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代表選考会
トーナメント戦④
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対戦相手──ヴィンス・レストライトと相対したアルは腰に差していたオールブラックを抜いて構える。
一方でヴィンスはアルを指差しながら威嚇だろうか、大声で勝利宣言をしていた。
「貴様など、ジーレイン様が手を下すまでもなく俺様が倒してやる!」
「そうですか」
「な、舐めた口を利きやがるな! いいだろう、ぶっ飛ばしてやる!」
頭に血が上ったのだろうか、ヴィンスも杖を抜いて構えているのだが魔力が無駄に注がれている。
(ふむ、あれでは魔法が暴発するんじゃないのか? あれが魔法装具だとしたら何とかなるものなのか?)
疑問に思いながらも口にすることはなく、審判の開始の合図と共にヴィンスが魔法を発動させた。
「くらえ、ウォーターラン──ぶへあっ!」
アルの見立て通り、魔力が魔法の容量以上に注ぎ込まれたことで暴発しヴィンスはずぶ濡れになってしまった。
これでAクラスなのかと疑問に思いながらもアルはその水を利用して魔法を発動する。
「ヘビーフォール」
チグサが放ったヘビーフォールとは規模が違うものの、その使い方も異なっている。
ヴィンスの顔より一回りほどの大きさで作り出した水の塊がそのまま顔を覆ってしまったのだ。
「ごぶおっ! ごぼがばばっ!」
「降参しないと窒息死するぞ。いや、この場合は溺死か?」
「ごぼっ! ……ご、ごぼばぶっ!」
「……あぁ、そうか。この状態では喋れないよな、ほら」
あまりの苦しさに膝を付いてしまったヴィンスを見て、アルは仕方なくヘビーフォールを解除した。
何度も咳き込んでいる様子からこのまま降参してくれれば楽なのにと考えていたのだが――
「ごほっ! おぅえっ! ……ウォーターランス!」
「不意打ちとは、汚い真似をするんですね!」
顔を上げるのと同時に放たれたウォーターランスだったが、反撃も想定内だったアルにとっては防ぐのも簡単で下位のウォーターアローで相殺してしまう。
レベル2の魔法がレベル1で防がれた事実に魔法技術では勝てない、そう考えるのが普通なのだが頭に血が上っているヴィンスには挑発にしか見えなかった。
次に放たれた魔法は先ほどアルが使ったヘビーフォールの巨大版だ。
しかし、こちらもチグサの魔法と比べると明らかに小さい。アルとしては全く脅威に感じられなかった。
「貴様も水属性が心の属性みたいだが、AクラスとFクラスの違いを見せつけてやる!」
「ん? ……あぁ、どうやら勘違いしているみたいだが……いや、勘違いでもないのか」
「何をぶつぶつと言ってやがる! これでも、くらえ!」
ここまで水属性しか使っていなかったことを思い出したアルはヘビーフォールへの対抗として土属性の魔法を発動させた。
「アースドーム」
自らを包み込むようにして土の壁を作り上げると、ヘビーフォールがその上へ降り注ぐ。
わずかに揺れはしたもののアースドームはどこも欠けることなく健在だ。
「ツリースパイラル」
「な、何だと!?」
さらにアースドームの中からツリースパイラルを放ちヴィンスの両手両足を縛り上げてその場へ釘付けにする。
相手が動けなくなったのを確認したアルはアースドームを解除すると目の前に巨大な火の玉――メガフレイムを顕現させた。
「……ま、まさか、水に土に木に火だと!?」
「さて、俺の心の属性はいったいどれなんだろうな?」
まるで挑発するかのようにそう口にしながら、オールブラックをヴィンスへと向けた。
「水属性が心の属性なんだろう? 相性でいえばそっちの方が有利なんだから、守ってみせろ」
「や、やってやる! 貴様なんぞに、負けてたまるか!」
膨大な魔力を感じ取ったアルだったが、その表情はとても残念そうにヴィンスを見つめている。
これだけの魔力があれば楽しい戦いができただろう、そんなもったいない感情を込めた溜息の後──二度目の魔力暴発が起きたのだ。
「……はは……そ、そんな……」
「冷静さを欠いた時点で、先輩の負けは確定していたんですよ。どうです、ここで降参するなら痛い目に遭わなくて済みますが?」
最後の忠告を口にしたアルを睨みつけながら、ヴィンスは今度こそメガフレイムを打ち消すためにヘビーフォールを発動させた。
今度は問題なく水の塊が顕現したのだが、最初に見せたヘビーフォールよりもさらに小さくなっており魔力の限界を迎えたのだと物語っている。
「……残念です、先輩」
「黙れ! こんなところで負けられない、俺様は負けられないんだよおおおおっ!」
放たれたヘビーフォールが真っすぐにメガフレイムへと迫るが――触れる前に水が沸騰して一瞬で蒸発してしまった。
「……嘘……嘘だ」
「それではさようなら、先輩」
「待て! こ、ここここ、降──」
ヴィンスの叫び声を遮るようにしてメガフレイムが放たれて爆発する。
しかし、致命傷となり得る威力を持っていたメガフレイムはヴィンスに痛みを与えただけですぐに自動治癒が発動された。
焼かれながら傷が癒えるというまたとない経験をしたヴィンスは泡を吹きながら気絶してしまい、そのままアルの勝利が宣告されたのだった。
一方でヴィンスはアルを指差しながら威嚇だろうか、大声で勝利宣言をしていた。
「貴様など、ジーレイン様が手を下すまでもなく俺様が倒してやる!」
「そうですか」
「な、舐めた口を利きやがるな! いいだろう、ぶっ飛ばしてやる!」
頭に血が上ったのだろうか、ヴィンスも杖を抜いて構えているのだが魔力が無駄に注がれている。
(ふむ、あれでは魔法が暴発するんじゃないのか? あれが魔法装具だとしたら何とかなるものなのか?)
疑問に思いながらも口にすることはなく、審判の開始の合図と共にヴィンスが魔法を発動させた。
「くらえ、ウォーターラン──ぶへあっ!」
アルの見立て通り、魔力が魔法の容量以上に注ぎ込まれたことで暴発しヴィンスはずぶ濡れになってしまった。
これでAクラスなのかと疑問に思いながらもアルはその水を利用して魔法を発動する。
「ヘビーフォール」
チグサが放ったヘビーフォールとは規模が違うものの、その使い方も異なっている。
ヴィンスの顔より一回りほどの大きさで作り出した水の塊がそのまま顔を覆ってしまったのだ。
「ごぶおっ! ごぼがばばっ!」
「降参しないと窒息死するぞ。いや、この場合は溺死か?」
「ごぼっ! ……ご、ごぼばぶっ!」
「……あぁ、そうか。この状態では喋れないよな、ほら」
あまりの苦しさに膝を付いてしまったヴィンスを見て、アルは仕方なくヘビーフォールを解除した。
何度も咳き込んでいる様子からこのまま降参してくれれば楽なのにと考えていたのだが――
「ごほっ! おぅえっ! ……ウォーターランス!」
「不意打ちとは、汚い真似をするんですね!」
顔を上げるのと同時に放たれたウォーターランスだったが、反撃も想定内だったアルにとっては防ぐのも簡単で下位のウォーターアローで相殺してしまう。
レベル2の魔法がレベル1で防がれた事実に魔法技術では勝てない、そう考えるのが普通なのだが頭に血が上っているヴィンスには挑発にしか見えなかった。
次に放たれた魔法は先ほどアルが使ったヘビーフォールの巨大版だ。
しかし、こちらもチグサの魔法と比べると明らかに小さい。アルとしては全く脅威に感じられなかった。
「貴様も水属性が心の属性みたいだが、AクラスとFクラスの違いを見せつけてやる!」
「ん? ……あぁ、どうやら勘違いしているみたいだが……いや、勘違いでもないのか」
「何をぶつぶつと言ってやがる! これでも、くらえ!」
ここまで水属性しか使っていなかったことを思い出したアルはヘビーフォールへの対抗として土属性の魔法を発動させた。
「アースドーム」
自らを包み込むようにして土の壁を作り上げると、ヘビーフォールがその上へ降り注ぐ。
わずかに揺れはしたもののアースドームはどこも欠けることなく健在だ。
「ツリースパイラル」
「な、何だと!?」
さらにアースドームの中からツリースパイラルを放ちヴィンスの両手両足を縛り上げてその場へ釘付けにする。
相手が動けなくなったのを確認したアルはアースドームを解除すると目の前に巨大な火の玉――メガフレイムを顕現させた。
「……ま、まさか、水に土に木に火だと!?」
「さて、俺の心の属性はいったいどれなんだろうな?」
まるで挑発するかのようにそう口にしながら、オールブラックをヴィンスへと向けた。
「水属性が心の属性なんだろう? 相性でいえばそっちの方が有利なんだから、守ってみせろ」
「や、やってやる! 貴様なんぞに、負けてたまるか!」
膨大な魔力を感じ取ったアルだったが、その表情はとても残念そうにヴィンスを見つめている。
これだけの魔力があれば楽しい戦いができただろう、そんなもったいない感情を込めた溜息の後──二度目の魔力暴発が起きたのだ。
「……はは……そ、そんな……」
「冷静さを欠いた時点で、先輩の負けは確定していたんですよ。どうです、ここで降参するなら痛い目に遭わなくて済みますが?」
最後の忠告を口にしたアルを睨みつけながら、ヴィンスは今度こそメガフレイムを打ち消すためにヘビーフォールを発動させた。
今度は問題なく水の塊が顕現したのだが、最初に見せたヘビーフォールよりもさらに小さくなっており魔力の限界を迎えたのだと物語っている。
「……残念です、先輩」
「黙れ! こんなところで負けられない、俺様は負けられないんだよおおおおっ!」
放たれたヘビーフォールが真っすぐにメガフレイムへと迫るが――触れる前に水が沸騰して一瞬で蒸発してしまった。
「……嘘……嘘だ」
「それではさようなら、先輩」
「待て! こ、ここここ、降──」
ヴィンスの叫び声を遮るようにしてメガフレイムが放たれて爆発する。
しかし、致命傷となり得る威力を持っていたメガフレイムはヴィンスに痛みを与えただけですぐに自動治癒が発動された。
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