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2023年度
依頼恋愛小説
しおりを挟む🎵キーンコーンカーンコーン🎵
終礼のチャイムが鳴った。
「それではチャイムが鳴ったので帰ってもいいですよ」
先生のその一声を待っていたとばかりに生徒が席を立つ。
ある人は直帰し、ある人は部活に行き、ある人はお喋りを始める。
私の前にはある男子生徒がいた。
「ココア、今日空いてるか」
「うん! どこに行くの?」
「お前ん家」
「……えぇ!?」
「そういえばココアの両親に挨拶してねぇし」
「いやいや大丈夫でしょ………」
実は両親に会わせろとせっつかれているのだけれど、言わなければ分からない。
恥ずかしいし、想像しただけで顔が真っ赤になってしまいそう。
「じゃあ行くぞ。案内しろよ?」
「あぁもう、分かったよ!」
ということで、ビターチョコくんを家に招くことに決まった。
「ここがココアん家か」
「特筆する必要もない平凡な普通の家なんだけど………」
「いいや、お前がちっさい頃から住んでる家だ。俺にとっては特別だ」
ぼわっとゆであがる。
「………ッ」
「ははっ。じゃあ入ろうか。鍵を開けてくれ」
ビターチョコくんの言葉に従い家を案内する。
「ソファーに座ってて。ジュースと紅茶とコーヒー、どれがいい?」
「アイスコーヒー、牛乳入りで頼む」
「りょーかい!」
ビターチョコくんは苦いものに耐性があるみたいで、よく紅茶やコーヒーを飲んでいる。
私は辛いものも苦いものも苦手だからいつもすごいなあと感心している。
自分の分のココアもカップに注ぐと彼にコーヒーを渡す。
「どうぞ」
「サンキュ。……で、この失礼な猫はなんだ」
ビターチョコくんの足元を見ると、私の飼い猫がシャーと牙を剥いていた。
警戒してくれるのが可愛くて、同時に面白くて、ふふっと笑いながら彼に紹介する。
「コアだよ」
コアに近寄って宥めるとクーンと鳴いて気持ちよさそうに身をよじる。
懐いてくるのもまた可愛い。
反応がなくて訝しむと、彼は顰めっ面で不機嫌そうだった。
「ど、どうしたの? もしかして私何か変なことを!」
「違う、違う。ココアはいつも悪い方向に話を持っていこうとする。
……こいつ、主人の彼氏に向かって失礼じゃないか」
“彼氏”というワードに条件反射で赤くなった私だけど、すぐにそんな場合ではないと打ち消す。
コアが失礼なことしたっけ?
「分からないのか? それとも俺に言わせたいのか?」
「ううん、本当に分かんないんだけど……」
「鈍感天然もここまで来ると天を仰ぎたくなる」
「ふえ!? やっぱり私変なことを!」
「だから違うつってんだろ。話を聞け」
「はい……」
釈然としないまま彼の言葉を待つ。
俺には似合わないんだが、などと言い訳をしながら赤みが差した顔を背けてぼそっと告げた。
「……彼氏を外野にして1匹で主人を独占するのは如何なものか」
噛み砕いて理解した私は真っ先にこう思った。
「可愛い……!」
だって、クールなビターチョコくんが猫に嫉妬したってことだよね? だよね?
「おい、誰が可愛いって?」
本音が漏れていたみたいだ。
「私はカッコいいビターチョコくんも好きだけど、こういうギャップのあるところも好きだよ」
「ぐっ……!」
何かが衝撃を与えたらしく、彼から普段聞けるはずもない音が漏れる。
「だ、大丈夫!?」
「……可愛いけど何とかならないか、俺の理性の殺人鬼よ………」
小声で何か言った気がしたけど、まあいっか。
「お仕置きだ。喜べ」
「何のお仕置き……いたた!」
復活直後、ビターチョコくんが私のほっぺをぐにっとつねる。
待ってよ、痛い痛い!
やっぱり悪いことしたんじゃ……。
涙目で睨んでも彼は笑い流した。
「うぅ……理不尽……」
「何言ってんだ。自業自得だろ」
「?」
「いいさ、別に分からなくても」
そう言うなら私は構わないけど。
ピンポーン
え、もしかして帰ってきた!?
「……バタバタただいま~」
「お、おかえり~」
お母さんの前に立ってこれ以上リビングに近づけないように通せんぼする。
慌てていたのでうわずっていたけれど許してほしい。
「どうしたの?」
「は、早く手を洗ってよ!」
「まあいいけど……」
お母さんを洗面所に押し込んだ私は手早くビターチョコくんに説明する。
「えっとね、お母さんが帰ってきちゃった。
だからちょっと……申し訳ないんだけど……帰ってほしいんだけど………」
「何故だ? 挨拶するべきだろ」
「いや、うん、そうなんだけど。また改めての機会でいいじゃない?」
「いまじゃダメな理由でもあるのか」
心の準備ができていないから、と正直に伝えたら、彼は面白がるだろう。
何か代替案を考えようとしても咄嗟には思いつかない。
「ないんだな?」
洗面所を出たお母さんがリビングに入ってしまった。
「……どなた?」
ビターチョコくんがお母さんに会釈してこう告げた。
「お邪魔しています。ビターチョコといいます」
「ちょっと!」
咎めても、彼はニヤ~と笑みを浮かべるだけ。
かっこいいけれど、いますると怖い感情が勝ってしまう。
「いつもお世話になっています」
「まあ、こちらこそ娘が世話になっているわ。ビターチョコくんは娘の友達かしら?」
「待ってよ!こっちを無視して酷いよ!」
このままスルーしたら彼が彼氏だと暴露してしまう。
「俺はココアさんとお付き合いさせていただいています」
「そうだと思ったわ。ココアが必死に止めるんだもの」
怒りと恥ずかしさで真っ赤になっている私を外野にして、2人ははっはウフフと笑っている。
むむっと顰めてもどちらも気にしない。
「もうもう!」
「どうした」
「“どうした?”じゃないよ!」
「すまなかった、からかいすぎた。許してくれ」
「ん~!」
イケメンに謝らせるって心労がすごい。
すごく申し訳なくなってくる。
でも、すぐ許すわけにもいかなくて踏ん張っていた。
「ビターチョコくん、きっともうココアは許したわ」
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それはぼかすべきだと思う。
「そうなんですか?」
「何年この子の母親をやっていると思っているの?」
「ですよね、ありがとうございます」
それからも2人は喋ってとても仲良くなった。
彼氏と自分の両親が仲良くなるのはいいことだけれど、何故か無条件に喜べなかった。
その理由を思い知ったのはその週の土日、お母さんに「ビターチョコくん、1時間後に来るらしいわ」と言われたときだった。
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