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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

34(sideクテシアス)

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「完成した魔法陣は発動させずに、俺を呼ぶこと。最後に一人ずつ試そうな」
「…………」

 そしてそんなアディせんせぇに、俺よりも熱心な視線を送っている生徒が一人。

 真っ黒なモサモサヘアーの瓶底眼鏡でやってきた体験学生──アゼル・ハウリング。

 現・魔王様の愛称と同じだが、別にその名前がいないわけでもないのでそれは大丈夫。

 問題は、コイツが謎めいたバカ強モンスターと言うことだ。

 気配と魔力が殆どないし、見た目もヒョロっこくて手なんて女みたいに白くて繊細。

 第一印象は無口で無愛想で、暗くて弱そう。

 悪乗りしたゴンザレスが挨拶代わりの攻撃魔法陣を向けた瞬間まで、その認識は満場一致だ。

 が。

 それをくらいかけたハウリングが、目にも止まらぬ速さでゴンザレスの背後を取り、巨体を天井に蹴り上げたことで、認識を改める羽目になった。

 速すぎて見えなかったぞコノヤロウ。
 見た目と中身が噛み合ってなさすぎるぜぇ。

 しかもその後なんかほのぼの~っと、アディせんせぇとイチャこいてやがるんだ。

 アディせんせぇは誰も贔屓しない朗らかティーチャーなのに、真顔ながらなんだか翼をワサワサさせて花を飛ばしていたと思う。

 んで、ハウリングが蹴り上げたものの骨折させなかったことを、ギリで加減したのが偉いと褒めていた。

 いやいや、普段なら骨折れてんのかよ。

 オーガの防御力知ってるか?
 人間が槍で突いたぐらいなら槍が折れる強化ボディだぞ?

 それを思いっきり蹴り飛ばしたら、普通こっちが骨折れるわボケぇ……っ!

 そっからもカオスすぎるじゃん。

 思いっきり嫌がらせだっつーのに、なんで「虫がついてたかも」になんだよ。

 んでなんでそれをハウリングは納得して謝ってんだよ。
 いやまぁドチャクソ下手くそなごめんねだったけども。

 挙げ句の果てには俺らが必死こいて写してる噴出爆破の任意起動型魔法陣を、〝もう覚えてる〟だと?

 俺はプライドがとても高い。
 なぁので、同じ年代の魔族に負けるなんて許せねぇ。

 例えそれが、体験学生でも。

「──説明は以上。質問がなければみんな散らばって、周りの人に当たらないよう、安全第一に魔法陣を書いてくれ」
「「「はーい」」」

 例え今から、初めての実技テストでも。

「せ、先生。俺はいつでも魔力で出せるから、こっ、ここにいてもいいだろ? ここに。せ、先生のそばにっ」
「? そうだな、アゼルは俺とみんなの出来上がりを待ってような。……っと。こら、抱きつくのはだめだ」
「あぅ……、……卵太郎の世話もちゃんとしてからきたぜ。仕事も終わらせたし、俺はいいこだぜ」
「ん……手を繋いでおこうか」
「!!」

 ──……たとえなぜか俺たちにはゴンザレスへ向けた「悪かった、クソガキ」以外話してないくせに、せんせぇにはやたらめったら懐いていている二面性馬鹿野郎相手でもだッ!


「カイト、カイト~? もう試験始まってるよ~、早く書き始めないと落第しちゃう。それにね! 受かったら先生がご褒美に、お花の魔法陣書いてくれるって~! 楽しみだねっ」

「せっ、せんせぇにも負けねぇ~~ッ!」


 なんてったって俺は、このクラスの成績ナンバーワンなカイト様。

 そしてペガサスのシーラーに惚れている、青春真っ只中の思春期無敵男子だコノヤロウ──!!

 俺はヒソヒソと声をかけてきたシーラーの眩い笑顔を背負って、いつの間にか始まっていた試験に望むべく、鋭い形相で広い場所に走っていった。

 打倒、せんせぇとハウリング!



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