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閑話 ガドと愉快な仲間たち
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しおりを挟む──輜重隊舎。
「オラァそっち持てってッ!」
「持ってるだろッ!」
「もっと持てよッ!」
「どっせぇいッ!」
「投げんなッ! 運べッ!」
「おーい! グラウンドの地ならし、誰か助けて~! キャット副官が悩みすぎてうっかり放った風魔法、ノリでガド長官が羽ばたきで応戦したせいで、クレーターできたッ!」
「ああああもうッ! マジでこの一ヶ月クレーター何個目だよッ!? 暇なら空の魔物間引けよッ! 憧れを返せッ! 仕事しろよ空軍ッ!」
「ウロコの天日干し、わかる。竜的やりたい。わかる。わかるけど──ウモー藁ってッ! 食料自分らで調達するからって、浮いた経費でいい寝藁買ってんじゃねぇよッ!」
「ウモー藁、すっげぇ燃えるよ。ねえ見て、すっげぇ燃える。嫉妬の炎も燃えるぜ」
「それなァァァァ……ッ!」
コートの歌が三周目に突入したあたりで到着した、輜重隊舎。
そこはなんというか、運動部の部室と言った雰囲気が充満している、男の世界だった。
えっさほいさと木箱に入った荷物を運んで、飛び交う男。
やけくそ気味に土魔法を、近くの広大な荒地に放つ男。
空軍が昼寝に使う藁にしてはフカフカの寝藁を大量に運んでは、地道に燃やす男。
更にその近くにも男、男、男、以下略。
見事なほど、男の竜人しかいない。
それもどちらかというと、しっかりした体つきの男しかいない。
ユリスタイプはおろか、ライゼンさんタイプすらいなかった。
リンドブルム、ガチムチパラダイスである。
リンドブルムの女性は小柄で華奢な人しかいないのに、男性ホルモンが活発すぎた。
そんな彼らのあだ名は、ガド曰く「パシリーズ」。輜重隊を空軍のパシリ扱いしている。
パシリーズ、んん、リンドブルムたちは、自由で豪快な空軍の後始末が主な仕事だ。
訓練場の補修。
間違って破壊した備品の数々の追加。
軍魔たちが巡回に出ている間の空軍基地の整備等、雑務を主としてこなしているらしい。
それらは陸軍だと陸軍長官の眷属──クレイゾンビたちや、従魔であるスケルトン達がこなしている。
けれどガドにはどちらもいないので、空軍では工兵のガルダーンたちが兼ねていた。
鷲頭に翼の生えた鷲頭人体のガルダーンたちはフリーダムなガドたち竜と違って、非常に真面目で働き者。
例えるなら、ああまで人懐こくないが、キャットのような性格だ。
文句も言わず雑事もこなしていたが、正直大変だっただろう。
リンドブルムたち輜重隊の戦時以外の仕事内容を決めたのはガドなので、おそらくガルダーンたちに良かれと思って決めたのだ。
ガルダーンたちは喜んでいるが、当のリンドブルムたちはやけっぱちである。
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