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魔法競技会

パーティ部門・四日目②

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 舞台に上がりゼリンドル魔法学園の面々と顔を合わせたアルだったが、リーダーの男子学生から放たれた言葉に誰もが唖然とする。

「アル・ノワール! 私はゼリンドル魔法学園のリーダーであるゴッシュ・ブルフォン! そなたに一騎打ちを申し出る!」
「「「「「「……はい?」」」」」」
「「「「「……え?」」」」」

 アルたちだけではなく、ゼリンドル魔法学園のメンバーからも疑問の声が漏れた。

「……お前、何を言っているんだ?」
「申し出た通りだ! 私はアル・ノワールに一騎打ちを申し出ている!」
「……これがどの部門か、理解して言っているのか?」
「どの部門だと? ……パーティ部門だな」
「そうだ、パーティ部門だ」
「……だからどうしたのだ?」
「「「「「「……はい?」」」」」」

 再びの疑問の声はアルたちから。ゼリンドル魔法学園のメンバーは声すら出ていない。

「……はぁ」
「貴様! 溜息とはどういうことであるか!」
「そりゃそうだろう。これはパーティ部門であって、個人部門じゃない。わざわざ一騎打ちをする意味がないだろう」
「むっ! そうかもしれないが、我らが勝つにはそれしか方法がないのである!」
「お前は素直か! 戦う前から勝てないとか、普通は言わないだろう!」
「何を言うか! ユージュラッド魔法学園の実力を見て、簡単に勝てるなどと言えるはずがないだろう! 我らを甘く見るでない!」

 褒められているはずだが、憤っているゴッシュを見てしまうと呆れてものが言えなくなる。

「……な、なあ、リーダー? 普通に試合をして、一騎打ちに持ち込めばいいんじゃないか?」
「それができないから提案しているのだろうが! お前はバカなのか!」
「「「「「バカはお前だ!」」」」」
「んなあっ! お、お前たち、それでも仲間か!」
「「「「「それはこっちのセリフだよ!!」」」」」
「……あ、あの~? そろそろ試合を始めてもいいかな?」

 しびれを切らした審判はゴッシュに声を掛けたのだが、ゴッシュ以外の全員が何度も頷いたことでホッと胸を撫で下ろす。

「お、お前たち! 待て、話はまだ終わってないぞ! おい、勝手に配置につくな!」

 一人だけ文句を言っているゴッシュを無視して、審判は右手を上げた。

「パーティ部門、準決勝――開始!」
「ちょっと待てええええええええぇぇぇぇっ!?」

 必死に抗議するゴッシュを無視して魔法が舞台上を飛び交っていく。
 ゴッシュ以外の五人は自らが放てる最大火力の魔法を解き放ち、それに対してアル以外の五人が迎え撃つ。
 シエラとジャミールも迎撃に参加しているのは、それだけ強力な魔法が放たれているという事だ。

「こいつら、さっきのは演技だったのかしらね!」
「ちょっと、ちょっとちょっと! これはヤバくないかしら!?」
「すみません、シエラ様、ジャミール様!」

 フレイア、ラーミア、リリーナが順に口を開く。

「隙を見て、ゴッシュを仕留めるわ」
「了解だ。それなら、シエラちゃんは行っていいよ」
「……いいの?」

 ジャミールから許可が出た事に驚いたシエラだが、三人からも特に反対意見は出てこない。

「控え室であれだけの啖呵を切ったんだから、活躍してもらわないと困るからね~」
「やってやりなさいよ!」
「こっちは任せてちょうだい!」
「頑張ってください、シエラ様!」
「……ありがとう。行ってくるわ」

 お礼を口にしたシエラは置き土産のようにライトブレイドを無数に放ちその場を離れる。
 だが、先ほどまで一人でもたもたしていたゴッシュも頭を切り替えており、すでに臨戦態勢を整えていた。

「むむっ! アル・ノワールではないではないか!」
「悪かったわね。でも、あなたは私が倒すわ」
「むむむっ! 舐められたものである! これでもゼリンドル魔法学園のリーダーを務めている魔法師だぞ! 一メンバーにやられるほど弱くはないわ!」
「……一、メンバーねぇ?」

 拳を打ち鳴らし咆えているゴッシュに対して、シエラは無表情で殺気を放つ。
 しかし、ゴッシュはシエラの殺気を軽く受け止めると、獰猛な笑みを浮かべた。

「がははっ! よい殺気なのである!」
「……あなた、意外とやるわね?」
「当然なのである! 私を普通の魔法師だと思うなよ! 接近戦ができる魔法師は――お主らだけではないのだよ!」

 そう口にしたゴッシュの肉体には土の鎧が纏わりつく。
 それはラーミアが使ったアースアーマーなのだが、魔法の練度は圧倒的にゴッシュの方が高かった。

「いざ、参る!」
「叩き切ってあげるわ!」

 高火力の魔法がぶつかり合う中、舞台上ではシエラとゴッシュの戦いが始まった。
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