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《side勇者(ヴィンセント)》






うん、美味い。結局なんの味なんだ…コレ

「…ん。」

俺が目を合わせて手を上げると、途端にぱぁぁぁと満面の笑みになる自称魔王。
相変わらずだな。コイツは。

初めてコイツに会ったのはいつだったか…確か肌寒い日だったな。
あまりの空腹と寒さに見た幻覚かと思ったが、目の前には自称魔王が置いていったパンとスープがあった。

今まで食べたパンにもスープにも敵わない美味しさで、あっという間に食べきった記憶が懐かしい。

今では身長もそこそこ伸びて、他の奴らを抜かしたし、自称魔王よりもでかい。

…こんな出会いもあるものなんだな。

「……見張りも悪くない。」

ただひたすら後ろから見守られ、飯を与えられ、時には魔法だろう、無理やり寝かされる。俺と自称魔王の、そんなおかしな関係はもう、4年目を迎えていた。




……
………
……



「ヴィンセントお前が勇者だと神託が降りた、明日にはでる準備を始めろ。」
「はい。」

侯爵家の三男、中途半端の立ち位置でいつまでも地に足がつかない曖昧な人生。

それなりに頭も良くて体も動くものだから生きてきて困ったことは無い。

俺に用意された返事は『はい』のみ、それ以外は許されない。

「あーあ、三男様が勇者様か~!こりゃ光栄だなぁ?」

兄様か。

「欲しいなら譲ります。」

「あ?舐めてんのお前。」

…どうやらまた怒らせたみたいだ。人間はめんどくさい、なぜいちいち感情を起伏させる?そんなの体力を無駄に消費するだけだ。

「とっとと行けよ。」
「はい。」

兄も父も、俺の人生には必要ないな。

家族に対する情は無い。だから仲間に期待をしていた。

「えぇ~?こんなのが勇者なの?アタシもっとイケメン期待してたのに~」
「あ?んだその顔腹立つな。」
「まぁまぁ、優しくしてあげようよ。」

……なるほどな。

こいつらも俺の人生に必要は無い。



……
…………
……




『名前が知りたい』

自称魔王がいつの日か俺にそう言った。

自称魔王と話すのはいつも深夜、他の奴らがいない時を見計らって俺に声をかけてくる。それも念話だ。

『なぁ、教えてくんねぇの?』

…名前を聞かれたのはいつぶりだったか。

「ヴィンセント。お前は?」

『俺?…誠一郎』

「せい…い…?」

『ぶぶ…!…セイで良いよ』

セイ…そういえばセイは髪が黒いな、目も…黒髪黒目は魔王の象徴…確かに魔王なのか。魔力もひしひしと感じる。

『セイ』

「どうかした?」

『呼んだだけだ。』

「なんだよそれ~!」

歯を見せて笑うセイを見て、感じた事のない高揚が俺を襲った。

…そして

俺は思ったんだ。

……どうしようもなくコイツが欲しい…と。


それなのに。


……セイは次の日から顔を見せなくなった


==============

ヴィンセント・ブラット   (17)

職業・未知なる勇者
身長・179cm
HP・?MP・?

概要・???と???の???、未知なる可能性があり、????の力がつかえる。

精霊王の加護・魔王の祝愛
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