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第一章:天上のラストルーム
第57話:ミニマムキャット討伐⑧
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洞窟に飛び込んだアルストには何が起きたのか分からなかった。
アーカイブからイベント専用マップに移動する時の感覚が洞窟に飛び込んだ瞬間にもあったのだが、目の前の光景があまりにも不思議な光景だったのだ。
「ここは、闘技場、ですか?」
後ろから聞こえてきた声に驚き振り返ると、そこにはアレッサとエレナが立っていた。
「二人もここに来ていたんですね」
「あ、あぁ。突然移動したと思ったら、ここに立っていたんだ」
「私達がパーティだから、アルストさんが洞窟に飛び込んだのと同時に移動したんだと思います」
ここが紛れもなくイベントボスモンスターとエンカウントした時に移動する専用マップなら、どこかにボスモンスターが隠れているはずなのだが、アルストには一つの疑問が残っていた。
「でも俺、イベントボスモンスターを見てませんよ? ただ洞窟に飛び込んだだけですし」
「言われてみるとそうですよね」
「洞窟に飛び込んだ時点でエンカウントしたとみなされたんじゃないか?」
「まさか、そんなめちゃくちゃな条件のわけないじゃ――」
『ギャギャギャギャギャーッ!』
アルストの言葉を遮り聞こえてきたモンスターの声に三人は身構えた。
周囲に視線を向けるがボスモンスターらしき影はなく、アルストはすぐにステイタスを開いて装備を変更、剛力の腕輪を装備してスキルを発動すると、さらに耐久力上昇のスキルを発動する。
エレナは腕力上昇、アレッサも魔力上昇をそれぞれ発動した。
三人の臨戦態勢が整ったとみるや、アルストの視界の先で何かが動いた。
「……あっちから、来るみたいです」
「……私達で勝てると思うか?」
「……分かりませんが、やるしかありませんよ」
「……勝ちましょう」
そこからは無言となった。
ゆっくりと迫ってくる声の正体をこの目で確かめるために集中していた――が、突然アルストが吹き飛ばされた。
「ぐおおおおおおおおっ!」
「アルスト!」
「そんな、何があったの!」
地面を削りながら止まったアルストは、吹き飛ばされたわけではなかった。
慌てて振り返りアルストを見た二人は、何かの陰に隠れているアルストを確認することができないでいる。
そしてその何かがイベントボスモンスターなのだと理解するのに時間は掛からなかった。
「こ、このやろうおおおおっ!」
『ギャーギャギャギャギャッ!』
アルストは間一髪のところでイベントボスモンスターの一撃を防いでいた。
スレイフニルを振り抜かれた鋭い爪にぶつけたのだが、勢いに負けて地面を足で削りながら押し込まれてしまった。
ダメージもあり二割が減少、それでも鍔迫り合いまで持ち込んだところで反撃に移る。
「いい加減、離れろよ!」
『ギャギャフッ!』
袈裟斬りからの斬り上げに一割にも満たないダメージを負ったイベントボスモンスター――主猫ビッグキャットは大きく飛び退きアルストから距離を取った。
今度はこちらからと言わんばかりに駆け出したアルストはスレイフニルを大上段に構えて飛び上がると、赤い光が刀身を纏う。
『ギャギャーギャーッ!』
危険を察知したのか受け止めるでもなく、回避するでもなく、ビッグキャットは口を開けて炎を吐き出した。
「ちいっ!」
慌てて振り下ろしたスレイフニルと炎が接触した直後に爆発が巻き起こる。
「アルスト! 貴様ああああっ!」
スピルニアを構えて駆け出したエレナは高速の刺突は放つ。
「援護するわ、エレナちゃん!」
その後方からフレイムが三発放たれてビッグキャットめがけて飛んでいく。
『ギャフギャフフーッ!』
エレナを追い越して殺到したフレイムに対して、ビッグキャットは迎撃することなくそのまま分厚い体毛で受け止める。
炎を吐き出したことから炎耐性があるのだろう。体毛の先端がわずかに焦げただけでダメージといえるダメージにはつながっていない。
少しでも動きに動揺が出ればと思っていたエレナだったが、ビッグキャットの視線は完全にエレナへと向いており動揺はおろか完全に狙われてしまっていた。
「それでも、やってやるさ!」
『ギャギャギャギャッ!』
穂先と爪が数度激突、甲高い音が専用マップに響き渡り耳朶を震わせる。
速度で秀でているエレナの刺突がビッグキャットに掠ることもあるが、こちらもダメージには程遠い。
一方ビッグキャットの一撃は重く、それでいて鋭さがある。掠る回数は少なくてもエレナのHPは衝撃により着実に減少していた。
「エレナちゃん、一度離れて!」
「ダ、ダメだ! そんな余裕はない!」
一瞬でも気を抜けば鋭い爪が直撃するとエレナの直感が警鐘を鳴らしている。
だがこのままHPを削られてしまっても最終的にはエレナが先にDPを喰らってしまう。
アルストがいないだけで、これほどにも自分は何もできないのかと自虐的になってしまう。
それでもその場に立ち続け、粘り続けられたのはエレナの実力あってのことだ。
そして――その頑張りを見逃すアルストではなかった。
「ぶっとべええええええええええぇぇっ!」
スレイフニルを再び大上段に構えたアルストが超低空飛行と見間違えんばかりに低いところから超加速で突っ込んできた。
二つ目のストックを使用して発動されたアスリート。その直前に大上段に構えてパワーボムの予備動作を完了させていたのだ。
反応が間に合わないビッグキャット。
アルストが迫るはそんなビッグキャットの後方――弱点となる背中だった。
振り下ろされた二度目のパワーボムは、何にもさえぎられることなく背中を斬り裂き、大爆発を巻き起こしてビッグキャットに大ダメージを与えると、HPを三割削ることに成功した。
「アルスト! お前、生きていたのか!」
「二人を残して簡単にはやられませんよ!」
強気にそう口にしたアルストだったが、残りHPは五割弱まで減少している。ブリッシュロードがなければ半分以下になっていたかもしれないと考えると、アリーナには感謝の言葉しか浮かんでこなかった。
「だけど、まだです」
「分かっている!」
「二人とも、来ますよ!」
『ギャルルルルアアアアァァッ!』
怒りの声を上げて、ビッグキャットが煙の中から突っ込んできた。
アーカイブからイベント専用マップに移動する時の感覚が洞窟に飛び込んだ瞬間にもあったのだが、目の前の光景があまりにも不思議な光景だったのだ。
「ここは、闘技場、ですか?」
後ろから聞こえてきた声に驚き振り返ると、そこにはアレッサとエレナが立っていた。
「二人もここに来ていたんですね」
「あ、あぁ。突然移動したと思ったら、ここに立っていたんだ」
「私達がパーティだから、アルストさんが洞窟に飛び込んだのと同時に移動したんだと思います」
ここが紛れもなくイベントボスモンスターとエンカウントした時に移動する専用マップなら、どこかにボスモンスターが隠れているはずなのだが、アルストには一つの疑問が残っていた。
「でも俺、イベントボスモンスターを見てませんよ? ただ洞窟に飛び込んだだけですし」
「言われてみるとそうですよね」
「洞窟に飛び込んだ時点でエンカウントしたとみなされたんじゃないか?」
「まさか、そんなめちゃくちゃな条件のわけないじゃ――」
『ギャギャギャギャギャーッ!』
アルストの言葉を遮り聞こえてきたモンスターの声に三人は身構えた。
周囲に視線を向けるがボスモンスターらしき影はなく、アルストはすぐにステイタスを開いて装備を変更、剛力の腕輪を装備してスキルを発動すると、さらに耐久力上昇のスキルを発動する。
エレナは腕力上昇、アレッサも魔力上昇をそれぞれ発動した。
三人の臨戦態勢が整ったとみるや、アルストの視界の先で何かが動いた。
「……あっちから、来るみたいです」
「……私達で勝てると思うか?」
「……分かりませんが、やるしかありませんよ」
「……勝ちましょう」
そこからは無言となった。
ゆっくりと迫ってくる声の正体をこの目で確かめるために集中していた――が、突然アルストが吹き飛ばされた。
「ぐおおおおおおおおっ!」
「アルスト!」
「そんな、何があったの!」
地面を削りながら止まったアルストは、吹き飛ばされたわけではなかった。
慌てて振り返りアルストを見た二人は、何かの陰に隠れているアルストを確認することができないでいる。
そしてその何かがイベントボスモンスターなのだと理解するのに時間は掛からなかった。
「こ、このやろうおおおおっ!」
『ギャーギャギャギャギャッ!』
アルストは間一髪のところでイベントボスモンスターの一撃を防いでいた。
スレイフニルを振り抜かれた鋭い爪にぶつけたのだが、勢いに負けて地面を足で削りながら押し込まれてしまった。
ダメージもあり二割が減少、それでも鍔迫り合いまで持ち込んだところで反撃に移る。
「いい加減、離れろよ!」
『ギャギャフッ!』
袈裟斬りからの斬り上げに一割にも満たないダメージを負ったイベントボスモンスター――主猫ビッグキャットは大きく飛び退きアルストから距離を取った。
今度はこちらからと言わんばかりに駆け出したアルストはスレイフニルを大上段に構えて飛び上がると、赤い光が刀身を纏う。
『ギャギャーギャーッ!』
危険を察知したのか受け止めるでもなく、回避するでもなく、ビッグキャットは口を開けて炎を吐き出した。
「ちいっ!」
慌てて振り下ろしたスレイフニルと炎が接触した直後に爆発が巻き起こる。
「アルスト! 貴様ああああっ!」
スピルニアを構えて駆け出したエレナは高速の刺突は放つ。
「援護するわ、エレナちゃん!」
その後方からフレイムが三発放たれてビッグキャットめがけて飛んでいく。
『ギャフギャフフーッ!』
エレナを追い越して殺到したフレイムに対して、ビッグキャットは迎撃することなくそのまま分厚い体毛で受け止める。
炎を吐き出したことから炎耐性があるのだろう。体毛の先端がわずかに焦げただけでダメージといえるダメージにはつながっていない。
少しでも動きに動揺が出ればと思っていたエレナだったが、ビッグキャットの視線は完全にエレナへと向いており動揺はおろか完全に狙われてしまっていた。
「それでも、やってやるさ!」
『ギャギャギャギャッ!』
穂先と爪が数度激突、甲高い音が専用マップに響き渡り耳朶を震わせる。
速度で秀でているエレナの刺突がビッグキャットに掠ることもあるが、こちらもダメージには程遠い。
一方ビッグキャットの一撃は重く、それでいて鋭さがある。掠る回数は少なくてもエレナのHPは衝撃により着実に減少していた。
「エレナちゃん、一度離れて!」
「ダ、ダメだ! そんな余裕はない!」
一瞬でも気を抜けば鋭い爪が直撃するとエレナの直感が警鐘を鳴らしている。
だがこのままHPを削られてしまっても最終的にはエレナが先にDPを喰らってしまう。
アルストがいないだけで、これほどにも自分は何もできないのかと自虐的になってしまう。
それでもその場に立ち続け、粘り続けられたのはエレナの実力あってのことだ。
そして――その頑張りを見逃すアルストではなかった。
「ぶっとべええええええええええぇぇっ!」
スレイフニルを再び大上段に構えたアルストが超低空飛行と見間違えんばかりに低いところから超加速で突っ込んできた。
二つ目のストックを使用して発動されたアスリート。その直前に大上段に構えてパワーボムの予備動作を完了させていたのだ。
反応が間に合わないビッグキャット。
アルストが迫るはそんなビッグキャットの後方――弱点となる背中だった。
振り下ろされた二度目のパワーボムは、何にもさえぎられることなく背中を斬り裂き、大爆発を巻き起こしてビッグキャットに大ダメージを与えると、HPを三割削ることに成功した。
「アルスト! お前、生きていたのか!」
「二人を残して簡単にはやられませんよ!」
強気にそう口にしたアルストだったが、残りHPは五割弱まで減少している。ブリッシュロードがなければ半分以下になっていたかもしれないと考えると、アリーナには感謝の言葉しか浮かんでこなかった。
「だけど、まだです」
「分かっている!」
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『ギャルルルルアアアアァァッ!』
怒りの声を上げて、ビッグキャットが煙の中から突っ込んできた。
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