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5章 なんでもできる男のどうすることもできない過去
ー4968日目~彩を失った日~
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次の日、いつも通りに登校する。
そして、命と合流して、隣同士の席に座る。
ハズだった。
が、来ていない。
あれ?おかしいな。
メールを送ってみるが、返信もない。
ドンッ!
と、衝撃が背後から襲ってきた。
佐藤「おい!どうだったんだよ!!き・の・う・は!?」
田中「ま…まさか…一線を越えてしまったんではないだろうな!?」
火火野「何を言ってんだか。2人でスノボして飯食っただけだよ。」
そう言ってみたものの、帰り際のシーンが蘇り、耳が赤くなる。
佐藤&田中「ほう。本当にそれだけかね?」
火火野「しつけーぞ。それだけだよ。」
疑いの目でコチラを見てくる。佐藤と田中。
佐藤「そういや、まだ来てないのか?」
田中「この頃休むことなかったのに、めずらしいな。」
火火野「あぁ。メールしたんだけど、まだ返信ないな。やっぱり、昨日疲れたんかな。」
田中「やっぱり、疲れるようなことやったんか!?」
火火野「アホか。」
火火野『命、大丈夫かな…』
授業のチャイムが鳴ろうとした時、担任の先田 樹生(サキタ イツキ)が扉を開けて、教室に入ってきた。
年齢は30代前半で、この大学の大学院を卒業、一旦は企業に就職していたらしいが、2年で辞めて大学に戻ってきて、ガッチガチの現代恋愛小説を書きながら、ファンタジー小説の研究をしている。ちょっと変な人だ。
いっつもヨレヨレのYシャツを着て、家に帰っていないというより、大学に住んでいる。
そして先田は、俺と命が付き合っている事を知っている。
たまたま、2人で歩いている時に声をかけてきて…なんか、嬉しそうというか安堵というか。
隣のおっちゃんが子供のころから知っている娘が結婚するのを知った時。って感じだった。
研究室から走ってきたのか、息が上がっている。
まぁ、数百メートルはあるからなぁ。
先田「はーはー、ふぅ。火火野、ちょっといいか?」
火火野「俺っすか?」
何かやらかしたっけな?と思いながら、先田が待つ、教室の外に出る。
入れ替わりで、授業の担当教授が入ってきて、先田に目配せをして教室に入り授業を始める。
火火野「で、何の用ですか?」
先田「はー、はー、ふぅ。落ち着いて聞いてくれ。」
先田はまだ、息が上がっており、まず、アンタが落ち着け。と思う。
そして、真剣な表情で言った言葉は。
先田「薄井が…亡くなった。」
火火野「え…」
先田が何を言っているのか。
理解できたけど、理解できなかった。
先田「今日の未明だったそうだ。」
全身の力が抜けていくのが分かった。
視界が、世界が歪んでいく。
火火野「…いやいや、そんな訳ないって。昨日、あんなに元気だったし…」
と、言いながら、軽い咳をしていた命がフラッシュバックする。
先田「火火野…。お前も薄々感じてはいただろうが、薄井は病気だったんだ。」
俺は、もう、立っていられないような感じになっていて、膝に手を着いている。
先田が、何か言っているが、耳には入っていなかった。
頭の中が、ぐるぐるしていて、気持ち悪い。
火火野「…ぅ…だ。」
先田「?」
火火野「嘘だ!!!」
俺は、そう叫ぶと走り出していた。
命!命!命!
そう、命の元へ。
そんな訳はない。
マタアシタ。
そう言って、笑顔で…手を振ったじゃないか。
その時に、泣いているような表情がフラッシュバックする。
そんな訳ない。
嘘だ!嘘だ!嘘だろ!命!
あんな軽い咳で。
死ぬ?
俺は、車にはねられたことがあるけど、ピンピンしていた。
人間は簡単には死なないんだ。
でも、知ってもいるんだ。
前の日まで、あんなに元気だったひいばぁちゃんが急に次の日、動かなくなっていた。
俺はまだ小学生だったから死因とか教えてくれなかったし、聞いていないが、突発性の病気だったんだろう。
小学生だったけど、凄い衝撃だった。
人って、こんなすぐに簡単に死ぬ。
でも、でも、でも!!!
命はまだ、22歳だぞ。
22歳なんだ。
俺は、自転車で命の家に向かって走り出していた。
そして。
見慣れてきていた風景。
葬儀場の案内板に、ありえない名前。
薄井 命
葬儀場の駐車場入口付近に自転車を倒し、入口に向かって力なく歩いていく。
頭の中はもう、良く分からない。ぐっちゃぐちゃだ。
こちらに誰かが気づいて、走ってくる。
制服を着ている?
物凄い勢いだ。
そして、胸ぐらを掴まれた。
??「何しに来やがった!!!」
俺は、声が出なかった。
この男の子、中学生くらい…弟の”コウタ”君か。
命は俺の名前を知った時、弟と同じ名前だとはしゃいでいたっけ。
そして、俺を壊す一言を言ったんだ。
コウタ「お前のせいで、死んだんだ!!ねぇちゃんは!!!ぅ…お前のせいで!!!!」
火火野「う…ぁ。」
勢いに気圧され、何故?に思考を支配され、言葉はでなかった。
??「幸太、やめなさい!」
白髪まじりの眼鏡をかけた初老?の男性が駆けってきた。
あぁ、命の父親だ。
確か…巌(イワオ)さんだったか。
??「すみません。息子が、失礼いたしました。」
憔悴しきっている。が、明らかに命に似ている女性。
母親の優美(ユミ)さんだ。
足取りも弱弱しく、顔色も悪い。声もかすれている。
ご家族の事は、命からあまり詳しく聞いてはいなかった。
何せ、仲が良くないとか。”今までは”あまり好きじゃなかった。とか、愚痴に近いことばかりだったから、俺もあえて詳しく聞かない様にしていた。
でも、この前は…この頃やっと家族みたいになったんだよねー。と、優美さんからのメールが来た時に、呟いていた。
その表情からは、とても仲が悪い家族には見えなかったのを覚えている。
巌さんは、幸太君を抑えながら。
巌「悪いが、帰ってくれないか。」
火火野「え…ぁ。」
明らかに動転しているのが伝わったようで、少し申し訳なさそうに。
巌「君のせいではない。君のせいではないんだよ。だがな。だが、納得は出来てないんだよ。君が居なければ…!君と出かけていなければと…どうしても思ってしまうんだよ。」
優美「ご存知だったと思いますが、命は大変病弱だったんです。ただの風邪も、命にとっては生死がかかっているんです。だから…あんなに気を付けていたはずなのに…」
そう言って、泣き崩れた。
幸太君も大声で泣いていた。
しらなかった…そう、言いたかった…
でも、言えない。言えるはずがない。
知らなかったからといって許されるわけはないから。
でも、命はこの家族に、本当に愛されていたんだ。
それが、痛いほど、本当に痛いくらいに伝わってきた。
何も言葉を発せないまま、その場を後にするしかなかった。
そこから先は、良く覚えていない。
どうやって帰ったのか。
どれくらいの時間が経ったのか。
気付いたときには、家に居て。
信じられないくらい着信と、メールが佐藤と田中と先田から来ていた。
大丈夫。生きている。
とだけ返信し、時計を見た。
昼の12時。
カーテンを開けて外を見る。
火火野「…あぁ。こういう事か。」
俺は彩(イロ)を失っていた。
そして、命と合流して、隣同士の席に座る。
ハズだった。
が、来ていない。
あれ?おかしいな。
メールを送ってみるが、返信もない。
ドンッ!
と、衝撃が背後から襲ってきた。
佐藤「おい!どうだったんだよ!!き・の・う・は!?」
田中「ま…まさか…一線を越えてしまったんではないだろうな!?」
火火野「何を言ってんだか。2人でスノボして飯食っただけだよ。」
そう言ってみたものの、帰り際のシーンが蘇り、耳が赤くなる。
佐藤&田中「ほう。本当にそれだけかね?」
火火野「しつけーぞ。それだけだよ。」
疑いの目でコチラを見てくる。佐藤と田中。
佐藤「そういや、まだ来てないのか?」
田中「この頃休むことなかったのに、めずらしいな。」
火火野「あぁ。メールしたんだけど、まだ返信ないな。やっぱり、昨日疲れたんかな。」
田中「やっぱり、疲れるようなことやったんか!?」
火火野「アホか。」
火火野『命、大丈夫かな…』
授業のチャイムが鳴ろうとした時、担任の先田 樹生(サキタ イツキ)が扉を開けて、教室に入ってきた。
年齢は30代前半で、この大学の大学院を卒業、一旦は企業に就職していたらしいが、2年で辞めて大学に戻ってきて、ガッチガチの現代恋愛小説を書きながら、ファンタジー小説の研究をしている。ちょっと変な人だ。
いっつもヨレヨレのYシャツを着て、家に帰っていないというより、大学に住んでいる。
そして先田は、俺と命が付き合っている事を知っている。
たまたま、2人で歩いている時に声をかけてきて…なんか、嬉しそうというか安堵というか。
隣のおっちゃんが子供のころから知っている娘が結婚するのを知った時。って感じだった。
研究室から走ってきたのか、息が上がっている。
まぁ、数百メートルはあるからなぁ。
先田「はーはー、ふぅ。火火野、ちょっといいか?」
火火野「俺っすか?」
何かやらかしたっけな?と思いながら、先田が待つ、教室の外に出る。
入れ替わりで、授業の担当教授が入ってきて、先田に目配せをして教室に入り授業を始める。
火火野「で、何の用ですか?」
先田「はー、はー、ふぅ。落ち着いて聞いてくれ。」
先田はまだ、息が上がっており、まず、アンタが落ち着け。と思う。
そして、真剣な表情で言った言葉は。
先田「薄井が…亡くなった。」
火火野「え…」
先田が何を言っているのか。
理解できたけど、理解できなかった。
先田「今日の未明だったそうだ。」
全身の力が抜けていくのが分かった。
視界が、世界が歪んでいく。
火火野「…いやいや、そんな訳ないって。昨日、あんなに元気だったし…」
と、言いながら、軽い咳をしていた命がフラッシュバックする。
先田「火火野…。お前も薄々感じてはいただろうが、薄井は病気だったんだ。」
俺は、もう、立っていられないような感じになっていて、膝に手を着いている。
先田が、何か言っているが、耳には入っていなかった。
頭の中が、ぐるぐるしていて、気持ち悪い。
火火野「…ぅ…だ。」
先田「?」
火火野「嘘だ!!!」
俺は、そう叫ぶと走り出していた。
命!命!命!
そう、命の元へ。
そんな訳はない。
マタアシタ。
そう言って、笑顔で…手を振ったじゃないか。
その時に、泣いているような表情がフラッシュバックする。
そんな訳ない。
嘘だ!嘘だ!嘘だろ!命!
あんな軽い咳で。
死ぬ?
俺は、車にはねられたことがあるけど、ピンピンしていた。
人間は簡単には死なないんだ。
でも、知ってもいるんだ。
前の日まで、あんなに元気だったひいばぁちゃんが急に次の日、動かなくなっていた。
俺はまだ小学生だったから死因とか教えてくれなかったし、聞いていないが、突発性の病気だったんだろう。
小学生だったけど、凄い衝撃だった。
人って、こんなすぐに簡単に死ぬ。
でも、でも、でも!!!
命はまだ、22歳だぞ。
22歳なんだ。
俺は、自転車で命の家に向かって走り出していた。
そして。
見慣れてきていた風景。
葬儀場の案内板に、ありえない名前。
薄井 命
葬儀場の駐車場入口付近に自転車を倒し、入口に向かって力なく歩いていく。
頭の中はもう、良く分からない。ぐっちゃぐちゃだ。
こちらに誰かが気づいて、走ってくる。
制服を着ている?
物凄い勢いだ。
そして、胸ぐらを掴まれた。
??「何しに来やがった!!!」
俺は、声が出なかった。
この男の子、中学生くらい…弟の”コウタ”君か。
命は俺の名前を知った時、弟と同じ名前だとはしゃいでいたっけ。
そして、俺を壊す一言を言ったんだ。
コウタ「お前のせいで、死んだんだ!!ねぇちゃんは!!!ぅ…お前のせいで!!!!」
火火野「う…ぁ。」
勢いに気圧され、何故?に思考を支配され、言葉はでなかった。
??「幸太、やめなさい!」
白髪まじりの眼鏡をかけた初老?の男性が駆けってきた。
あぁ、命の父親だ。
確か…巌(イワオ)さんだったか。
??「すみません。息子が、失礼いたしました。」
憔悴しきっている。が、明らかに命に似ている女性。
母親の優美(ユミ)さんだ。
足取りも弱弱しく、顔色も悪い。声もかすれている。
ご家族の事は、命からあまり詳しく聞いてはいなかった。
何せ、仲が良くないとか。”今までは”あまり好きじゃなかった。とか、愚痴に近いことばかりだったから、俺もあえて詳しく聞かない様にしていた。
でも、この前は…この頃やっと家族みたいになったんだよねー。と、優美さんからのメールが来た時に、呟いていた。
その表情からは、とても仲が悪い家族には見えなかったのを覚えている。
巌さんは、幸太君を抑えながら。
巌「悪いが、帰ってくれないか。」
火火野「え…ぁ。」
明らかに動転しているのが伝わったようで、少し申し訳なさそうに。
巌「君のせいではない。君のせいではないんだよ。だがな。だが、納得は出来てないんだよ。君が居なければ…!君と出かけていなければと…どうしても思ってしまうんだよ。」
優美「ご存知だったと思いますが、命は大変病弱だったんです。ただの風邪も、命にとっては生死がかかっているんです。だから…あんなに気を付けていたはずなのに…」
そう言って、泣き崩れた。
幸太君も大声で泣いていた。
しらなかった…そう、言いたかった…
でも、言えない。言えるはずがない。
知らなかったからといって許されるわけはないから。
でも、命はこの家族に、本当に愛されていたんだ。
それが、痛いほど、本当に痛いくらいに伝わってきた。
何も言葉を発せないまま、その場を後にするしかなかった。
そこから先は、良く覚えていない。
どうやって帰ったのか。
どれくらいの時間が経ったのか。
気付いたときには、家に居て。
信じられないくらい着信と、メールが佐藤と田中と先田から来ていた。
大丈夫。生きている。
とだけ返信し、時計を見た。
昼の12時。
カーテンを開けて外を見る。
火火野「…あぁ。こういう事か。」
俺は彩(イロ)を失っていた。
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