天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

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第一章:天上のラストルーム

第16話:パーティ

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 まずは資金がいくらあるのかを確認したアルストなのだが、エレナからはものすごく訝しがられてしまう。

「いや、あの、初期装備姿だと、色々と面倒だと思うから」

 アルストも通ってきた道なのだが、三ヶ月も経ったタイミングで初期装備のままアーカイブをウロウロしていれば奇異の視線を浴びることになる。
 アルストはその視線が嫌で嫌でたまらなかったのだが――

「あぁ、それくらい気にならないな」
「そうですね。私達は初心者なのですから、そう思われて当然ですもの」
「……あっ、そうでしたか」

 自分よりもタフな二人に尻込みしながら、アルストは次にレベルの確認を行った。

「私は1です」
「私は2だな」
「あれ? それじゃあエレナさんはモンスターを倒したことがあるんじゃないですか?」

 アルストはスライムを一匹倒しただけでレベルが2に上がった。ならばエレナは少なくても一匹は倒しているはずなのだが。

「……あ、あれは、偶然の産物で倒せたのだ」
「ぐ、偶然?」
「槍を振り回していたら、穂先がゴブリンの首を刎ねて、それで……」
「あー、意図してやったことじゃないってことですか」
「……そ、そういうことだ!」

 そうなると戦い方から教える必要があると考えたアルストは、決定的な質問を口にした。

「ちなみに、説明書は読みましたか?」

 ただ武器を振る、攻撃するといった行動は説明書を読んでいれば分かるはずで、これは武器が変わったとしても同様だ。
 攻撃の組み合わせ方に関しては試行錯誤が必要なものの、二人は基本の動きもできていないようにアルストには見えていた。

「わ、私は、その、読んでません」
「エレナさんは?」
「……私も読んでない」
「やっぱり」

 こうなれば話は早い。アルストが何かを教えるというよりも説明書を読んでもらった方が早いと判断した。

「一度ログアウトして説明書を読んでください。その後にもう一度集合しましょう」
「えっと、それはちょっと……」
「いや、ログアウトして説明書を読んでログインするだけですけど?」
「面倒くさい! アルストが教えてくれ!」
「いや、なんでそうなるんだよ! 自分で読んで理解した方が絶対に早いでしょ!」
「な、ならば、今からバベルに行くぞ! そこで無理やりにでも教えてもらう!」
「そんなメチャクチャな理由で行けるわけないでしょうが!」

 アルストとエレナの言い合いを遠巻きから眺める他のプレイヤー達。その目は二人の装備を見るやいなや侮蔑を含んだ視線へと変わる。

「ちょっと、二人とも、その、周りの目が!」

 アレッサだけが冷静に周りの状況に気づいたので声を掛けてきた。
 目立ちたくないアルストはすぐに言葉を引っ込めたものの、エレナは周りの状況など気にもとめずに口を開いていく。

「アルスト、お願いだからそのまま教えてくれ! 金ならやるから!」
「俺が脅してるみたいに聞こえるから止めろ!」

 頭を抱えたくなってしまったアルストは、仕方なく足をバベルの方へと向けてしまう。ここで言い合うよりもマシだと感じたのだ。
 それを了承と取ったのか、エレナとアレッサは嬉しそうな表情でついてくる。
 後方からはざわざわとした声が聞こえてきており、変な噂が流れないようにと願いながらアルストはアーカイブの入口を離れていった。

 ※※※※

 バベルの一階層入口に到着したアルストは、振り返ると開口一番怒鳴り声を上げた。

「あんたらは俺を困らせたいのか!」

 了承と思っていた二人は突然の怒声にキョトンとした後、アレッサは明らかに落ち込んでいたのだが、やはりエレナが食って掛かってきた。

「その言いぐさは何だ!」
「それはこっちのセリフだろ! あんな大勢の人の前で俺が脅しているみたいな言い方して!」
「そんなことは言ってないだろう!」
「お金の話しなんて出してきたら、そうじゃなくてもそう聞こえるんだよ!」

 エレナはそう言われるとハッとした表情を浮かべた。

「……その、すまん。悪気はなかったんだ」
「……それで、なんでログアウトしたくないんだよ。面倒くさいとか、嘘なんだろ?」
「そ、それは……」

 その後からは言葉が出てこないエレナ。
 視線をアレッサへと向けるがこちらも俯いたままでアルストの疑問に答えてくれそうな雰囲気ではなかった。

「……はぁ。もういいよ。とりあえずステイタス画面のヘルプボタンを押したら説明が出てくるから、それを読んでくれるかな」
「「…………えっ?」」

 てっきり断られると思っていた二人は、アルストの指示に対して呆けてしまった。

「いや、だから、ヘルプボタンから戦い方指南を選択してほしいんだけど」
「えっと、そうじゃなくてだな」
「あの、教えていただけるん、ですか?」
「まあ、乗りかかった船だし、二人を助けたのも俺だからな。ここで見捨てるのも癪だし、見捨てたら本当に金だけ取って逃げてきた奴みたいに思われそうだからな」

 二人にはアルストが極悪非道なことなどしていないと証明してもらう必要があった。
 その過程で基本の操作方法を教えるくらいどうってことないかと考えることにしたのだ。

「ヘ、ヘルプボタンだな!」
「えっと、ステイタスの、えっと、えっ?」
「……ここね」
「「…………す、すいません」」

 アルストは二人が天上のラストルーム初心者というよりも、ゲーム初心者であることに頭を抱えてしまった。
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