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第一章:天上のラストルーム
第43話:謎のクエスト③
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慌てて左右に分かれた二人だったが、アシュラが狙ってきたのはアルストだった。
アスリートによる加速と謎の加速を目の当たりにして、一番の脅威はアルストだと判断したのだろう。
アルストは内心でアレッサが狙われなくてよかったと安堵していたが、アシュラのHPを確認したらそれも当然だった。
「ほとんどダメージがないのか」
加えてサンダーボルトの直撃を受けたにもかかわらず僅かな動きの乱れだけでそのまま動き続けている。
キングベアーと同様に麻痺耐性持ちの可能性が浮上してきた。
アルストが考えを巡らせていると、アシュラは追いつけないと判断したのか杖を突き出して魔法を発動する。
「ヤバい!」
杖の先に顕現したのは風が可視化された緑の球体。その中では凝縮された風が暴れまわる様子が見て取れる。
一度腕を引き、再び突き出されると緑の球体――エアーボムがアルストめがけて撃ち出された。
横っ飛びで直撃を回避したアルストだったが、エアーボムは着弾と同時に凝縮した風を周囲に放出、かまいたちが発生してアルストへと襲い掛かった。
「がああああっ!」
「アルストさん!」
体中をかまいたちに切りつけられてHPが二割減少する。
大したダメージではないのだが、痛覚がリアルに再現されている天上のラストルームでは精神的に追い込まれてしまう。
追撃をさせないためにアレッサがフレイムを放つが、そのすべてが大盾によって防がれてしまう。
それはエレナのロングジェベリンも同様であり、アシュラは片手間に遠距離攻撃を防ぎながら一歩ずつアルストへと近づいてきた。
「あくまでも、狙いは俺か!」
アルスター3を杖代わりに立ち上がったアルストは、睨みつけるようにアシュラを見据えている。
ヒューマンブレイダーがあり、剛力の腕輪も装備している。一撃でも浴びせることができれば何か糸口を見いだせるのではないかと思い、頭の中で一瞬の煌めきを用いた戦法を考え始めた。
(さっきはスキルのことをすっかり忘れていたからな。アスリートを発動して近づくのもありだし、カウンター狙いでこちらから近づくのもありか)
アシュラがまた一歩近づいてくる。
(大盾の内側に入ってしまえば連撃を当てることは容易か? いや、何かしら対策があると考えるべきだろう)
アシュラがさらにもう一歩。
アレッサとエレナが大声で呼びかけているが、今のアルストには聞こえていない。
(……いや、今なら救済処置だってある。これを頼れるのもあと一回だけだけど、ここで使わないでいつ使うんだよ!)
一度大きく深呼吸。
何かを察知したのか、アシュラは再びエアーボムを発動すると腕を引いてすぐに突き出した。
アルストは腰を落とすとアスリートを発動して前進。
迫るエアーボムの下をかいくぐると、アルスター3を大上段に構えたまま、すぐさま最後のアスリートまで発動してアシュラに密着する。
「――よう、後光神。これでもくらえ!」
密着した状態からのパワーボム。
飛び上がるのに比べて威力は落ちるものの、通常攻撃に比べると威力は上がり爆発の追加ダメージ、さらにヒューマンブレイダーの効果が上乗せされるので威力は絶大だった。
『グルアアアアアアアアァァッ!』
アシュラのHPが一撃で八割まで減少、畳み掛けるようにして連撃を加えていく。
ただ、アルストは驚いていた。
ゴルイドよりも強いだろうアシュラに対して、スキル効果が上乗せされているとはいえ二割近いダメージを与えられるとは思っていなかったからだ。
そして思い至った先が剛力の腕輪である。
装備者の腕力を高補正する剛力の腕輪によって、文字通りアルストの予想を上回る高補正がかかったのだろう。
連撃によってさらに一割のHPを削り取ったアルストだったが、アシュラも黙ってやられているわけではない。
巨体には似合わない鋭い動きから大剣と大斧を振り下ろす。
だが、アルストはあえてアシュラに密着している。それは一瞬の煌めきがあるからだ。
「はあっ!」
ただ回避するだけでは彼我の距離が離れてしまう。そうならないよう力加減に注意して攻撃を回避すると、すぐに回り込んで再び連撃を加える。
三面あるからだろう、背後という弱点が見当たらないので大ダメージとはいかないが、それでも補正効果によって着実にダメージを与えることができていた。
一瞬の煌めきによる回避と、スキルと装備補正による攻撃。
アレッサとエレナは大盾を引きつけるために遠距離攻撃スキルを発動し続けている。
アルストは通常攻略ではあり得ない、ボスモンスターと密着したままという状況でHPを削り続けていた。
そして訪れた残りHP五割。
警戒を強めるアルストは、攻撃手段が変われば距離をとってでも回避するつもりで連撃を続けている。
アレッサとエレナは固唾を呑んで見守っていた。
そんな中、六臂をゆっくりと頭上に掲げたアシュラは、六方向へ向けてそれぞれの武器を振り下ろした。
地面が陥没し、その威力によって微弱ながら地震が発生。
ここから攻撃に繋がるだろうと判断したアルストが離れようとしたその時だった。
「――えっ?」
陥没した地面。その周囲二メートル先がさらに陥没すると土がせり上がり円状に壁ができあがる。
壁の外側にアレッサとエレナ。内側にアルストとアシュラ。
外側から壁を破壊しようと攻撃を加えるがびくともしない。
内側ではアシュラの三面が何かをぶつぶつと呟いている。そして――
『アアアアアアアアァァァァッ!』
甲高い悲鳴にも似た声と同時に壁の内側から炎の柱が立ち上がった。
アスリートによる加速と謎の加速を目の当たりにして、一番の脅威はアルストだと判断したのだろう。
アルストは内心でアレッサが狙われなくてよかったと安堵していたが、アシュラのHPを確認したらそれも当然だった。
「ほとんどダメージがないのか」
加えてサンダーボルトの直撃を受けたにもかかわらず僅かな動きの乱れだけでそのまま動き続けている。
キングベアーと同様に麻痺耐性持ちの可能性が浮上してきた。
アルストが考えを巡らせていると、アシュラは追いつけないと判断したのか杖を突き出して魔法を発動する。
「ヤバい!」
杖の先に顕現したのは風が可視化された緑の球体。その中では凝縮された風が暴れまわる様子が見て取れる。
一度腕を引き、再び突き出されると緑の球体――エアーボムがアルストめがけて撃ち出された。
横っ飛びで直撃を回避したアルストだったが、エアーボムは着弾と同時に凝縮した風を周囲に放出、かまいたちが発生してアルストへと襲い掛かった。
「がああああっ!」
「アルストさん!」
体中をかまいたちに切りつけられてHPが二割減少する。
大したダメージではないのだが、痛覚がリアルに再現されている天上のラストルームでは精神的に追い込まれてしまう。
追撃をさせないためにアレッサがフレイムを放つが、そのすべてが大盾によって防がれてしまう。
それはエレナのロングジェベリンも同様であり、アシュラは片手間に遠距離攻撃を防ぎながら一歩ずつアルストへと近づいてきた。
「あくまでも、狙いは俺か!」
アルスター3を杖代わりに立ち上がったアルストは、睨みつけるようにアシュラを見据えている。
ヒューマンブレイダーがあり、剛力の腕輪も装備している。一撃でも浴びせることができれば何か糸口を見いだせるのではないかと思い、頭の中で一瞬の煌めきを用いた戦法を考え始めた。
(さっきはスキルのことをすっかり忘れていたからな。アスリートを発動して近づくのもありだし、カウンター狙いでこちらから近づくのもありか)
アシュラがまた一歩近づいてくる。
(大盾の内側に入ってしまえば連撃を当てることは容易か? いや、何かしら対策があると考えるべきだろう)
アシュラがさらにもう一歩。
アレッサとエレナが大声で呼びかけているが、今のアルストには聞こえていない。
(……いや、今なら救済処置だってある。これを頼れるのもあと一回だけだけど、ここで使わないでいつ使うんだよ!)
一度大きく深呼吸。
何かを察知したのか、アシュラは再びエアーボムを発動すると腕を引いてすぐに突き出した。
アルストは腰を落とすとアスリートを発動して前進。
迫るエアーボムの下をかいくぐると、アルスター3を大上段に構えたまま、すぐさま最後のアスリートまで発動してアシュラに密着する。
「――よう、後光神。これでもくらえ!」
密着した状態からのパワーボム。
飛び上がるのに比べて威力は落ちるものの、通常攻撃に比べると威力は上がり爆発の追加ダメージ、さらにヒューマンブレイダーの効果が上乗せされるので威力は絶大だった。
『グルアアアアアアアアァァッ!』
アシュラのHPが一撃で八割まで減少、畳み掛けるようにして連撃を加えていく。
ただ、アルストは驚いていた。
ゴルイドよりも強いだろうアシュラに対して、スキル効果が上乗せされているとはいえ二割近いダメージを与えられるとは思っていなかったからだ。
そして思い至った先が剛力の腕輪である。
装備者の腕力を高補正する剛力の腕輪によって、文字通りアルストの予想を上回る高補正がかかったのだろう。
連撃によってさらに一割のHPを削り取ったアルストだったが、アシュラも黙ってやられているわけではない。
巨体には似合わない鋭い動きから大剣と大斧を振り下ろす。
だが、アルストはあえてアシュラに密着している。それは一瞬の煌めきがあるからだ。
「はあっ!」
ただ回避するだけでは彼我の距離が離れてしまう。そうならないよう力加減に注意して攻撃を回避すると、すぐに回り込んで再び連撃を加える。
三面あるからだろう、背後という弱点が見当たらないので大ダメージとはいかないが、それでも補正効果によって着実にダメージを与えることができていた。
一瞬の煌めきによる回避と、スキルと装備補正による攻撃。
アレッサとエレナは大盾を引きつけるために遠距離攻撃スキルを発動し続けている。
アルストは通常攻略ではあり得ない、ボスモンスターと密着したままという状況でHPを削り続けていた。
そして訪れた残りHP五割。
警戒を強めるアルストは、攻撃手段が変われば距離をとってでも回避するつもりで連撃を続けている。
アレッサとエレナは固唾を呑んで見守っていた。
そんな中、六臂をゆっくりと頭上に掲げたアシュラは、六方向へ向けてそれぞれの武器を振り下ろした。
地面が陥没し、その威力によって微弱ながら地震が発生。
ここから攻撃に繋がるだろうと判断したアルストが離れようとしたその時だった。
「――えっ?」
陥没した地面。その周囲二メートル先がさらに陥没すると土がせり上がり円状に壁ができあがる。
壁の外側にアレッサとエレナ。内側にアルストとアシュラ。
外側から壁を破壊しようと攻撃を加えるがびくともしない。
内側ではアシュラの三面が何かをぶつぶつと呟いている。そして――
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甲高い悲鳴にも似た声と同時に壁の内側から炎の柱が立ち上がった。
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