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第三章

蛇ではない!

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 60階のボスは竜だった。
 以上!


 と、簡単には言えるレベルのボスでは無かった。
 なにが、『海蛇を大きくしたモンスター』だよ。どう見たって竜だよ。

 ユキ曰く「ドラゴンとは羽を生やし火を吐くからドラゴンなんですよ。そんなこともまだわからないんですか?」
 との事だった。

 その認識絶対に間違ってるからな!

 確かに羽も生えてないし、火も吹かなかった。
 しかしだ。

 でっかい剣を両手で持ち、水を口から吐き出してたじゃん。

 あれを『海蛇を大きくしたモンスター』の一言で済ますのは絶対に間違ってる。

 ボス部屋は真ん中に大きな水溜まりがあり、水に入ると、水底から急上昇しながらトルネードアタックをしてくるし、陸にいれば、水の吐き出してきやがった。

 水中戦になれたとは言っても、あんなデカイやつを相手にしたこと無かったので、ボスが水面に顔を出すまで待ち、水のブレスをかわしながら攻撃する。

 格ゲーで言うところの【待ち】である。
 ゲーセンでやり続けると台バンされるやつね。

 そんな俺とはうってかわり、ユキは水中戦をメインで立ち回っていた。

 むしろ、ユキ一人で勝てるんじゃないかとも思えたほどだ。


 ボスを倒した後に、そんな話しをしたら怒られた。



「周り見えますか? 至るところにある骨は全て冒険者の骨です。水底にもかなりの数がありました。今までこんなに骨があったのを見たことがありすか?」




 そう言われれば、50階層に来てからやたら骨を見る。

 死んで間もない冒険者を見つけた場合は、余裕があるならギルドへ持ち帰る。最低でも報告する。
 っていうのが、マナーだそうだ。

 暫く経ってしまい、腐食した死体やモンスターに食べられて骨になったものは、感染症の可能背もあるため触れないようにするらしい。



 つまり、ここの階層は、なかなか冒険者が来ないし、来ても死ぬ確率が高いと言うことらしい。

 そう言われれば、非常に残念なことに水着の冒険者を一度も見ていない。

 まぁユキが田舎育ちで助かったと言うことだ。

 子供の頃は半魚人と言われた過去もあるらしいが、それはまた別の話しだ。

 飲めもしないのに酒を飲んだときに喋りやがったから、54階に着いたときに、「今日も頼みますよ。半魚人さん!」っと、敬意を持って言ってみた。

 顔を真っ赤にしながら、口笛を吹き誤魔化そうとしたのだろう。
 54階に着いて、一分で水辺に落っこちた。



 そんなこともありながら、10か月をかけて50階層は無事突破した。

 明日からはいよいよ60階層だ。

 あの三人の話しだとマイコがいなくなった階層だ。

 なにかあるとすれば、ここからかもしれない。

 予習は今からする!
 絶対にする。

 ユキが、絶対に見ておいた方が良いと言っていたからな。

 昼御飯を食べて、軽く一杯やってから行こう。

 明日の待ち合わせまでまだまだ時間はあるんだ。
 急がば回れと言うしな。
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