突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

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5章 なんでもできる男のどうすることもできない過去

510日目その1~告白と告白~

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事件が解決し、本日、お祝いの会が開かれることになった。

ちなみに、火村と波風は2人とも、お咎めなしとなった。
理由は分かると思うが、首相が一肌脱いでくれたからだ。

事件後解放された首相はすぐに記者会見を開き、こう説明した。

首相「えーっ、本日の出来事は緊急時の対応を確認するための訓練でした。この結果を受けて、また警護の体制など検討させていただければと思います。」

非情に苦しい嘘だが、押し通してくれた。
もし、犯人に波風が居なければ…いや、たらればはやめておこう。

ということで、SWEETに新たに2名の新メンバーが追加された。

夢野「と、いう訳で。無事に事件解決した記念と、新メンバーの加入を祝って…カンパーイ!!」

どういう訳だよ。というツッコミは皆心の中で留めておいた。

施設内にあるレストランで、メンバー全員が集合して会食。

いつもお世話になっているレストラン。
和洋中なんでも揃っていて、オーダー次第でなんでも作ってくれる。

そのシェフが腕によりをかけて、ものすごい量の料理が並んでいる。

舌鼓を打ちながら、成年はお酒を飲んでも良い。
でも、まだお昼だけど。

まぁ、昼から飲むビールは、やっぱりおいしく感じるものだ。

水元「久しぶりですね。火火野さんと飲むの。」
火火野「あーそうだな。何だかんだで忙しかったしな。」

俺と水元はグラスを当てる。

水元「空けてくれないんですか?」
火火野「おいおい、どういうノリだよ。」
水元「次も待ってますよ?」

と、指をさした先に、火村と波風。

火村&波風「この度は、色々とすいませんでした!」

俺は、フーっと息を吐き。

火火野「俺は特に何もしていない。吹っ飛ばして投げ飛ばしただけだ。後、本当にお前たちのために尽力してくれた人たちには、謝罪ではなく礼をするんだな。」

火村と波風はお互いを見て。

火村&波風「分かりました!ありがとうございました!!」

と、夢野長官の方へ駆けていった。

俺は、チビチビビールを飲みながら。
水元のビール瓶を取り上げていた。

火火野「で、空けないのか?」
水元「いただきます。」

里水は飲んでも無表情のまま。
天岩は酔って、垂水と地美に絡んでいる。
そこには土田の姿もあり、本当に楽しそうだ。
雷華と駆も楽しそうに会話しているが、内容は、「どうやれば簡単に高火力が出せる」だとか「こんな技思いついた」とか、おおよそ兄妹とは思えない会話をしていた。仲が修復できたのは良かった。

他のメンバーも楽しそうに、夢野長官は火村と波風を昨日の事件を笑い話にしながら皆に紹介していた。
ただ、集団から離れると笑みの中に少しの暗さを感じる。

数時間過ぎ、俺は外で酔いを醒ましていた。
そこに、雷華が水を持ってくる。

雷華「大丈夫ですか?」
火火野「あぁ、大丈夫だよ。少し風に当たりたかっただけだ。」
雷華「人工の風ですけどねw」

普段と違い、コロコロ笑っている。
酔ってるのかな?

雷華の方を見ると、こちらをジッと見つめている。

火火野「ど…どした??」

焦ってカミカミになる。

雷華「私の胸を自由にできるのは、彼氏か旦那さんしかいません。」
火火野「…は?」
雷華「その権利をあなたに差し上げましょう。」
火火野「…はぁ。」
雷華「嬉しくないんですか?」
火火野「いや…雷華…酔ってんだろ?」
雷華「酔わないとこんなこと言えません。」

じゃ、ダメだろ。と思ったが。

雷華「でも、あなたへの想いは酔ってても覚めても変わりません。」

雷華は、真っ赤な顔をしながら、でも、その大きい真っ黒な瞳は真剣にこちらを見据える。

雷華「あなたの…その眼鏡の奥の灰色の瞳に、私は映っていませんか?」

雷華は、どんどん続ける。

雷華「あなたはいつもニコニコしている。でも、その眼は…どこか寂しい。笑ってないんじゃなく、なんか…泣いている。」

雷華「私では、その涙を止めることができませんか?」

雷華「私は!ほ…」

火火野「雷華。伝わったから。お前の本気は、ちゃんと伝わったから。まず、涙を拭いてくれ。」

雷華は、大きな瞳から大粒の涙を溢れさせていた。

俺は、大きなため息をついて。

火火野「…お前が本気だから、ひとつ教えておいてやる。俺は誰とも付き合えない。」

雷華の顔が”何故”を表す。

火火野「もうすぐ、”あの日”から15年が過ぎる。俺は大好きな彼女がいた。たった2か月間だけのカップルだったけどな。」

俺は俯きながら、淡々と続ける。

火火野「俺から声かけて、付き合うことになって、楽しい日々を過ごして。」

顔を上げて、雷華を見て。

火火野「そして殺したんだ。俺が。」
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