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魔法学園

ダンジョン・一三階層③

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 ソウルイーターは自身が死ぬ間際になると魔力を暴走させることがある。
 その暴走によって今のように爆発を起こしたり、近くにいる魔獣に残る力を託して死んでいく場合もある。
 ただし、爆発すると言っても本来ならば致命傷を与えられる前の戦闘で大半の魔力を使い果たしてしまうので小規模のものがほとんどだ。
 しかし、今回の場合はソウルイーターの予想を上回る動きと力をアルが発揮したことによりその身には大量の魔力が蓄積されたままになっていた。
 故に、階層全体を揺るがすほどの大爆発がアルの間近で起きてしまったのだ。
 普通なら即死、良くて致命傷になり得る大怪我を負っても仕方がない威力の大爆発だったのだが──

「…………い、生きてるのか? ……これは、土の壁……スプラウスト先生?」
「アル君、生きてるの! 生きてるなら返事をしなさい!」
「あ! い、生きてます、スプラウスト先生!」

 アルの声が聞こえたのか、土の壁はしばらくして地面へと還り、そして目の前に現れたペリナに抱きしめられてしまった。

「うわぷっ!」
「……あぁ、よかった。本当によかった」
「……あの、俺は大丈夫ですから、その、離れていただけると、ありがた──うぷっ!」
「ダメ、もう少しこのまま」
「……分かりました」

 常に飄々としており、ふざけた態度を取ることも多いペリナだが、この時ばかりはわずかに体が震えていた。
 そのことに気づいたアルも無理やり離れるようなこともせず、今だけはペリナの思う通りにさせてあげることにした。

「……もう、無茶はしないでね」
「……どうでしょうか、約束はできません」
「……ここは、しませんって言うところじゃないの?」

 アルは肩を竦めることを返答をすると、頭の上から苦笑が返ってきた。

「全く、不思議な生徒さんだこと」

 背中に回されていた両腕から力が抜けてようやく解放されたアルは、同じような表情で笑い返している。

「それはこっちのセリフですよ」
「……はぁ。こんなんじゃあ、教師失格ね」
「何を言ってるんですか。スプラウスト先生は俺のことを魔法で守ってくれました、それのどこが教師失格なんですか?」

 自信をなくしたような雰囲気のペリナにはっきりとそう伝えたのだが、それでもペリナの表情はどこか沈んでいる。

「それ以上に助けてもらっているもの。アル君の周りに人が集まるのも分かる気がするわ」
「昨日はたまたまですよ。ゾランとか上の貴族には煙たがられますからね」
「そこは実力や人柄とはまた別の問題が絡んでくるから仕方ないわよ」

 気持ちを切り替えるためか体に付いた埃を軽く払いながら、ペリナは表情を引き締めてアルの状態を気にし始めた。

「アル君、魔力は大丈夫? 魔力融合を乱発していたようだけど」
「正直、危なかったですね。最後の魔法剣で決まらなかったら、マジックポーションを飲む隙を伺いながら戦うところでした」

 そう言いながら、アルはアイテムボックスからマジックポーションを取り出すと一気に飲み干した。

「……おぉ、ポーションってすごいですね。魔力が一気に回復しましたよ」
「おそらくだけど、アル君の魔力総量は中の上くらいだと思う。だとしたら、そのポーションでは半分くらいしか回復しないはずだから、これからは魔法の使用は極力控えるようにね」
「分かりました。でも、スプラウスト先生はどうなんですか?」

 アルが魔法を乱発したように、ペリナも魔法を多用している。
 特に最初と最後に使ったアースウォールは強固なものにするため大量の魔力を注ぎ込んだはずだ。

「私の魔力量は上の上だから、まだまだいけるわよ。これで攻撃に優れた属性のレベルが高かったらよかったんだけど、火属性はレベル2だし、火山のダンジョンでは相性が悪いのよね」

 ここで再び肩を落としてしまったペリナを慰めながら、アルは下層へと下りる階段を指し示した。

「どうやら、ソウルイーターは階段を守るように居座っていたみたいですね」
「本当ね、全然気づかなかったわ」
「……ここから先は、スプラウスト先生に頼ることになると思います」

 魔力があれば動きが鈍ることもないので剣術で戦うことは可能だ。
 だが、アルはあえてペリナに頼った戦い方をしようとしている。
 それは自信を失いかけているペリナを助けるためでもあった。

「ソウルイーターなんてイレギュラーがそう何度も現れるとは思いませんし、俺はスプラウスト先生を頼りにしていますから、よろしくお願いしますね」
「……そうね、ここで頑張らなきゃ女じゃないわよ! 任せて、アル君!」

 両手で頬を叩いて気合いを入れたペリナと共に、アルは一四階層へと足を踏み入れた。
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