【転生したら…イヌなんかいっ!?】 ~あぁ、犬の生にも山谷あり~

べんがら

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序章

第五話:結局、落ちるんかいっ!?

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 プシュー
 マジでそんな音が聞こえてきそうな気がする。
「ちきしょーめ、あちこち痛ぇ…」
 ぶっ倒れたまま、起き上がる気力もない。
「あははは…」
「笑いごっちゃねぇ!!」
 身体中から上がる煙をはたきながら、俺は上体を起こしてフィオを睨みつけた。
「だってぇ…まさか本当に【苦痛耐性】が最後の方になるなんて、思わないじゃないですかぁ」
「そりゃフラグってんだ…」
 俺はタバコを咥えながらぼやく。
「破滅のフラグはへし折らないと…」
「俺は、どこぞの悪役令嬢かッ!?」
 そもそも、いつの間に破滅フラグになった?
「そんなことより、スキルはこれで全部か?」
「思いつく限りは、これで整ったと思いますよ?あとは、その都度足していけばいいですし…」
 俺のタバコに甲斐甲斐しく火をつけながら、フィオはゆっくり反芻するようにうなずく。
『そいつは良かった…そろそろ、こっちも限界だったんだよ』
「ッ!?」
 咄嗟にフィオを後ろにかばい、俺は相手の気配を探る。

 ― 【気配察知】 を発動します ―

 頭の中でアナウンスが響く。
 どうやら最初はスキルの発動を教えてくれるらしい。
「…誰だい、アンタは?」
 相手の出方を探りながら、俺はそろりと呟いた。
 全身から蜘蛛の糸のように、細く放射線状に気を吐き出し周辺を警戒する。
【気配察知】を使用しながら、俺は同時に【探索】のスキルを発動した。
 これで気配を隠していても、その存在を確認できる。
『ほぅ?スキルを組み合わせるか…いいじゃないか』
 まるで教師が生徒に接するかのような、どこか楽し気なニュアンスを感じる。
「俺の問いには、応えてくれないのかい?」
 俺はいつでも動けるように、全身に力を溜める。
「なかなか面白いじゃないか…」
 やられた!
 ヤツは最初からすぐそばにいたんだ。
【探索】のスキルは、発動者を中心に球体状の索敵範囲を持っている。
 俺の指定する任意の対象を、この範囲から探し出すのだが…
 見つかるわけはなかった。
 フィオの影に、ヤツは潜んでいやがった。
 俺のそばにいるフィオは、守るべき対象であり、当然索敵の範囲外になる。
 その盲点を突かれたのだ。
 だが…俺はさらに、身体強化も同時にかけていた。
「ちぃ!」
 鋭く息を吐くと、俺は右手の指をそろえ手のひらを上にした形で、ヤツに向かって勢いよく突き出した。
「フィオッ!!」
 フィオを再度後ろにかばうようにして、その反動で俺は前に出る。そして、身体ごとぶつかるように、槍のような鋭い突きを繰り出す。
 俺の必殺の貫き手は、ヤツの身体の中心へ吸い込まれる…はずだった。
「物騒な真似をしやがるねぇ」
 決まったと思った瞬間、俺は右手首をつかまれ、突きの勢いのままヤツの後ろへと放り投げられた。
「ぐぅ!?」
 何とか受け身をとったものの、起き上がろうとしたところをヤツにまたがられ、マウントをとられる形になってしまった。
 俺は何とか反撃の糸口を探るべく、腹の上にまたがったヤツを初めて見た。

「…」
「うん?」
 不意の俺の沈黙が不思議だったのか、小首をかしげているその人物は、どこかで見たような美人だった…。
 キツめの顔立ちではあるが、けして嫌味ではなく、むしろそれが雰囲気と相まって自然であり、とても美しかった。
 はっきり言って、かなりの美人だ。均整の取れた体つきでスタイルもいい。
 素晴らしい。ビューティホーでワンダホーである。
「ありがとよ。そこまで直球で褒められると、さすがに照れくさいさね」
 うっすらと頬を染めながら、美人さんは居心地悪そうに身じろぎをする。
 俺は腹筋を使って上体を少し浮かせ、美人さんをまじまじと観察した。
 むっちりしたフトモモ、大きく張った腰つきにデカい尻、くびれはあるが脂ののった腹回り、揉みごたえありそうでたっぷりとした大きな乳。
「最高だな」
「…おいおい?」
 さすがに恥ずかしいのか、美人さんは視線を泳がす。
 だが、それこそが俺の狙いだった。
「シッ!!」
 上体を浮かせたことで作れた隙間を利用し、右肘を床に打ち付けるようにして身体を捻りながら起こし、さらに腰を軸にして左肩を後ろへ引き絞る。
 あとはその反動で右肩を内側に捻りこみ、揃えた貫き手を相手の鳩尾へ突き込むだけ…
「お、おばあちゃん!?」
 何?
「おばあちゃんだとぉー!!」

 慌てて貫き手を止めるも、勢いあまって大きなふくらみへ…

 ぽよん♪

 …
「これは、その…」
 不可抗力ってやつだよ、なぁ。
 …
「ア・キ・ラ・さーん…」
「まぁ、揉まれて減るもんじゃなし…好きにしな」
「減るんですぅ!具体的には、私の平常心とかが激減ですぅ!!」
 そんな変なやり取りよりも、この美人さんがおばあちゃん?
 んなバカな!?
「お姉さん…よくいってもお母さんだろ…」
「おや?嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
 見覚えがあるはずだ。
 フィオから、すっとぼけた感じを取り除いて、デキる女感を足したらそっくりだ。
「ちょっと、アキラさん。ひどくないですか?」
 いや?
 耳の形がチョイ違う。
 ピンと立った耳の形が、フィオとは全く違った。
 それは、まとった雰囲気と相まって、猟犬を彷彿とさせる。
 つまり、やべぇ相手ってことだ…。

「あんたら…取りあえず、ヤることヤったんだろ?」
「ッ!?」
 そちらもド直球だねぇ。
「もぉ!おばあちゃん!!」
「そんなもん、隠したってしょうがないだろう?」
 ミもフタもねぇ。
「ま、何にしても、スキルまで与えちまったんだ。戦闘力も半端なく仕上がっちまったようだねぇ」
 …申し訳ねぇ。
 危うく、フィオの家族に傷を負わせちまうとこだったぜ。
「まぁいいさね。…あっちで天寿をまっとうしたら、こっちで婿に迎えてやるからとっとと行ってきな!!」
 その瞬間、硬い床の感触がなくなった…。
 ウソ、だろ?
「てめぇ、BBAババア!?覚えてやがれーー!!」
「ふぇ~ん、アキラさ~ん!」
 こうして、俺の身体は重力の法則に基づいて、落下していったのだった。

 ― チーン ―

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