めてるように見えるが、声が聞こえんからまぁ置いておこう。

垂水「後悔するなよ。」

吹っ切れた表情の垂水が頭上に手を掲げる。

火火野「心配すんな。俺の方が圧倒的に強いから。何も考えず全力でぶつかってこい。」
垂水「相変わらずムカつくぜ。」

能力の色が、垂水の頭上に集まっていく。
今までよりはるかにデカい。

垂水~小さき水の粒達よ。集まり集まり球を成せ。巨大に也て力持て!~

2mほどに大きくなった水球が出来る。
しかも3個。

火火野「ほぅ。やればできるじゃないか。」
垂水「仕方ないから、大けがしたら謝ってやるよ!!」

垂水~大水球圧潰 3重(ダイスイキュウアッカイ トリプル)~

火火野「だが、まだまだだな。」

目の前に作っていた火球を放つ。

ジュォォ!

凄まじい蒸発音。
垂水は大水球の1つ火火野へ、残りの2つは空中の守護球に向けて放っていた。

垂水「さっきのとは、訳が違う!今度こそ終わりだ!!」
火火野「ンな訳ないだろう。」

バジュゥウ!!

凄まじい湯気が舞う。

垂水「ま…マジかよ。」
火火野「さーて、打ち止めかな?」

フーっと息を吐く垂水。

垂水「俺の全てを出し尽くす。」

俺は、自然と笑顔になる。

火火野「それでこそ男の子だ。出し惜しみすんな。全力で来いよ!」

垂水は体の前に両手を突き出す。

垂水~我に従う水達よ。我の意志にて形成せ。全てを飲み込む蛇と成れ。~

垂水の前に2匹の水で作った巨大な蛇が出現する。

垂水~双蛇創成!!~


垂水「これが今の俺の全てだ!!」

2匹の水蛇は守護球に向けて一直線に向かっていく。

火火野「イタズラばかりしている訳じゃない、ちゃんと鍛錬しているからこそ放てるいい技じゃないか。ならば…」

俺もポケットから手を出し、腰の辺りで右拳を握る。

火火野~地獄の炎で天を焦がせ!~

凄まじい火が俺の周りを渦巻く。

火火野~奥義 壊の段 獄炎天焦(ゴクエンテンショウ)!!~

俺は右拳を頭上に上げる。
それに合わせて巨大な火の柱が天に向かって昇っていく。2匹の水蛇に向かって。

カッ!
ゴォオオォオ!!

轟音と共に蛇は跡形もなく消滅する。

垂水を見る。
全てを出し尽くして、意識が飛びそうになりながら、すっきりした良い顔をしている。

垂水「くそが、化物め…」

ドサッ…

そう言って、垂水は倒れた。
水の守護球消え、勝負は俺の勝ちとなった。

火火野「よいしょっと。」

俺は垂水を抱え、退場する。
入場してきた所から出ると、天岩が立っていた。

その表情は、般若と見紛う程凄まじいものだった。
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