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第一章:天上のラストルーム
第19話:レベル上げ
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せっかくバベルにいるということもあり、そのままレベル上げを行うことになった。
初期装備ではあるがアルストがいるということと、二人のレベルが4と5に上がったことも大きかった。
「レベル上げがメインになるので、俺は中衛から指示を出します。二人で積極的にモンスターを倒してくださいね」
ゲーム初心者である二人にアルストが指示を出すことにしっかりと頷いてくれる。
エレナが警戒しながら通路を進んでいると、先の路地からベビーパンサーが三匹姿を現した。
「ベビーパンサーは動きが速いです。ですが、耐久力は低いのでしっかりと一撃を加えれば倒せますよ」
「わ、分かった」
視線をベビーパンサーから逸らせることなく頷いたエレナは、初心者の槍を構えて近づいていく。
こちらの存在に気づいたのか、先頭にいたベビーパンサーが四肢を踏み込み一直線にエレナへと迫る。
「ひっ!」
「攻撃して!」
「――フレイム!」
突っ込んでくるベビーパンサーに怯んでしまったエレナに代わり、後衛で状況を見ていたアレッサが咄嗟に魔法を放つ。
アルストとエレナを避けた軌道は、エレナの二メートル手前でベビーパンサーに着弾して光の粒子が広がった。
爆音に残る二匹のベビーパンサーが駆け出して来たが、そこは気を取り直したエレナの穂先が閃いて脇から抜けようとした二匹の首を刎ね飛ばす。
あまりの斬れ味に驚いたのはアルストの方だった。
先ほどまでの姿はどこへやら、エレナの表情は精悍でありとても頼りがいのある雰囲気を醸し出している。
「エレナさん、すごいじゃないですか!」
「…………」
「エ、エレナさん?」
「……こ、怖かったああああぁぁっ!」
精悍に見えた顔つきは、ただ強張っていただけなのかとアルストは内心ずっこけていた。
「ベ、ベビーパンサーは動きが速いだけで強くもないから怖がらなくて大丈夫ですよ?」
「そう言われても怖いものは怖いのだ!」
「でも、さっきの動きは素晴らしかったですよ?」
「それは、その……アレッサが魔法を、使ったからで……」
「えっ? わ、私ですか?」
突然話を振られて驚きを見せているアレッサ。
「そうでした! アレッサさんの魔法も素晴らしかったです! ナイスタイミングでしたよ!」
「あれは、エレナちゃんが危ないと思ったから必死だったんです」
「アレッサ……」
顔の前で手を振りながら謙遜するアレッサに対して、エレナは申し訳ないような顔をしていた。
二人は知り合いだろうと確信しているアルストは、どういう関係なのかと気になる部分もあったが深入りしてはいけない気がして黙っている。
「それじゃあ、もう少し先に進んでみる?」
落ち込んでいるエレナに気持ちを切り替えてもらうためにも、アルストは先へ進むことを提案した。
「そうですね、行ってみましょう」
「……分かりました。今度こそは私がモンスターを斬り捨てて見せます!」
決意を口にするエレナを見て、アルストは一人別のことを考えていた。
(あの喋り方って、現実でもあんななのかな? それとも、ゲームだからキャラ作りでああ喋ってるのかな?)
エレナの喋り方に疑問を覚えつつも、特に言及することはなく先へと進んでいった。
しばらくはアルストが指示役となり戦いを見守り、エレナとアレッサだけでモンスターを倒していく。
宣言通りエレナは鬼気としてモンスターを斬り捨てていき、アレッサまでモンスターの攻撃が伸びることはない。
そのアレッサも魔法で的確な援護をしている。
アルストは見方を変えることにした。
(ゲーム初心者ってわけじゃなさそうだな。ってことは、やっぱり何か隠してるのかなぁ。面倒は嫌なんだけど)
ベビーパンサーとの戦いを見て、エレナが初心者の可能性はまだあるだろうが、アレッサに関しては初心者ではないと思い始めていた。
前線で戦っている仲間の脇を抜いてモンスターへ的確に魔法を当てるには相当の技術が必要となる。
天上のラストルームは始めたばかりかもしれないが、他のVRゲームの経験はあるのかもしれない。
(でも、それならエレナにも教えて上げたらいいのに)
他のゲームでも後衛職専門だったのか。もしそうなら前衛職について教えられないのも分かるが、ゲームに対するある程度の知識は教えられるだろう。
戦い方やシステム、ストーリーなど違いは多くあるものの、根本的な操作に関しては大きく変わるものではない。
実際、過去にいくつかVRゲームを経験しているアルストがそうだった。
説明書を読みながら、ああしたらこうなるだろう。ならこう動いたらああなるのか。などの予想立てはできる。
それを知っているか知らないかでも、VRゲームに慣れる時間は大きく変わるはずだ。
「……それにしても、強いな」
コツを掴んだのか、エレナは耐久力の高いブルブックも一撃で仕留めており、飛び跳ねるモスキートーンにもリーチの長い槍で両断してしまう。
最初は援護をしていたアレッサだったが、ここまでくると援護の意味がないことに気づき、ただただ傍観するだけになってしまった。
そして気づけば、アレッサがレベル5になったのに対して、エレナはレベル7まで上がっていた。
「ごめんなさい!」
「えっと、エレナちゃんが謝ることないんだよ?」
自分だけレベルが2も上がったことに反省の弁を述べるエレナに、アレッサは苦笑気味に答えるのだった。
初期装備ではあるがアルストがいるということと、二人のレベルが4と5に上がったことも大きかった。
「レベル上げがメインになるので、俺は中衛から指示を出します。二人で積極的にモンスターを倒してくださいね」
ゲーム初心者である二人にアルストが指示を出すことにしっかりと頷いてくれる。
エレナが警戒しながら通路を進んでいると、先の路地からベビーパンサーが三匹姿を現した。
「ベビーパンサーは動きが速いです。ですが、耐久力は低いのでしっかりと一撃を加えれば倒せますよ」
「わ、分かった」
視線をベビーパンサーから逸らせることなく頷いたエレナは、初心者の槍を構えて近づいていく。
こちらの存在に気づいたのか、先頭にいたベビーパンサーが四肢を踏み込み一直線にエレナへと迫る。
「ひっ!」
「攻撃して!」
「――フレイム!」
突っ込んでくるベビーパンサーに怯んでしまったエレナに代わり、後衛で状況を見ていたアレッサが咄嗟に魔法を放つ。
アルストとエレナを避けた軌道は、エレナの二メートル手前でベビーパンサーに着弾して光の粒子が広がった。
爆音に残る二匹のベビーパンサーが駆け出して来たが、そこは気を取り直したエレナの穂先が閃いて脇から抜けようとした二匹の首を刎ね飛ばす。
あまりの斬れ味に驚いたのはアルストの方だった。
先ほどまでの姿はどこへやら、エレナの表情は精悍でありとても頼りがいのある雰囲気を醸し出している。
「エレナさん、すごいじゃないですか!」
「…………」
「エ、エレナさん?」
「……こ、怖かったああああぁぁっ!」
精悍に見えた顔つきは、ただ強張っていただけなのかとアルストは内心ずっこけていた。
「ベ、ベビーパンサーは動きが速いだけで強くもないから怖がらなくて大丈夫ですよ?」
「そう言われても怖いものは怖いのだ!」
「でも、さっきの動きは素晴らしかったですよ?」
「それは、その……アレッサが魔法を、使ったからで……」
「えっ? わ、私ですか?」
突然話を振られて驚きを見せているアレッサ。
「そうでした! アレッサさんの魔法も素晴らしかったです! ナイスタイミングでしたよ!」
「あれは、エレナちゃんが危ないと思ったから必死だったんです」
「アレッサ……」
顔の前で手を振りながら謙遜するアレッサに対して、エレナは申し訳ないような顔をしていた。
二人は知り合いだろうと確信しているアルストは、どういう関係なのかと気になる部分もあったが深入りしてはいけない気がして黙っている。
「それじゃあ、もう少し先に進んでみる?」
落ち込んでいるエレナに気持ちを切り替えてもらうためにも、アルストは先へ進むことを提案した。
「そうですね、行ってみましょう」
「……分かりました。今度こそは私がモンスターを斬り捨てて見せます!」
決意を口にするエレナを見て、アルストは一人別のことを考えていた。
(あの喋り方って、現実でもあんななのかな? それとも、ゲームだからキャラ作りでああ喋ってるのかな?)
エレナの喋り方に疑問を覚えつつも、特に言及することはなく先へと進んでいった。
しばらくはアルストが指示役となり戦いを見守り、エレナとアレッサだけでモンスターを倒していく。
宣言通りエレナは鬼気としてモンスターを斬り捨てていき、アレッサまでモンスターの攻撃が伸びることはない。
そのアレッサも魔法で的確な援護をしている。
アルストは見方を変えることにした。
(ゲーム初心者ってわけじゃなさそうだな。ってことは、やっぱり何か隠してるのかなぁ。面倒は嫌なんだけど)
ベビーパンサーとの戦いを見て、エレナが初心者の可能性はまだあるだろうが、アレッサに関しては初心者ではないと思い始めていた。
前線で戦っている仲間の脇を抜いてモンスターへ的確に魔法を当てるには相当の技術が必要となる。
天上のラストルームは始めたばかりかもしれないが、他のVRゲームの経験はあるのかもしれない。
(でも、それならエレナにも教えて上げたらいいのに)
他のゲームでも後衛職専門だったのか。もしそうなら前衛職について教えられないのも分かるが、ゲームに対するある程度の知識は教えられるだろう。
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それを知っているか知らないかでも、VRゲームに慣れる時間は大きく変わるはずだ。
「……それにしても、強いな」
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そして気づけば、アレッサがレベル5になったのに対して、エレナはレベル7まで上がっていた。
「ごめんなさい!」
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