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第二章:集落誕生?

再びボートピアズへ

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 シェリカさんの話をしてから三日後、俺とルリエはボートピアズへ向かうことになった。
 シェリカさんへ移住の話を持ち掛けるのはもちろんだが、前回向かった時に仕入れることのできなかった野菜などを探す目的もある。
 しかし、それにはお金が必要になるのだが、お金が足りないわけでもない。
 俺の空間庫には、賢者が魔人化した時に討伐した魔獣の群れが眠っている。
 それらを冒険者ギルドに提出すれば、それなりのお金になるだろう。

「あっ! でも、魔人を提出するのは止めておこうね」
「どうしてだ? 相当なお金になると思うんだが?」

 魔獣を超えた存在である魔人の素材だ。
 以前は素材屋のシルクさんのところでいくつかの素材を売ったが、それだけでも5000デリの稼ぎになった。
 そこに討伐報酬まで付けばと考えたのだが。

「魔人を討伐できる人族は少ない。冒険者ギルドでそんな噂が広まれば、即座に王城へ報告がいくことになる」
「あー、それは面倒だな。俺のスローライフが危うくなるし」
「……えっと、そこ?」
「えっ? そこ意外に何かあるのか?」

 何故かルリエに溜息を付かれてしまった。

「それじゃあ、魔人の素材はシルクさんのところに持っていくしかないか」
「えっ? シルクのことも知ってるの?」
「知ってるっていうか、素材屋だからな。っていうか、今の言い方だとシルクさんもルリエの……じゃなくて、ヴィリエルの正体を知っている一人なのか?」

 ルリエは元勇者を殺した犯人として追われている。
 そのせいもあり、都市の中ではヴィリエルという一冒険者として活動しているのだ。
 とはいえ、俺も昔の俺を知っている者に会いたくないから偽装スキルで見た目すらも変え、スレイと名乗っているのだけど。

「そうよ。シルクさんもNに対して偏見を持たない人だからね。素材屋として、Nが持ち込んだ素材も適正価格で買い取る人よ?」
「そうか……なら、せっかくだしシルクさんにも移住を持ちかけてみるか」
「えっ! ……あんた、また突拍子もないことを」

 ヴィリエルはそう言うが、シルクさんが移住してくれれば素材屋としては働けなくなるかもしれないが、鍛冶師としては存分に働いてもらえる。
 ならば鍛冶師を呼べばいいと思われるかもしれないが、Nに偏見を持たない人族の方が珍しいのだから、鍛冶師を見つけるのも大変なのだ。

「ヴィリエルが信頼している相手なら、ブレイレッジのことを口にしても問題はないだろう」
「……シルクさんなら私も大賛成だけどね。でも、ボートピアズにいるNが、シルクさんがいなくなると生きていくうえで大変になっちゃうんだよなぁ」

 うーん、それを言われると困ってしまう。
 確かに、適正価格でNの持ち込み素材を買取ってくれる者がいなくなると大変になるだろう。
 ここで俺がそのNも移住させればいいと思ってしまうのは、自分で自分のスローライフを遠ざけてしまう結果になってしまう。

「……」
「……どうしてヴィリエルは、ニヤニヤしているんだ?」
「いーえー? ただ、なんとなーく、スレイが考えていたことが分かったからさー?」
「はいはい。まあ、俺がどうするかは、シルクさんと話し合ってから考えるよ」

 ここで俺があーだこーだ考えたところで、実際に見たり聞いたりしなければ答えを出すことはできない。
 それに、実際に移住するかを決めるのはシルクさんはそのNの人たちなのだから。

「まあ、そこは置いておくとしてだ!」
「ん? どうしたんだ、スレイ?」
「どうして……どうして――ツヴァイルは俺と一緒に来てくれないんだよ!」

 ツヴァイルは俺の獣魔のはずだ! きちんと獣魔契約もしているのだ!
 それなのに……それなのに、今回はリリルとブレイレッジに残ると言ってきたのだ!

「まあ、ツヴァイルは子供たちからも人気だからな。それに、貴重な戦力でもあるわけだし、私とスレイが抜けるのであれば、リリルと一緒にツヴァイルが残るのも必然だろう」
「そうだけどさあっ! 全く迷うことなく残ることを決めたんだよ! 酷くないかなあ!」
「……そうか? 普段から、ツヴァイルは私やリリルさんにも懐いているぞ?」
「ぐぬっ!?」

 それに関しては、ぐうの音も出ないくらいに実感しているよ。
 だって、ツヴァイルが俺よりも二人を優先しているのが目に見えて分かるからな!

「……も、もう行くか!」
「おいおい、リリルたちを待たなくていいのか?」
「……もう来ているよ」
「いってらっしゃーい! スウェイーン! ルリエさーん!」
「ガウガウーン!」

 俺が言うが早いか、リリルとツヴァイルが走ってブレイレッジの入口にやって来た。

「絶対に、移住を成功させてくださいね!」
「ガウガウ!」
「それは相手次第だから何とも言えないな」
「まあ、説得はしてみるよ、リリルさん」

 二人に見送られながら、俺とヴィリエルはボートピアズへと向かった。
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