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3章 最強主人公
477日目その3~序列1位へ各々の戦い(風嵐兄妹戦プロローグ)~
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火の1位2位の試合が終わり、水崎vs志風戦が開始される。
志風は序盤から風を上手く操り、詠唱をさせない戦いを展開するが、最小の水で風を捌ききった水崎が、力を溜めた強力な攻撃で隙を作り、詠唱を発動させ勝利する。
土橋vs火森戦は、遠距離から砂を撃つ土橋と不知火と同じように腕に火を纏って近距離に迫る火森。なかなか近づけない火森が攻めあぐねているように見えたが、土橋に気づかれないように火球を作り、それに力を溜めて守護球を撃ち抜き火森が勝利した。
序列上位に勝つとは、火は本当に皆地力がある。不知火、火狩の努力が良く見える。
そして、最初のトーナメント決勝が開始されようとしていた。
風嵐兄妹戦。
時は少し巻き戻り、土橋と火森が熱戦を繰り広げている時。
雷華は入場口で待機していた。
少し緊張しているようだ。
そこへ。
駆「雷華。」
雷華「兄さん!どうしたの!?」
駆「少し話たくてな。」
雷華「これから試合よ?」
駆「あぁ。その前にどうしても。な。」
雷華は明らかに困惑している。
そんな中、駆は淡々と話し始める。
駆「なぁ、前の試合で俺が”前”より強くなったって言ってたが、どのくらいお前に追いつけたかな。」
雷華「えっ?自分の事が良く分からないけど、私とあんまり変わらないくらい強いと思うけど…」
駆「…じゃぁ、前の俺と今の俺。どちらが強いか分かるか?」
雷華「当然、今よ…」
駆「自信ないんだろ?その言葉に。」
雷華は、しどろもどろになっている。
駆「それがなんでか、俺には分かる。ずっと分かってたのに、分からないフリしてた。薄っぺらいアニキのプライドでな。」
雷華「…」
駆「お前が強すぎるからだよ。負けてからもずっと背中を追ってたと思いたかったのに、プライドにしがみ付いていたら、お前の背中はもう見えなかった。」
雷華「そんな事ないよ!兄さんは強い!!」
駆「前の決勝戦。俺が手を抜いていたことに気づかなかったろ?お前は、手を抜いていた俺に勝った後にこう言ったんだ。」
雷華の顔が強張る。
駆「今回は危なかった。本当に負けそうだった。やっぱり強いよ兄さん!!ってな。」
駆の顔を雷華は見られない。
駆「俺を気にして、決勝でも本気でやれてない。本当に情けないよ。」
雷華「…兄さん…」
駆「火火野が、詠唱を解禁してくれたんだ、本気でやりあってくれよ。前みたいに。」
雷華「…」
駆「邪魔したな。」
駆は、自分の入場口に向かい去っていった。
雷華は、今にも泣きそうな顔をしている。
雷華「…火火野さん居ますね。」
火火野「あぁ。」
雷華「貴方を責める気はありません。全て…私のせいですから。」
火火野「残念ながら、俺には雷華の気持ちは分からない。でも駆の気持ちは少し分かる。」
雷華はえっ?という顔をしている。
火火野「俺もアニキだからな。」
雷華「そうなんですね。私は兄さんの気持ちなんて一切分かっていなかった。ただ、ただ傷つけていたんですね。」
火火野「それは、違うな。まぁ、傷はついていただろうが、お前の優しさに必死で応えようと、必死で修練を積んだんだ。だからお前は、駆を推し量って手を抜かず、ただただ全力で相手をしてやるだけで良かったんだよ。中途半端な優しさはナイフより良く切れるんだぜ。」
雷華「……」
雷華は少し目を瞑り、ゆっくりと見開く。
火火野「うん。大丈夫そうだな。」
雷華「火火野さん。兄さんは私の憧れなんです。嘘じゃありません。」
火火野「あぁ、分かってる。」
雷華「だから。本気でぶつかります。」
火火野「あぁ。頑張ってな。」
土橋、火森戦がちょうど終わり、入場のコールがかかる。
雷華は、さっきまで捨てられた子猫みたいな顔だったのに、今は凛と咲いた一輪の百合のように一片の曇りもない。
ずっと嘘をつき続けてきた優しい兄妹の、”想い”をぶつけ合う本気の戦いが、幕を開ける。
志風は序盤から風を上手く操り、詠唱をさせない戦いを展開するが、最小の水で風を捌ききった水崎が、力を溜めた強力な攻撃で隙を作り、詠唱を発動させ勝利する。
土橋vs火森戦は、遠距離から砂を撃つ土橋と不知火と同じように腕に火を纏って近距離に迫る火森。なかなか近づけない火森が攻めあぐねているように見えたが、土橋に気づかれないように火球を作り、それに力を溜めて守護球を撃ち抜き火森が勝利した。
序列上位に勝つとは、火は本当に皆地力がある。不知火、火狩の努力が良く見える。
そして、最初のトーナメント決勝が開始されようとしていた。
風嵐兄妹戦。
時は少し巻き戻り、土橋と火森が熱戦を繰り広げている時。
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少し緊張しているようだ。
そこへ。
駆「雷華。」
雷華「兄さん!どうしたの!?」
駆「少し話たくてな。」
雷華「これから試合よ?」
駆「あぁ。その前にどうしても。な。」
雷華は明らかに困惑している。
そんな中、駆は淡々と話し始める。
駆「なぁ、前の試合で俺が”前”より強くなったって言ってたが、どのくらいお前に追いつけたかな。」
雷華「えっ?自分の事が良く分からないけど、私とあんまり変わらないくらい強いと思うけど…」
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雷華「当然、今よ…」
駆「自信ないんだろ?その言葉に。」
雷華は、しどろもどろになっている。
駆「それがなんでか、俺には分かる。ずっと分かってたのに、分からないフリしてた。薄っぺらいアニキのプライドでな。」
雷華「…」
駆「お前が強すぎるからだよ。負けてからもずっと背中を追ってたと思いたかったのに、プライドにしがみ付いていたら、お前の背中はもう見えなかった。」
雷華「そんな事ないよ!兄さんは強い!!」
駆「前の決勝戦。俺が手を抜いていたことに気づかなかったろ?お前は、手を抜いていた俺に勝った後にこう言ったんだ。」
雷華の顔が強張る。
駆「今回は危なかった。本当に負けそうだった。やっぱり強いよ兄さん!!ってな。」
駆の顔を雷華は見られない。
駆「俺を気にして、決勝でも本気でやれてない。本当に情けないよ。」
雷華「…兄さん…」
駆「火火野が、詠唱を解禁してくれたんだ、本気でやりあってくれよ。前みたいに。」
雷華「…」
駆「邪魔したな。」
駆は、自分の入場口に向かい去っていった。
雷華は、今にも泣きそうな顔をしている。
雷華「…火火野さん居ますね。」
火火野「あぁ。」
雷華「貴方を責める気はありません。全て…私のせいですから。」
火火野「残念ながら、俺には雷華の気持ちは分からない。でも駆の気持ちは少し分かる。」
雷華はえっ?という顔をしている。
火火野「俺もアニキだからな。」
雷華「そうなんですね。私は兄さんの気持ちなんて一切分かっていなかった。ただ、ただ傷つけていたんですね。」
火火野「それは、違うな。まぁ、傷はついていただろうが、お前の優しさに必死で応えようと、必死で修練を積んだんだ。だからお前は、駆を推し量って手を抜かず、ただただ全力で相手をしてやるだけで良かったんだよ。中途半端な優しさはナイフより良く切れるんだぜ。」
雷華「……」
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火火野「あぁ、分かってる。」
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雷華は、さっきまで捨てられた子猫みたいな顔だったのに、今は凛と咲いた一輪の百合のように一片の曇りもない。
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