突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

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3章 最強主人公

477日目その4~序列1位へ各々の戦い(風嵐兄妹戦)~

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入場してきた雷華を見て、駆は少し安心する。
迷いがなく、他の感情に揺れてない。集中が見て取れる。

そうだ、それでいい。

駆は、自分も分かっていないが、少し顔が緩んでいた。

お互いが、守護球をセットする。
それを見て、夢野が発する。

夢野「それでは、OSLCグループ4決勝…始め!!」




お、両者動かない?

そう視えているだろう。俺以外には。

静かに、でも早く、相手の風を読んでお互いに大きな攻撃の芽を摘んでいる。

火火野「すごいな。」

思わず感嘆の声が漏れる。

膠着している状況を動かしたのは、駆だった。

雷華の風を払いつつ、会場の砂を舞い上げて煙幕を張った。

雷華「風を方々に撒くことで、感知を難しくしてる。」

その瞬間、雷華の目の前に駆が飛び込む。

両の手を球状に重ねて中の隙間に風の渦を発生させていた。

駆「詠唱を使わなくても強力な攻撃はできるんだぞ。吹っ飛べ!!」

雷華めがけて、駆の両の手から暴風がほぼゼロ距離で放たれる。

雷華「まだまだですッ!」

雷華は両腕で大きく円を描き、目の前に風の渦の壁を発生させ、自分から外れるよう暴風をいなそうとする。

駆~自由に駆る風達よ 我が想いに応え刃となれ。~

詠唱!!煙幕、無謀な特攻からの強撃。全てはこの技のための布石。

駆「この風は全てを切り裂く!終わりだ!!」

駆~縛られし風刃 村雨~

駆の手を伸ばした先には雷華の守護球。
一直線に風の刃が、空気を切り裂いて進む。

雷華「甘いです。」

雷華~鎌鼬 3つ鎌 乱れ舞~

風の鎌が3つ、駆の村雨をバラバラに切り裂いた。

駆「何だと!?」
雷華「…兄さんの詠唱に合わせて、こちらも詠唱をしていたまでです。コッソリね。」

駆の顔がニヤつく。


駆『これが…本気か。いや、多分…』

一旦距離を取ろうと、駆が後ろに飛ぶ。

雷華「逃しません!」

風で追い打ちをしようとする。
その前に駆は空中で、手を握りこむと雷華の背後に風が集まる。

追い打ち用の風をそちらに回し、掻き消す。

雷華「さっきの暴風の残滓をかき集めただけですか。こんな簡単な陽動にかかるなんて…ちょっと緊張しているみたい。私の判断が鈍いわ。」

駆~我が求むは百の刃 万物を斬する風の刀~

駆「俺は、まだ全てを出していないぞ!!」

駆~百刃万華(ヒャクジンバンカ)~

弧を描く大量の風の刃が雷華の守護球に襲い掛かる。

パリッパリッ

雷華「全てを見せていないのは…私もです!!」

カッ!バリバリバリッ!!

それを見ている全ての人間が驚愕した。

里水「…雷か…」

稲光が会場内を駆け抜け、駆の風を撃ち抜いた。

駆は、嬉しそうな表情を堪えられていない。

駆『これが、雷華の本気か…でも、だからこそ、俺の最大をぶつける意味がある!!』

雷華「兄さん。終わりにしましょう。」

バリバリと、雷が雷華に纏わりついている。

駆「あぁ、これが俺の全てだ。」

腰の辺りに右手を持っていき、駆は居合抜きのような構えをとる。
対する雷華は、槍投げのような構えだ。

駆~我が放つこの一撃は全て切り裂く風の閃き~
雷華~我が放つこの雷は全て貫く無敵の槍~

この兄妹は、今、久しぶりに笑顔になっているのではないだろうか。
全てをぶつける。
こんな簡単な事がなんでできなかったのか。

駆~居合 風一閃 龍爪~
雷華~雷神の槍 轟雷一貫(ゴウライイッカン)~

駆の放った風の刀を、槍の如き雷が貫く。
そのまま、駆の守護球も貫いていた。

天を仰ぐ駆。
安堵と不安の表情を浮かべる雷華。

駆「雷華、ありがとう。」

その言葉を聞いた、雷華は。

雷華「兄さん。…ごめんね。」

その、謝罪は本当に多くの意味を包んでいる。
優しい謝罪だ。

駆「…今度は俺が追いかけるよ。あの時のお前みたいに。必死でな。」
雷華「絶対追いつかせないから。あの時と同じよ、全力で走るからね!」

握手を交わしながら、嘘の無い本心の会話をする。
いつぶりだろうか。

夢野「けっちゃーく!!風の序列1位 風嵐 雷華。これからも頑張ってね!!」

雷華は、軽く観覧席に会釈し退場する。


退場口を潜った時。

火火野「お疲れ。流石に見ごたえがあったな。」
雷華「色々と、お世話になりました。」
火火野「いえいえ、どういたしまして。と、言いたいところだが、今回はほとんど駆が頑張ったから、俺はちょっと世間話をしただけだったな。」
雷華「世間話?」
火火野「そう。俺と妹の話しを、ちょっとだけな。」
雷華「妹さんがいらっしゃるんですね。知りませんでした。」
火火野「まぁ、言ってないしな。」
雷華「まぁ、本当に色々ありがとうございました。」

深々とお辞儀をする。
雷華は本当に…いや、セクハラだ。

雷華「…でも、これであなたの1位は無くなりました。私はもう負けませんから。」
火火野「ほう。」
雷華「ま、これからの決勝戦、応援してますから。」
火火野「フッ、ありがと~」

と、ヒラヒラと手を振りながら、入場口へ向かっていく。

さぁ、不知火。俺たちの番だ。
最高のシチュエーションだろう!全力でぶつかってこい!!

その全てをぶっ飛ばしてやる。
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