俺TUEEE出来るって常識だよね?

チガーイ

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第五章

最悪の状態で

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「ポーションはもうないのか!!」

 聞き覚えのある声。それも叫んでいる声が耳に届く!  声質には緊張感があり、その瞬間ユキに一瞬目線を送りダッシュで声の方へと走り出した。


 ――――状況を言えば最悪としか言えなかった。

 ギアさん達は広場にいて、前後を二体のデスソードバギルに挟まれている。さらに周りには六体のモンスター。

 前をギアさんが、後ろをタカさんが。そして、残りをアンザさんが魔法で牽制をしている。

 ギアさんは左腕を失っており、タカさんは右目負傷している。アンザさんも全身ボロボロだ。


 いったいこれだけのモンスター群を前にどうしたらいい?

 ⋯⋯んなことは、決まっている、助けるんだ!
 やるしかない!


「サンダー! サンダー! サンダー! サンダー! サンダーーーー!!!」

 夢中で魔法を連続で唱えながらバックからポーションを出し、「ポーションです」と言いながら三人に向かって投げる。

 サンダーの連続で怯んだモンスター群の隙に、こちらに気づいた三人は驚きの顔をしながらもポーションを受け取り、一気に全てを飲み干す。

「タカさんを援護します!  ギアさんを!」

 ユキはそう言うと、タカさんの前のデスソードバギルに突っ込んで行く。
 俺はギアさんの前のデスソードバギルに突っ込む。

「体制を立て直してください!」

「あ、あぁ」

 ギアさんに一言伝える。ギアさんは周りに声をかけ散らばっていた三人が体制を整える。

 動けるようになるまでコイツを一人で相手にしなければならない。流石に途中からだからある程度のダメージは受けているが、それでも強敵には変わらない。

「だりゃー!」

 いつも通りの戦闘ではこの状況は打破出来ない。時間をかければ更にモンスターが来る可能性だってある。今だけは、無茶でもなんでもいい!  一秒でも早く倒しきるんだ。


「悪い、待たせた」

 流石はAランク。立て直しが早い。でも―――

「こっちは大丈夫です!  ユキの方を。それと周りの雑魚をお願いします!」

 ある程度のダメージを受けても、俺なら自己回復出来る。でもユキは違うんだ。

 言葉にしなくても目線を交わすだけで、伝わったのか、ギアさんはユキの方へとダッシュする。


 俺が一体、ユキとギアさんで一体、タカさんとアンザさんで残りの六体。
 どこかが失敗すれば、全滅する可能性が一気に上がる。
 ならばここは絶対に失敗できない。


 ――――。

「ギャィオォォーー!」
 と、悲鳴をあげながら何とか一体のデスソードバギルを倒せた。

 はぁ⋯⋯はぁはぁ、息を整えながら久しぶりに死ぬ思いをしたなと感じる。

 向こうの方に目を向けると、雑魚は殲滅。残りのデスソードバギルは四人体制で戦っており、ほぼ決着が見えた。

 その場で座り込み、良かった。と思うと同時にこっちもフォローほしかったなと思った。
 まぁ、倒せたからいいんだけどね。


「助かった。改めて礼を言う」

 座り込んでる俺にギアさんが話しかけてきた。

「いえ、ってか。色々聞きたいんですけど、ここだとあれなんで一旦タワーから出て話しませんか?」

「⋯⋯。それなんだが、今の状況で81階まで行けると思うか?」

「ん?」

 あ、そうだった!  このタワーは、ボス部屋の次の階層の入り口にしか転送ポイントが無いんだった。

 81階にきてから、万が一と考えてどこからでも脱出できるスキルを手に入れていたから、すっかり忘れてた。


「⋯⋯えっと、タワーから脱出はしてしまってはいいんですかね?」

「ん?  あぁ、出来るならそうしてーよ。ポーションももう無いしな」

「わっかりました。エスケープ!」

 そう言うと、全員の体が一瞬にして、タワー入り口に転送された。

「えっ?  ん?  はぁ?」

「よし、皆さん宿屋に行きましょう!」

 混乱してるようだが、仕方ないことだ。さっさと休みたかったので、宿屋に向かい始める。

 後ろでは、「ビックリしますよね~」とユキが歩きながら説明してくれてるようだし、ユキに任せよう。

 ダンジョンやタワー系のRPGでは基本だけど、この世界では違うんだな。

 うんうん。俺もスゴくなったじゃないか!  

 と、考えながら歩いていたら、通行人に『ほら、ニヤニヤしてる冒険者ってあの人よ』と耳に入ってきた⋯⋯。

 人のイメージってなかなかとれねーな⋯⋯。
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