337 / 361
魔法競技会
辺境の地からの精鋭たち
しおりを挟む
本来であれば勝利を真っ先に報告しなければならなかった面々を見て、アルは不思議とホッとしていた。
「父上! 母上! それにキリアン兄上たちも!」
「殿下に呼ばれていたのだから仕方ないが、その後はこちらに寄るべきじゃないか?」
「すみません、父上」
「……冗談だ。優勝おめでとう、アル」
「……ありがとうございます」
小さく微笑んだレオンを見て、アルは素直にお礼を口にした。
「本当におめでとう、アル! あなたは私の誇りだわ!」
「ありがとうございます、母上。でも、それは違いますよ。あなたも、ですよね?」
「僕たちは誇りじゃないんですか、母上?」
「俺はともかく、キリアン兄上は誇りだろう」
「あら! あらあら! そうね、キリアンもガルボも、アンナもブリジットも私の誇りよ!」
拗ねるでなく冗談で片付けてくれたキリアンとガルボを見て、ラミアンは嬉しそうに微笑み二人を抱きしめた。
「それで、キリアン兄上。ついていこうかって、兄上たちがですか?」
「うん。命の危険があるからはっきり言うけど、ガルボは違うよ」
「だな。俺には荷が重すぎる」
「あら! 珍しく素直なのね、ガルボ」
「フレイアはうるさいんだよ!」
同じパーティであるフレイアがガルボを茶化すと、少し恥ずかしそうにそう口にした。
「あはは。そうなると、父上も?」
「いいや、私は残る。ついていきたいところだが、ここでも貴族のしがらみがあるからな」
「あー……辺境の貴族がでしゃばるなって事ですか?」
「ふん。王都の危機に何を言っているのかと思うが、そういう貴族はどこにでもいるからな」
「そうなると、俺がでしゃばるのもマズいのでは?」
三男とはいえ辺境貴族の子息である。レオンが叩かれる要因になるのではと心配になったが、そこは大丈夫なのだとか。
「アルの場合は冒険者として受けるんだろう? ならば問題はない」
「それじゃあキリアン兄上は?」
「キリアンは王都で第一魔法師隊に所属しているからな。優秀な冒険者に同行して魔獣退治に行くのも仕事の内だ」
なるほどと思いながらも、そうなるともう一つの疑問が浮かんできた。
「……ヴォレスト先生は、絶対に同行できなくないですか?」
「だろうな。アミルダ、諦めろ」
「あなたはそれでいいの、レオン! 大人が王都にこもって、子供に討伐を任せるだなんて!」
怒鳴るアミルダだったが、レオンはふっと笑い口を開いた。
「一人の親としては悔しい想いもある。だが、親離れをしたのだと考えれば耐えられる」
「耐えるって、単なるやせ我慢じゃないのよ!」
「実力に伴わなければ止める。だが、アルには十分な実力があるからな。そして、それを王族が認めたのだから信じるのも親の務めだろう」
レオンがそこまで口にすると、アミルダは黙ってしまう。十分な実力があると言われてしまえば、その事実を目の当たりにしている彼女としては何も言えなくなってしまったのだ。
「確かに実力はあるだろうけど……でも、それでも……」
「フェルモニア討伐の時にアルを頼ったのはどこの誰だったかな?」
「うぐっ!? それは、その……」
「私も大人の都合で力を使わせている事に負い目を感じないわけではないが、力を持つ者には相応の責任と覚悟が必要となってくる。アルの場合は、それが早かっただけの話だよ」
「……ぅ、うん」
いつもは強気なアミルダが大人しく頷いてしまった。
そして、アルはレオンの言葉をしっかりと胸に刻み込み、軽い気持ちで討伐に向かおうとした自分を律していた。
「……申し訳ありませんでした、父上」
「気を引き締める事ができたか?」
「はい。ありがとうございます」
「それでは父上。僕はアルと一緒に冒険者ギルドへ向かいます。ジャミール君とシエラ君はどうするのかな?」
「「行きます!」」
「おぉいっ! どうして私はダメで二人は良いのだ!」
「「冒険者になるから」」
「まだ冒険者ではないでしょうが!」
「「ここで登録する」」
「……こ、こらああああぁぁっ!」
アミルダの絶叫が響き渡るが、そのままレオンに首根っこを掴まれて引きずられていく。
ジャミールとシエラはアルとキリアンに続いて冒険者ギルドへ歩き出した。
「父上! 母上! それにキリアン兄上たちも!」
「殿下に呼ばれていたのだから仕方ないが、その後はこちらに寄るべきじゃないか?」
「すみません、父上」
「……冗談だ。優勝おめでとう、アル」
「……ありがとうございます」
小さく微笑んだレオンを見て、アルは素直にお礼を口にした。
「本当におめでとう、アル! あなたは私の誇りだわ!」
「ありがとうございます、母上。でも、それは違いますよ。あなたも、ですよね?」
「僕たちは誇りじゃないんですか、母上?」
「俺はともかく、キリアン兄上は誇りだろう」
「あら! あらあら! そうね、キリアンもガルボも、アンナもブリジットも私の誇りよ!」
拗ねるでなく冗談で片付けてくれたキリアンとガルボを見て、ラミアンは嬉しそうに微笑み二人を抱きしめた。
「それで、キリアン兄上。ついていこうかって、兄上たちがですか?」
「うん。命の危険があるからはっきり言うけど、ガルボは違うよ」
「だな。俺には荷が重すぎる」
「あら! 珍しく素直なのね、ガルボ」
「フレイアはうるさいんだよ!」
同じパーティであるフレイアがガルボを茶化すと、少し恥ずかしそうにそう口にした。
「あはは。そうなると、父上も?」
「いいや、私は残る。ついていきたいところだが、ここでも貴族のしがらみがあるからな」
「あー……辺境の貴族がでしゃばるなって事ですか?」
「ふん。王都の危機に何を言っているのかと思うが、そういう貴族はどこにでもいるからな」
「そうなると、俺がでしゃばるのもマズいのでは?」
三男とはいえ辺境貴族の子息である。レオンが叩かれる要因になるのではと心配になったが、そこは大丈夫なのだとか。
「アルの場合は冒険者として受けるんだろう? ならば問題はない」
「それじゃあキリアン兄上は?」
「キリアンは王都で第一魔法師隊に所属しているからな。優秀な冒険者に同行して魔獣退治に行くのも仕事の内だ」
なるほどと思いながらも、そうなるともう一つの疑問が浮かんできた。
「……ヴォレスト先生は、絶対に同行できなくないですか?」
「だろうな。アミルダ、諦めろ」
「あなたはそれでいいの、レオン! 大人が王都にこもって、子供に討伐を任せるだなんて!」
怒鳴るアミルダだったが、レオンはふっと笑い口を開いた。
「一人の親としては悔しい想いもある。だが、親離れをしたのだと考えれば耐えられる」
「耐えるって、単なるやせ我慢じゃないのよ!」
「実力に伴わなければ止める。だが、アルには十分な実力があるからな。そして、それを王族が認めたのだから信じるのも親の務めだろう」
レオンがそこまで口にすると、アミルダは黙ってしまう。十分な実力があると言われてしまえば、その事実を目の当たりにしている彼女としては何も言えなくなってしまったのだ。
「確かに実力はあるだろうけど……でも、それでも……」
「フェルモニア討伐の時にアルを頼ったのはどこの誰だったかな?」
「うぐっ!? それは、その……」
「私も大人の都合で力を使わせている事に負い目を感じないわけではないが、力を持つ者には相応の責任と覚悟が必要となってくる。アルの場合は、それが早かっただけの話だよ」
「……ぅ、うん」
いつもは強気なアミルダが大人しく頷いてしまった。
そして、アルはレオンの言葉をしっかりと胸に刻み込み、軽い気持ちで討伐に向かおうとした自分を律していた。
「……申し訳ありませんでした、父上」
「気を引き締める事ができたか?」
「はい。ありがとうございます」
「それでは父上。僕はアルと一緒に冒険者ギルドへ向かいます。ジャミール君とシエラ君はどうするのかな?」
「「行きます!」」
「おぉいっ! どうして私はダメで二人は良いのだ!」
「「冒険者になるから」」
「まだ冒険者ではないでしょうが!」
「「ここで登録する」」
「……こ、こらああああぁぁっ!」
アミルダの絶叫が響き渡るが、そのままレオンに首根っこを掴まれて引きずられていく。
ジャミールとシエラはアルとキリアンに続いて冒険者ギルドへ歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。
八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。
彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。
しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。
――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。
その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる