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第一章
第一話:これからレクチャーすんのかいっ!?
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― ピロリン ―
― 落下中 ―
…
「…」
俺の、現在のステータスだ。
…
聞こえてくるのは風切り音。
真っ白な煙状の何かの中を、絶賛落下中である。
これって、たぶん雲なんだろうなぁ…。
雲って、もっとふわふわしてんのかと思ったけど、水蒸気浴びてる感じっていうか、湿気がすげぇんだな。
………
……
…
「…って、早くも詰んでんじゃねぇかよッ!?」
いやもうね、やる気がなくなっちまったよ。
雲の中を突っ切ってるんだから、高高度からの落下なわけだ。
常識で考えても、そんな高さから落下して無事なわけがねぇ…。
短い人生、いや犬生だったなぁ。
『随分と諦めがいいじゃないか』
どこかで聞き覚えのある声がする。
「…ババア。てめぇ、やってくれたじゃねぇか」
『おやおや…さっきまでの威勢はどうしたんだい?』
「ッ!?」
悔しいが、この状況では手の打ちようがねぇ。仮に人間のままだったとしても、何か有効な手があるとも思えねぇしな…。
いや?
「あんたがわざわざ出向くんだ。単純に嘲笑いに来た、とも思えねぇ…何かあるんだな?」
『…まったく、可愛げのない孫婿だよ』
その瞬間、時間が止まった…。
「なんだとッ!?」
いや、正確には落下スピードがとんでもなく遅くなった感じか?
「来な!アタシが直々に稽古をつけてやるよ」
「冗談だろ?」
突然目の前に現れた美人の婆さん(?)。
しかし、稽古ったって…お空の上で何をしようってんだ?
いや、まさか…
「そう…空中戦さねッ!」
「ッ!?」
宣言と同時に、婆さんは突っ込んでくると、その勢いのまま右ストレートを放ってきた。
「どぇぇぇー」
とっさに両腕を交差させてブロックしたが、衝撃を殺しきれず、そのまま吹き飛んでしまった。
当たり前の話だが、踏ん張るもののない空中で防御もくそもないもんだ。
「だったら、踏ん張るための足場を作りゃいいんだよ」
ぼよん、といい感触に包まれて、俺は婆さんに後ろから抱き留められていた。
「いつの間に…」
さっきまで正面にいたはずなんだが?
「これでも一応、神なんでねぇ…それより、いつまでアタシをバアさん呼ばわりする気だい」
自慢げな言葉とは裏腹に、ちょっとスネてるっぽいぞ。
「す、スネちゃいないが、バアさんは割と酷くないかい?」
…絶っ対にスネてるだろ、これ。
「いやまぁ、フィオが婆ちゃんって呼んでたし、名前を聞いてねぇんだよね…」
「おや?そうだったかい?」
年は取りたくねぇn…
「何か言ったかい?」
「ノォォォ…」
力いっぱい抱きしめられた。
折れる!身体中の骨が…。
「チッ、そんなヤワな玉じゃないだろ」
舌打ちしたよ、このヒト…。
「“システィーナ”…アタシの名前だ」
女神システィーナは、俺の身体を離すと、ぶっきらぼうにそう答えた。
「わかった…よろしく頼むよ、システィーナ様」
「殊勝な物言いだね。でも、呼び捨てで構わないよ。…アンタに“様”付けされると、背筋が寒くなる」
ひでえ言われようだ。
「わかったよ。よろしくな、システィーナ」
「そうしてくれ、アキラ」
俺たちは、軽い握手をして笑みを浮かべた。
「そういえば、稽古をつけてくれるって話だったが」
のんきな話だが、俺たちは現在も落下中なんだよなぁ。
まぁ、女神様が一緒にいるわけだから、何かあるんだよな?
「あぁ、アキラは純粋な戦闘力だけなら高いんだが、魔法やスキルと組み合わせた闘い方を理解できてない」
「確かに…」
そうか、スキルとかは無意識に使っていたけど、魔法ってやつは全く解ってなかったな。むしろ、フィオから何の説明も受けてねぇじゃん。
「だから、アタシがこうして出向いてきたのさ」
ありがてぇ。さすが、デキる女は違うな。
「まったく…てっきり、全部の説明を終えてるから、いちゃついてるんだと思ってたんだけどねぇ」
「申し訳ねぇ…」
「ま、時間もないことだし、実践して覚えてくしかないね」
そう言うと、システィーナはおもむろに俺の身体をペタペタ触りだす。
「?」
「基本は出来てるようだし、この分なら簡単なレクチャーで済みそうだね」
「基本?おいおい、俺はフィオから何も聞いてねぇぞ?」
空中だからかもしれないが、微妙に身体がふわふわして心もとない。
精神的にも落ち着かないんだが、そんな俺をよそに、システィーナは歩いて距離を取り始めた。
ん?歩いて?
「ようやく気づいたかい?」
ここは空中で、現在緩やかに落下中だ。
なのに、どうして歩けるんだ?
システィーナも俺も、落下中なのは変わらない。
上下の位置関係が変わらない以上、そこは間違いないだろう。
だとしたら、俺と彼女との違いはなんだ?
俺は浮いていて、彼女は立っている。
…立っている?
「!?」
俺はシスティーナの足元を見て、合点がいった。いや、正確には理解できていないが、何が違うかが分かった。
「それは…足場、か?」
「あぁ、そうさ」
システィーナの足元には、光る何かが存在している。そして、彼女はそこに立っているのだ。
「こいつは、アタシが魔力で作り出した“足場”さ」
システィーナの話では、【天駆】という魔法なのだそうだ。
元々【天駆】は、垂直方向への移動を考慮した魔法であるのだが、術者の足下に魔力のフィールドを展開して足場とするため、足の位置は必ずしも地面と平行である必要がない。
結果として、横であろうが上下逆であろうが、足場を蹴って空中を移動するという芸当が可能になってしまった。
まぁ、本来の目的とは違った形であるが、空間を立体的に使える、とても便利な魔法らしい。
「本当は、階段や梯子代わりのモンだったんだけどね」
「いや、それは聞きたくなかった…」
なんか、がっかりだよ。
― 落下中 ―
…
「…」
俺の、現在のステータスだ。
…
聞こえてくるのは風切り音。
真っ白な煙状の何かの中を、絶賛落下中である。
これって、たぶん雲なんだろうなぁ…。
雲って、もっとふわふわしてんのかと思ったけど、水蒸気浴びてる感じっていうか、湿気がすげぇんだな。
………
……
…
「…って、早くも詰んでんじゃねぇかよッ!?」
いやもうね、やる気がなくなっちまったよ。
雲の中を突っ切ってるんだから、高高度からの落下なわけだ。
常識で考えても、そんな高さから落下して無事なわけがねぇ…。
短い人生、いや犬生だったなぁ。
『随分と諦めがいいじゃないか』
どこかで聞き覚えのある声がする。
「…ババア。てめぇ、やってくれたじゃねぇか」
『おやおや…さっきまでの威勢はどうしたんだい?』
「ッ!?」
悔しいが、この状況では手の打ちようがねぇ。仮に人間のままだったとしても、何か有効な手があるとも思えねぇしな…。
いや?
「あんたがわざわざ出向くんだ。単純に嘲笑いに来た、とも思えねぇ…何かあるんだな?」
『…まったく、可愛げのない孫婿だよ』
その瞬間、時間が止まった…。
「なんだとッ!?」
いや、正確には落下スピードがとんでもなく遅くなった感じか?
「来な!アタシが直々に稽古をつけてやるよ」
「冗談だろ?」
突然目の前に現れた美人の婆さん(?)。
しかし、稽古ったって…お空の上で何をしようってんだ?
いや、まさか…
「そう…空中戦さねッ!」
「ッ!?」
宣言と同時に、婆さんは突っ込んでくると、その勢いのまま右ストレートを放ってきた。
「どぇぇぇー」
とっさに両腕を交差させてブロックしたが、衝撃を殺しきれず、そのまま吹き飛んでしまった。
当たり前の話だが、踏ん張るもののない空中で防御もくそもないもんだ。
「だったら、踏ん張るための足場を作りゃいいんだよ」
ぼよん、といい感触に包まれて、俺は婆さんに後ろから抱き留められていた。
「いつの間に…」
さっきまで正面にいたはずなんだが?
「これでも一応、神なんでねぇ…それより、いつまでアタシをバアさん呼ばわりする気だい」
自慢げな言葉とは裏腹に、ちょっとスネてるっぽいぞ。
「す、スネちゃいないが、バアさんは割と酷くないかい?」
…絶っ対にスネてるだろ、これ。
「いやまぁ、フィオが婆ちゃんって呼んでたし、名前を聞いてねぇんだよね…」
「おや?そうだったかい?」
年は取りたくねぇn…
「何か言ったかい?」
「ノォォォ…」
力いっぱい抱きしめられた。
折れる!身体中の骨が…。
「チッ、そんなヤワな玉じゃないだろ」
舌打ちしたよ、このヒト…。
「“システィーナ”…アタシの名前だ」
女神システィーナは、俺の身体を離すと、ぶっきらぼうにそう答えた。
「わかった…よろしく頼むよ、システィーナ様」
「殊勝な物言いだね。でも、呼び捨てで構わないよ。…アンタに“様”付けされると、背筋が寒くなる」
ひでえ言われようだ。
「わかったよ。よろしくな、システィーナ」
「そうしてくれ、アキラ」
俺たちは、軽い握手をして笑みを浮かべた。
「そういえば、稽古をつけてくれるって話だったが」
のんきな話だが、俺たちは現在も落下中なんだよなぁ。
まぁ、女神様が一緒にいるわけだから、何かあるんだよな?
「あぁ、アキラは純粋な戦闘力だけなら高いんだが、魔法やスキルと組み合わせた闘い方を理解できてない」
「確かに…」
そうか、スキルとかは無意識に使っていたけど、魔法ってやつは全く解ってなかったな。むしろ、フィオから何の説明も受けてねぇじゃん。
「だから、アタシがこうして出向いてきたのさ」
ありがてぇ。さすが、デキる女は違うな。
「まったく…てっきり、全部の説明を終えてるから、いちゃついてるんだと思ってたんだけどねぇ」
「申し訳ねぇ…」
「ま、時間もないことだし、実践して覚えてくしかないね」
そう言うと、システィーナはおもむろに俺の身体をペタペタ触りだす。
「?」
「基本は出来てるようだし、この分なら簡単なレクチャーで済みそうだね」
「基本?おいおい、俺はフィオから何も聞いてねぇぞ?」
空中だからかもしれないが、微妙に身体がふわふわして心もとない。
精神的にも落ち着かないんだが、そんな俺をよそに、システィーナは歩いて距離を取り始めた。
ん?歩いて?
「ようやく気づいたかい?」
ここは空中で、現在緩やかに落下中だ。
なのに、どうして歩けるんだ?
システィーナも俺も、落下中なのは変わらない。
上下の位置関係が変わらない以上、そこは間違いないだろう。
だとしたら、俺と彼女との違いはなんだ?
俺は浮いていて、彼女は立っている。
…立っている?
「!?」
俺はシスティーナの足元を見て、合点がいった。いや、正確には理解できていないが、何が違うかが分かった。
「それは…足場、か?」
「あぁ、そうさ」
システィーナの足元には、光る何かが存在している。そして、彼女はそこに立っているのだ。
「こいつは、アタシが魔力で作り出した“足場”さ」
システィーナの話では、【天駆】という魔法なのだそうだ。
元々【天駆】は、垂直方向への移動を考慮した魔法であるのだが、術者の足下に魔力のフィールドを展開して足場とするため、足の位置は必ずしも地面と平行である必要がない。
結果として、横であろうが上下逆であろうが、足場を蹴って空中を移動するという芸当が可能になってしまった。
まぁ、本来の目的とは違った形であるが、空間を立体的に使える、とても便利な魔法らしい。
「本当は、階段や梯子代わりのモンだったんだけどね」
「いや、それは聞きたくなかった…」
なんか、がっかりだよ。
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