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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

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 ちらりと先に吹き飛んでいたウィニアルトのいた方向を見ると、ウィニアルトを俺と同じく横抱きに捕まえたアゼルが上空にいる。

 仏頂面の王子様に、硬直しているお姫様だ。これもまた、予想通り。

 つまりだ。

 アゼルが行くとわかっていたから、俺は第二の爆発の気配を優先したわけだ。
 でないとクテシアスの救出に集中できなかっただろう。

 アゼルは魔法陣も使わず自然落下で地面に落ちていたが、あれはアイツだからできること。

 まだ若い生徒たちや中身は人間である俺にはできないので、俺たちはふわふわと降りような。

 任せっきりなのは気が引けるが、アゼルがいるとだいたいなんとかなってしまうので、俺はついつい甘えてしまう。

 アゼルは今は生徒なのに、俺より先に魔法の暴走をなんとかしてくれた。

 なにをしてくれたのかは、たぶん傍目にはわからなかったと思う。
 本当に頼りになる旦那さんだ。

 俺に今いる生徒たちの注意喚起を任せたアゼルは先に走り出し、俺が振り向いた時には爆発寸前の現場にたどり着いていた。

 そして遠くてよく見えなかったが、なにかいじったんだろう。

 第二の爆発の規模がちいさくなっていたのは、そのせいだ。

 抱えているクテシアスをうっすらと包んでいる闇の魔力から、おそらく耐性魔法をかけたんだ。

 大きなケガがないのはそういうことだな。

 俺が確認できたのはここまでだが、あいつはやっぱり単独先行ならいろいろと素早い。

 変装が解けないよう初期形態だが、とても頼りになる。惚れ直した。

「っとっま、こ、この抱き方やめろぉぉうっっ!!」

 なんて、アゼルはカッコイイなと思っていると、ようやく混乱の世界から我に返ったらしいクテシアスが、吠えた。

 ところどころに物理反射の魔法陣を張り、それを足場にゆっくりと地面に降りていきつつ、キョトンとする。

 この抱き方とは。

 クテシアスを両腕に寝そべらせ抱きしめる横抱き──いわゆる、お姫様抱っこである。

 別に辱めたいわけじゃないからな?

 クテシアスの背には翼があり、肩に担ぐことは出来ない。顔に当たる。
 かと言って赤ん坊のように正面から抱えると、前が見えない。

 故にこのスタイルだ。
 アゼルもウィニアルトにそうしている。

 それを説明すると、クテシアスはクワッと目尻を吊り上げてウィニアルトを探そうとキョロキョロ視線を走らせた。

 自分のお姫様抱っこ阻止より、ウィニアルトのお姫様抱っこ阻止が先だと思ったのか。かわいいな。

 トン、と地面に降り立つと、すぐにウィニアルトを抱いたアゼルが鬼気迫る勢いで駆け寄ってきた。

「そっ、その抱き方はやめやがれッ! したいなら後で俺をいくらでもさせてやるってのに馬鹿野郎がっ!」
「お前もか」

 開口一番唸られ、少し下から親の敵を見るような目でクテシアスを睨みつけるアゼル。

 俺のお姫様抱っこに物申したいのは、クテシアスだけじゃなかったようだ。

 というか、お前もウィニアルトにしているじゃないか。イーブンだろう?

 そう言うとアゼルは「お姫様抱っこが気になりすぎて下ろすの忘れてたんだよっ」とツンとそっぽを向く。

 忘れていたことを恥じて出たセリフだろうが、そのセリフだと忘れるくらいお姫様抱っこが羨ましかったことになる。

 そうか。
 アゼルは俺に、お姫様抱っこをされたかったわけだな。


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