天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

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第一章:天上のラストルーム

第41話:謎のクエスト①

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 クエスト屋の前にログインしたアルストは早速フレンドリストを開いた。

「……もうログインしてるよ」

 アレッサとエレナがログインしていることに呆れながらも、すぐにメールを送信する。

「ログインしてます、クエスト屋で待ってます……よし、送信完了だ」

 待ち合わせしておいて一人でバベルに向かうわけにも行かず、アルストはクエスト屋の中で待っていることにした。
 改めて見回してみてもプレイヤーは誰一人としていない。DPデスペナルティを受けて仕方なくクエストを受けに来るプレイヤーくらいいると思ったのだがそれもいなかった。

「みんな攻略に躍起になってるのかな」

 そんな呟きを漏らしながらクエストを眺めていると、異様に報酬額が高いクエストを発見した。

「……依頼書が、赤い?」

 通常だと張り出されているクエストの用紙は白色である。
 だがアルストが見ているクエストの用紙は赤色であり、何やら異様な雰囲気を放っていた。

「――アルストさん!」

 そこに現れたのは待ち合わせをしていたアレッサとエレナだ。

「何かいいクエストでもあったのか?」
「いや、その……これって、なんだろうって見てたんだ」
「これは……赤い、ですね」
「赤いな」
「はい、赤いんです」

 結果、三人ともよく分からないという答えに行き着いたので、考えても分からなければ聞けばいいのだとアルストは赤い依頼書を取ると受付に向かい質問することにした。

「すいません、この赤いクエストってなんですか?」
『――はい、こちらは受注に時間制限のあるレアクエストになっております。通常クエストよりも報酬が良いのですが、危険なクエストになっているので注意が必要です』
「……NPCに質問なんてできるんだな」
「このタイプのゲームでは大概こんな感じですよ」

 そこでアルストは考えた。
 おそらくレアクエストもアルストの特殊能力によるところが大きいだろう。
 ならば受けるべきだと思うのだが、危険なクエストとなれば二人を巻き込みたくないという気持ちもある。
 チラリと二人の様子を見てみると、何故だか期待の眼差しを向けられていた。

「……えっと、受けます?」
「「はい!」」

 アルストは苦笑しながらその場でクエストを受注した。
 クエスト内容には【一階層の秘境を見つけ出せ!】と書かれている。
 何のことだか分からない三人だったが、とりあえず一階層に向かうことにした。

 ※※※※

 クエスト内容を改めて確認したアルストは一つの仮説を口にした。

「通路の途中や行き止まりのフロアのどこかに隠し通路が存在しているんじゃないかと思います」
「隠し通路だと?」
「はい。おそらくその先に一階層の秘境と言われる場所があるんじゃないかと」
「でも、それの何が危険なんでしょうか?」

 赤いクエストは危険だとNPCは説明していた。
 その危険が何を示すのかに関してもアルストは予想を立てている。

「たぶん、秘境の手前に強力なボスモンスターがいるんじゃないでしょうか」
「そいつがレアボスモンスターだというのか?」
「それは分かりません。単純に強力なボスモンスターかもしれませんし、仮にそこにレアボスモンスターがいたとすると……勝ち目はなさそうです」
「まあ、このパーティですからね」

 昨日始めたばかりの初心者パーティで、イベントレアボスモンスターを倒せたことだけでも奇跡に等しいのだ。
 それが強力なボスモンスターが現れる予定のクエストでクエストレアボスモンスターが現れたとなれば一蹴される未来しか浮かばない。
 それは三人とも同じようだった。

「……ア、アルスト、その能力を抑えることはできないのか?」
「発動してるのかも分からないのに、抑えられるわけないじゃないですか」
「そういえば、まだステイタスを振り分けてなかったんじゃないですか?」
「あっ! そうでした」

 アルストは慌ててステイタス画面を開くと、最後に振り分けてから四回もレベルアップをしていたので20のポイントが貯まっている。
 さらにキングベアーを倒した時に新しいスキルを習得していたことも忘れていたことも思い出した。

「新しいスキルか。私は腕力上昇1というのを習得したぞ」
「私はまだ何も習得できていません」
「職業のレベルが10まで上がれば何かしら習得できると思いますよ。他のスキルの条件は分かりませんけど」
「他のスキルですか?」

 首を傾げるアレッサに対して、アルストはブレイダー系のスキルについて説明した。

「今回のキングベアー戦も、このアニマルブレイダーがなかったら倒せなかったと思います」
「……アルストさんって、実は今の時点でもものすごく強いんじゃないですか?」
「……確かにな。今回のスキルによってはさらに強くなるってことだろう?」
「いやいや、10%補正しかないんですよ? 今はたまたま上手くいっているだけで、最初のレアボスモンスターには二回もDPに追い込まれているんですから強いわけないじゃないですか」

 淡々と口にするアルストは二人から白い目で見られてしまった。
 あはは、と笑いながらスキルから確認する。

「今回は……スキル名が……一瞬の煌めき?」
「なんだその名前は?」
「いや、俺に聞かれても……」

 アルストは次にスキル効果の部分に目を向けた。

「モンスターが半径三メートル以内にいる時に俊敏が高補正、だってさ。パッシブスキルだね」
「パッシブスキル?」
「えっと、何もしていなくても自動的に発動されるスキルのことかな。攻撃スキルは自分の意志で発動するし条件が必要だよね。耐久力上昇や腕力上昇も自分の意志で発動するけど、これは違うんだ」
「なんだか便利なスキルなんですね」
「実際のところ、高補正がどれだけ補正されるかが分からないし、突然足が速くなったら戦いづらくなるかもしれないし、試してみてからだね」

 一瞬の煌めきを上手く活用した戦い方を考えておかなければいけないなと思いつつ、次にステイタスを振り分けていく。
 剣術士ソードメイト魔導師マジシャンの両方に活用できるよう振り分けを終えたアルストは、そのまま秘境を探すため通路を進み始めた。

 アルスト:レベル17
 腕力:41(+21)
 耐久力:36(+20)
 魔力:31(0)
 俊敏:36(+14)
 器用:26(0)
 魅了:26(0)
 知恵:26(0)
 体力:36(+13)
 運:20(0)
 DP:0
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