職業賢者、魔法はまだない ~サバイバルから始まる異世界生活~

渡琉兎

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第1章:異世界転生

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 ──ピチョ、ピチョ。

「……ぅぅん、なんだ?」

 ──ザアアアアッ!

「どわああああっ! な、なんだよこの豪雨は!」

 この世界でもゲリラ豪雨ってあるんだな!
 ヤバい、今まで雨が降ってこなかったこともあり対策を何もしてないぞ!
 とりあえずテーブルの下に隠れて雨をしのごうとしたのだが……ダメだ、足元がぐっちゃぐちゃだよ!

「くそっ、どうする、どうする……あー、もうダメだこりゃ。濡れてもいいから雨宿りできるところを探すか」

 なんだか、転生した時と同じ感じになっちまったなぁ。
 俺はテーブルの下から出て雨に打たれながら近場で大きな葉っぱを茂らせている木を探す。

「……あれが傘代わりにならないかな」

 まさに異世界、もしくは熱帯雨林には茂っているのだろうか。
 分からないけど、人を一人隠すことができるくらいに大きな葉っぱを茂らせている木を発見した。
 湖を挟んで野営をしていた場所から真逆の森の中だったこともあり、周囲をちゃんと見ておくことも必要だと身をもって知ることができたよ。

「おぉ、これなら濡れないな! ……もうびしょ濡れだけど」

 いくつか目ぼしい葉っぱを確保した俺は野営地に戻り、これもびしょ濡れのイスに腰掛けてこれからどうしようかを考える。

「この雨の中を岩場に向かうのはどうなんだろうなぁ。さすがに危険だよなぁ」

 危険な動物や魔族が現れるかもしれない中、足元を取られる状況で未知の森に足を踏み入れるのは危険過ぎる。
 それにアースレイロッグも雨に流されているかもしれないので、それなら今日は残っているアースレイロッグを加工する時間にしてもいいかもな。
 ……安全第一なのである。

「とは言っても、何を作ろうかなぁ」

 串焼きでも十分に美味しい食事にありつけているのだが、やっぱり料理スキルを習得した身としてはさらに上の食事を口にしたいと思うのだよ。
 そうなるとフライパンとか鍋だろうか……鍋にしよう。

「……温かいスープが、飲みたい」

 雨に打たれたからっていう理由もあるけど、先を見ればスープを飲めるのと飲めないのとでは大きくモチベーションが変わってくるのだ。

「っと、その前に雨をしのげるようにパラソルみたいなものを作るか」

 とは言っても完全に簡易的なものである。
 長い木の棒を削り出してイスの後ろに突き刺す。
 そして確保していた大きな葉っぱを隙間ができないように縫い付けていく。
 葉っぱには厚みがあるので縫い付けても破れたりすることなく、雨に負けて折れることもない。
 大きくなった葉っぱの傘を木の棒に取り付けて、簡易的なパラソルの完成である。

「……うん、問題なさそうだな」

 雨が漏れて滴ることもないし、しっかりと縫えているみたいだ。
 まさか、こんなところに裁縫スキルが役立つとは思ってもいなかったが、これで集中して鍋を作ることができる。

 まずはアースレイロッグをテーブルに置いて両手で成形していく。
 水を入れる器の部分はなるべく薄く、そして深めに作る。
 こうすることで大量の水を早く沸騰させることができるはずだ。

 次に取っ手の部分だが、ここは少しだけ考えてしまう。
 アースレイロッグ一続きでそのまま取っ手まで作ってしまうと、鍋が熱せられることで取っ手まで熱くなるのではないかと考えたのだ。

「取っ手には木材を使うか? でも、その木材が燃えちゃう可能性もあるよなぁ」

 うーん、と唸りながらアースレイロッグを見ていると、突然鑑定スキルが発動して使い道にこんな一文が追加された。

『耐熱効果あり。太さを変えることで、熱伝導率を低減することが可能』

 ……うん、鑑定スキル様、ありがとうございます。
 鑑定スキルって、習得できるスキルポイントがもっと高くてもよかったんじゃないかと思ってしまうくらいに万能なんだけど。

「と、とりあえず、取っ手を太くしたら鍋として問題なく使えるってことが分かったからいいか」

 頭を掻きながらそう呟いた俺は、鍋作りの作業を再開させる。
 とは言っても、取っ手の部分を伸ばして作るだけなので簡単に作業を終えてしまった。
 これで温かいスープが作れる、そして飲めるんだ!

「くーっ、さらに食事が充実するぞ!」

 鍋が一つ完成しただけで、頭の中には様々な料理のレパートリーが浮かび上がってくる。
 特に気になったのは動物の骨から出汁を取って作る黄金スープ! ここに肉団子や食べられる野草を入れれば味の変化も期待できるし、食事がさらに楽しみになってしまう。

「……ただ、時間が余っちゃったなぁ」

 持ってきたアースレイロッグは鍋で全て使い切ってしまった。
 木材加工スキルで作りたいものも今のところは思い浮かばない。
 ということで、もう一度スキルを見直そうと思いスキル欄を開いたのだが──

「あれ? なんだこれ?」

 スキル欄には、昨日までは見たことのない名前が載っていたのだ。
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