天上のラストルーム ~最弱固有能力でのんびりと無双します~

渡琉兎

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第一章:天上のラストルーム

第54話:ミニマムキャット討伐⑤

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 アルストはその後、アレッサとエレナと合流してイベント専用マップに移動した。
 遅い時間にも関わらずいまだ多くのプレイヤーがミニマムキャットを狩り続けている。
 今回も他のプレイヤーからは離れてミニマムキャットを探そうと移動を開始した三人だったが、誰もいない場所には討伐されていないモンスターがいるのが道理であり、まずはモンスター討伐からのスタートとなった。
 最初の頃は戦い方を探りながらだったので苦戦を強いられていたが、一度戦ってしまえばある程度の攻略法を見出すことは可能である。
 アルストだけではなくエレナも前線で奮戦しており、アレッサもタイミングを見て魔法でサポートしてくれる。
 討伐は一〇分ほどで完了して一息つくことができた。

「あとはミニマムキャットを探すだけだな!」
「アルストさんの能力があれば、意外にもあっさり見つかるんじゃないですか?」
「いやいや、そう上手くはいきませんよ」

 楽観的な二人とは対照的にアルストは不安を感じていた。
 アリーナに話した通り、入れ食い状態だった最初の時とは異なり【ねこじゃらし】はもうない。
 ここで入れ食いとなればアルストの能力で集まってきたと証明できるだろうが、さてどうなることか。

 ――結果、二時間粘ったものの討伐できたのは三人合わせて九匹だけだった。
 予想外の結果だったのか二人はたいそう落ち込んでいる。
 アルストは予想通りの結果だったので特に気にすることなくアーカイブへと戻り、二回目のランキング更新を待つことにした。

「お昼のあれは何だったのでしょうか」
「たまたま、では説明できないくらいに大量だったのになぁ」
「最初の【ねこじゃらし】が呼び水になったんだと思いますよ」

 そう言ってアルストはアリーナにも話した仮説を伝えた。
 最初は頷きながら聞いていた二人だったが、途中から何故か険しい表情になってきたのでアルストは首を傾げてしまう。

「あの、どうしたんですか?」
「……その考え方だと、これから討伐数を増やすのは難しいかと思ってな」
「……そうですね。10000位以内なんて話してましたけど、それも夢のまた夢になりそうです」
「参加賞を手に入れるための参加ですからね。今回の更新では良い順位にいると思いますけど、明日からはどんどん落ちると思いますよ」

 アルストの言葉に二人は分かりやすく落ち込んでしまった。

 ※※※※

 三人は世間話をしながら〇時を待ち、更新されたランキングを確認した。

「……アルストが956位、私が6307位、アレッサが46201位か」
「パーティでは16989位でしたね」
「今の状況で16989位でしたら、これからパーティで10000位以内を目指すのはやはり厳しそうですね」

 ランキングを見て現実を理解したのか、アレッサは個人の順位も奮わないことで参加賞だけでも手に入れたいと気持ちを入れ替えている。
 だがエレナは自身の順位が10000位以内に入ったことで、個人では狙えないものかと考えていた。

「……アリーナにお願いして【ねこじゃらし】を貰えないだろうか」
「ちょっとエレナちゃん! それはダメよ!」
「だが上位に行くにはこの方法しかないだろう!」
「絶対にダメ! 参加するだけの予定だったじゃないの!」
「それはそうだが……」

 二人はアリーナが元攻略組だということを知らない。もしかしたら【ねこじゃらし】というアイテムくらいなら融通してくれるかもしれない。
 そう思ったアルストだが口にはしなかった。
 アリーナが元攻略組ということを隠しているかもしれないし、そもそもパーティ以外の人を頼って上位に入っても楽しくないとアルストは考えていた。

「俺達だけでやれることをやりましょう。その結果、10000位以内に入れなければ、それはそれで楽しかったと終わらせればいいんですよ」
「アルストさんの言う通りです。アリーナさんに迷惑を掛けてはいけません!」
「……わ、分かった」

 渋々納得したエレナに苦笑しながら、アルストはログアウトすることを口にした。

「二人は明日、何時からログインするんですか?」
「明日も早い時間から参加しますよ」
「私もだ」
「えっ? でも、リアルの予定とか無いんですか?」

 平日の予定はないのかとアルスト疑問に思っていた。
 学生なら学校が、社会人なら仕事があるのではないかと。自分が大学生で今は授業がないので忘れがちになってしまうが、普通の学生や社会人なら平日は忙しいはずなのだ。

「俺は授業もないですし、朝からの予定ですけど……」
「それじゃあ朝から参加しましょう!」
「それもそうだな! アルスト、遅れるなよ?」

 VRゲームなどではリアルの情報を詮索することはあまり良しとされていない。
 友人だったり、お互いに了承の上でリアルを公開するならまだしも、一方的に詮索するのは相手に悪印象を与えるからだ。
 アルストも詮索は良くないかと判断し、そのまま明日の予定を確認するにとどめた。

「それじゃあ、明日は八時くらいにログインしますね」
「連絡、入れてくださいね?」
「……わ、分かってますよ」

 最後にアレッサから釘を刺されたアルストは、アーカイブの入口近くからログアウトした。

「……リアル、ですか」
「どうしたのだ、アレッサ?」
「ううん、なんでもないわ」

 アレッサの浮かない表情に、エレナは首を傾げるだけでそのままアーカイブへと歩き出してしまう。

「……私って、何なんだろう」

 アレッサの呟きは誰の耳にも届かないのだった。
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