突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

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3章 最強主人公

477日目その6~序列1位へ各々の戦い(里水vs水崎戦前のやり取り)~

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救護室では、里水が水のドームを作って不知火を治していた。

里水の試合は少し開始時間を遅らせるとアナウンスがあった。

里水「もう大丈夫だろう。」
火火野「すまない。試合前に迷惑をかけたな。」
里水「まぁ、複数個所の骨折程度だったから、俺達なら何もしなくても1週間程度で完治しただろうがな。」

すぐ直る怪我だから、気にするなという事だろうか。
里水なりのフォローなのだろう。
複数個所の骨折は十分重傷だと思うが。
骨折が1週間程度とは…なかなかの化物になっていると実感する。

里水「お前は凄いな。」
火火野「…どうしたんだ。唐突に。」

里水は、いつも通り無表情で続ける。

里水「俺は、何か月間もトップだったのに、何の問題も解決できなかった。俺は…無能だ。」

顔はいつもの無表情だが、影が落ちている。
俺は少し溜めてから。

火火野「いや、それは、違うな。」
里水「何だと?」
火火野「土田も、駆も、不知火も夢野長官だって言ってたよ。里水は良く動いてくれているってな。」

里水は、驚きを隠せていなかった。


ー天岩との一件が終わった後の土田の病室の回想


土田「そうそう、里水さんにもお礼を伝えておいていただけますか。」
火火野「里水に?別に構わないけど。」
土田「あの人、度々お見舞いに来てくれて、でも”あんな感じ”なんで会話が続かなくて、めちゃくちゃ気まずかったりするんですけど、土筆さんや垂水、地美の事を教えてくれたりとか、焦らないように治せ、でも皆待ってるから早く帰ってこい。とか、口下手だと思うんですけど、頑張ってすごい励ましてくれるんですよ。」
火火野「そうなのか…」
土田「まぁ、何回来ても絶対気まずい時間があるんですけどねw」
火火野「w」


ー駆と入場口で話していた時の回想


駆「雷華とのこと、里水も気にかけてくれてたな。」
火火野「へぇ、里水がねぇ。」
駆「お前と違って、まどろっこしい気の使い方だったがな。練習で困っていることは無いか、伸び悩んでいたりしないか、相談したかったらいつでも聴く。て感じだったな。多分だが、コミュニケーションとるのが大の苦手だろうに…お前と違ってな。」
火火野「まぁ、誉め言葉として受け取っておくよ。そうか、里水がな…」
駆「何の解決にもなってないけど、なんだろうな…ちょっと救われてたって表現が合っているか分からんが、楽にはなってた気がする。」
火火野「良い奴なんだな、里水は。」
駆「あぁ。お前と違ってなw」


ー夢野と天岩の件を話した時の回想


夢野「里水君もすごい気にしてくれてたんだけどね。」
火火野「へぇ、”あの”里水がねぇ。」
夢野「よく周りを見ているというか、気にするように気を使っているというか。土田君のお見舞いにも良く行ってたみたいだし、詠唱の件については何回か相談しに来たし。序列が能力間に悪影響を及ぼしているって事もどうにかしようと相談してくれてたし。」
火火野「ほうほう。…1位の責任感ですかね。」
夢野「本意は分からないけど、責任というより使命って感じかな。少なくとも、1位になったから動かないといけないって感じじゃなく、何とかしたいって主体性を感じたわ。」
火火野「そうですか…だからあの時もすぐ動いたのか…」
夢野「?まぁ、任せたわよ~。」


ーOSLC前に不知火と世間話した時の回想


火火野「里水が全体1位なのか。で、お前が4位で、火は他の能力から舐められているw」
不知火「ガッハッハ!申し訳ない次第だな!」

その笑い声とは裏腹に、少し憂いを表情に浮かべる。

不知火「でも、アイツは何とかしようとしてくれているな。」
火火野「アイツ?」
不知火「里水だ。」
火火野「へぇ、あの鉄仮面がね。人間味あるんだな。」
不知火「ガッハッハ!常に無表情で無口だから仕方ないがな。OSLCの後、必ず話に来てくれるのは、アイツくらいのもんだ!」
火火野「上目線で慰めに来てくれんのか?w」
不知火「いや…長所を伸ばしてて良い。とか、他の能力との揉め事があったら相談して来い。とか、基本、激励とアドバイスだな。」
火火野「意外だ。というと失礼だな。」
不知火「里水は、本当の意味で良い人だと思うぞ。まぁ、端から分からんのが玉に瑕(キズ)だがな!ガッハッハ!」


ー現在に戻る


火火野「皆、何だかんだ言っていたが、総じて感謝していたよ。」
里水「そうか…無駄ではなかったということか。」
火火野「それに、俺も凄いと思ってるぜ。お前の事。」
里水「そうか?俺は何も解決できなかった。結局の所な。」
火火野「解決できたから有能で、解決できなかったら無能なのか?俺は、そう思わない。お前が動いたから、ギリギリのところで踏ん張れた奴もいるんじゃないか?俺は4人からしか聴いていないが、お前は気になったらその全員に話をしに行っているだろ?そんな事、万人がマネできる事じゃない。」

里水は、いつもの表情に戻っているように見える。

火火野「俺は、知っている。里水 冷っていう凄い良い奴が、このSWEETを支えてきた事をな。」
里水「…」

里水は何か、良く分からない何かをグッと感じ取っているように見え、その表情が少し緩んだ気がした。

里水「…色々、ありがとう。」
火火野「それも、違うな。こっちからだよ、礼を言うのは。今まで凄い頑張ってきたな!お前がいたから皆頑張れたんだ。俺もそうだが、皆、ありがとうって言ってるぜ!」

里水の眼から何かが伝った様に見えたが、気のせいか。
里水はスッと背を向け。

里水「だがな。」
火火野「?」

横顔が見えるくらいだけ振り向く。

里水「1位は譲らない。」
火火野「ハッ。まずは、次の試合勝ってから言えよ。」

里水は右手を上げて、会場に向かう。

その背中は、何か新しい雰囲気を漂わせ、今までより大きく見えた。


夢野「お待たせしたね!!それでは!グループ2の決勝を開始します!里水君、水崎さんにゅーじょー!」

さて、ニュー里水がどんな戦いを見せてくれるのか。
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