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七皿目 ストーキング・デート

31(sideリューオ)

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 裏口から飛び出してきたアゼルだが、お散歩形態だった彼がなぜこうなっているのか。

 それは、次の公演のトップを飾った後追いかけそびれたことに気がつき、焦りのあまり形態変化が中途半端に解けた状態になっていたのだ。

 そうとは知らず、巻き添えでストーキングされていたリューオ。

 奇跡かよ! と思わぬ助っ人に喜び、細かいことは気にせず巻き込むことにした。

 ズカズカと鬼気迫る勢いでこっちに向かって歩いてくるアゼルに、心の底から感謝する。
 現金な勇者である。

 そして魔力を抑えた妙ちきりん男と言えども、顔だけはすこぶるイイのが魔王。

 イケメンを見た少女は、きゃあ! と女の子らしい声を上げて大興奮だ。

「あっやだすごいかっこいい……! 顔が小さい! 手足が長い! 目つきがエロイ! 隣に立たせたくないのに立ってほしいタイプの美形!」
「オイやめとけや、コイツ中身地雷だぜ。変態で収集癖のスキル持ちで、独占欲と執着が異常な愛ヘビィ級チャンピオンだかンな」
「またまたイケメンがそんなわけないじゃないですか。って、ハッ!? オーガさんやっぱり私を!?」
「このバァァァァァァカッッ!!」

 しかし、それを善意で引き止めたリューオの言葉を前向きに捉えたことで、盛大なバカに塗り替えられる。

 せっかく人が善意で地雷、いや世界滅亡級爆弾だと教えてやったのに、どうしようもない女だ。

 魔族は寝取りオッケーの横恋慕上等な種族なので、彼女が特別どうしようもないわけでもない。

 だがリューオはここで、きっぱり縁を切らねばならなかった。

 誤解に誤解を重ねる展開を避けるためだ。

「このクソッ」
「ちょっと、」
「あ?」

 ところ変わって、シャルから目を離したリューオに一言文句をと思ったアゼル。

 だが突然、グイッとリューオに腕を引かれ、無理矢理引き寄せられた。

 意味がわからない。

 されるがままに肩に腕を回され、まるで仲が良いように体を密着させられる。

 意味がわからない。

 そしてスゥ、と深く息を吸い込んだリューオは、ギロンと素で睨みつけ、ガオウッ! と虎よろしく吠えた。

「いいかオイ? 俺は──男が大好きなガチホモなんだわ。だからテメェとは、天地がひっくり返っても付き合わねェッ! あきらめろッ!」
「「え?」」

 だから、意味がわからないと言うに。

 少女とアゼルのマヌケな声が、ぴったりと重なった。

 どうしようもないだろう理由を作ったリューオは、ドドンッ! と効果音でも背負いそうな様子でとんでもないことを言い切る。

 ちなみにリューオはバイであるので、本当のところは女性も守備範囲だ。
 むしろ女性好き寄りのバイだ。

 そして言葉を理解した少女が神妙な顔で頷いたことで、状況がわからないのはアゼルオンリーであった。

 魔界の最高権力者が型なしである。
 やはり勇者は唯一無二の魔王の天敵なのだろうか。



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