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魔法競技会

パーティ部門・二日目③

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 ラグナリオン魔法学園の試合は二回戦もあっという間に終わってしまった。
 時間にすると一回戦よりも掛かっていたが、それでも五分以内で勝利を決めてしまったのだ。

「今回も前衛の三人だけが大活躍だったな」
「相手が弱すぎるのよねー」

 ラーミアがやや溜息交じりで呟いている。

「ユージュラッド魔法学園で手の内を見せていないのって……私くらいかしら?」
「フレイア先輩は魔法弾幕を打ち落とすくらいでしか魔法を使っていませんからね」
「あれ? そういえば、フレイア先輩はここでも魔法装具を使っていませんね?」

 フレイアの魔法装具は細かな魔力操作が難しいとガルボから聞いていたアルだが、魔法競技会であれば使用しても問題ないと考えていた。
 一学園の魔道場よりも設備が整っている王都の会場だ。実際にリリーナが破壊した舞台も数十分で修復されていたのだ。

「それもそうなんだけどねー……相手だけじゃなくて、味方にも被害が出そうで心配なのよ」
「そ、そんなに威力が高いのですか?」
「えぇ。だからスタンピード騒動の時しか使っていなかったのよ」
「そうなると、フレイア先輩の魔法装具は最終兵器として取っておいてもいいかもしれませんね」
「え? 使う予定があるのかしら?」

 フレイアが驚いたかのように呟いた。

「予定というか、可能性の話です。相手もどんどんと強くなっていますし、相手だって舞台の障害物を破壊するくらいの魔法を放っているんです。こっちだってそれくらいの事をしても問題にはならないでしょう」
「それはそうだけど……」
「何、大丈夫ですよ。余波がこちらに来たとしても、防御魔法だって使える事ですし。それに、僕たちは余波くらいで倒れませんよ?」

 その言葉を受けて、フレイア以外の全員が大きく頷いた。

「私なら全部避けてあげる」
「僕は逃げる、かな~」
「土魔法でリリーナちゃんの事も守ってあげるね!」
「ありがとうございます、ラーミア先輩。でも、私も精一杯頑張ります!」
「と言うわけです。なので、俺たちの事は気にせずに、危なくなったら魔法装具を使ってください」
「……はぁ。分かったわ。みんな、ありがとね」

 フレイアの覚悟も決まり、アルたちは満足気に宿屋へ戻ったのだった。

 ※※※※

 宿屋ではアミルダとペリナが勝利を祝ってくれた。
 簡単なものだったが、勝利を重ねる事でこのような祝いをしてくれるのであれば何度でも勝利をしたいと思えてしまう。
 それだけ二人の喜びようが激しかったのだ。

「次は三回戦よ! このまま優勝までまっしぐらだわ!」
「優勝したら私のお給料に上乗せをお願いしますね、先輩!」
「任せなさい! そして、存分に飲んでやるんだからね!」
「私も飲みますよ!」
「結局、こうなるのか」

 その後の二人の様子を見ると、先ほどまでの感情を前言撤回したくなるアルだった。

「先生たちは浮かれ過ぎじゃないですか?」
「そうですよー。まだ二回戦を突破しただけなんですよ?」
「僕もそう思うな~」

 先輩である三人が教師の対応を買って出てくれている間に、アルたち一年次の三人はお腹いっぱいに料理を食べて明日に備えていた。

「なあ、そろそろ俺も動いていいか?」
「ダメよ」
「そうです、ダメです」
「いや、相当暇なんだが?」

 一回戦も最後方で見ているだけだったアルとしては、そろそろ体を動かしたくなる頃合いだった。

「絶対にダメよ」
「そうです、絶対にダメです」
「なんで頑なにダメなんだ?」
「アルが動いたら」
「試合がすぐに終わっちゃうからですよ!」
「……はい? いや、試合が終わるなら問題なくないか?」

 勝利が大前提なのだから、それはそれで問題はないと思うアルなのだが、二人は口をそろえてこう言った。

「アルは規格外なんだから、普通の私たちを気遣ってほしい」
「魔法競技会は、私たちにとってとても為になる場所なんですよ!」
「……俺は?」
「個人部門で十分に戦ったじゃない」
「それに、決勝戦ではシン様という相手がいるじゃないですか」
「…………待て待て、勝ち上がれば準決勝でヴォックスと当たるんだが?」

 まるで決勝戦まで温存するかのような言い回しに焦ったアルだったが、そこは二人も考えてくれていた。

「ヴォックスには何もさせずに勝ってちょうだい」
「残りを私たちが相手します! それで、もし危なくなったら助けてくださいね?」
「……二人とも、もの凄い無茶を言っている自覚、あるか?」

 アルの質問に答える事無く、二人は顔を見合わせて笑い合うだけだった。

「……はぁ。まずは明日の三回戦だけどなぁ」

 だが、そこでも戦わせてはくれないんだろうと半ば諦めているアルなのだった。
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