突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

文字の大きさ
19 / 43
3章 最強主人公

477日目その3~序列1位へ各々の戦い(風嵐兄妹戦プロローグ)~

しおりを挟む
火の1位2位の試合が終わり、水崎vs志風戦が開始される。

志風は序盤から風を上手く操り、詠唱をさせない戦いを展開するが、最小の水で風を捌ききった水崎が、力を溜めた強力な攻撃で隙を作り、詠唱を発動させ勝利する。

土橋vs火森戦は、遠距離から砂を撃つ土橋と不知火と同じように腕に火を纏って近距離に迫る火森。なかなか近づけない火森が攻めあぐねているように見えたが、土橋に気づかれないように火球を作り、それに力を溜めて守護球を撃ち抜き火森が勝利した。

序列上位に勝つとは、火は本当に皆地力がある。不知火、火狩の努力が良く見える。

そして、最初のトーナメント決勝が開始されようとしていた。

風嵐兄妹戦。


時は少し巻き戻り、土橋と火森が熱戦を繰り広げている時。

雷華は入場口で待機していた。
少し緊張しているようだ。

そこへ。

駆「雷華。」
雷華「兄さん!どうしたの!?」
駆「少し話たくてな。」
雷華「これから試合よ?」
駆「あぁ。その前にどうしても。な。」

雷華は明らかに困惑している。
そんな中、駆は淡々と話し始める。

駆「なぁ、前の試合で俺が”前”より強くなったって言ってたが、どのくらいお前に追いつけたかな。」
雷華「えっ?自分の事が良く分からないけど、私とあんまり変わらないくらい強いと思うけど…」
駆「…じゃぁ、前の俺と今の俺。どちらが強いか分かるか?」
雷華「当然、今よ…」
駆「自信ないんだろ?その言葉に。」

雷華は、しどろもどろになっている。

駆「それがなんでか、俺には分かる。ずっと分かってたのに、分からないフリしてた。薄っぺらいアニキのプライドでな。」
雷華「…」
駆「お前が強すぎるからだよ。負けてからもずっと背中を追ってたと思いたかったのに、プライドにしがみ付いていたら、お前の背中はもう見えなかった。」
雷華「そんな事ないよ!兄さんは強い!!」
駆「前の決勝戦。俺が手を抜いていたことに気づかなかったろ?お前は、手を抜いていた俺に勝った後にこう言ったんだ。」

雷華の顔が強張る。

駆「今回は危なかった。本当に負けそうだった。やっぱり強いよ兄さん!!ってな。」

駆の顔を雷華は見られない。

駆「俺を気にして、決勝でも本気でやれてない。本当に情けないよ。」
雷華「…兄さん…」
駆「火火野が、詠唱を解禁してくれたんだ、本気でやりあってくれよ。前みたいに。」
雷華「…」
駆「邪魔したな。」

駆は、自分の入場口に向かい去っていった。
雷華は、今にも泣きそうな顔をしている。

雷華「…火火野さん居ますね。」
火火野「あぁ。」
雷華「貴方を責める気はありません。全て…私のせいですから。」
火火野「残念ながら、俺には雷華の気持ちは分からない。でも駆の気持ちは少し分かる。」

雷華はえっ?という顔をしている。

火火野「俺もアニキだからな。」
雷華「そうなんですね。私は兄さんの気持ちなんて一切分かっていなかった。ただ、ただ傷つけていたんですね。」
火火野「それは、違うな。まぁ、傷はついていただろうが、お前の優しさに必死で応えようと、必死で修練を積んだんだ。だからお前は、駆を推し量って手を抜かず、ただただ全力で相手をしてやるだけで良かったんだよ。中途半端な優しさはナイフより良く切れるんだぜ。」
雷華「……」

雷華は少し目を瞑り、ゆっくりと見開く。

火火野「うん。大丈夫そうだな。」
雷華「火火野さん。兄さんは私の憧れなんです。嘘じゃありません。」
火火野「あぁ、分かってる。」
雷華「だから。本気でぶつかります。」
火火野「あぁ。頑張ってな。」

土橋、火森戦がちょうど終わり、入場のコールがかかる。

雷華は、さっきまで捨てられた子猫みたいな顔だったのに、今は凛と咲いた一輪の百合のように一片の曇りもない。

ずっと嘘をつき続けてきた優しい兄妹の、”想い”をぶつけ合う本気の戦いが、幕を開ける。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...