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十四皿目 おいでませ精霊王
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「そうだ。きっと男はみんな変態だ。俺はそう思う。視線でどうにかなるんだ」
「奥が深い! そうですね。俺もじっと見つめられたら、胸キュンしてしまうぞっ……! 魔王様は目が合うだけで照れると、ふむふむ……」
お茶とお菓子と誘惑講座。
甘いお供を伴い、現在の俺は真剣そのものだ。
いつも隙を見ては部下に俺の話をしてしまう困ったアゼルへの仕返しとして、キャットにアゼルの弱点を語っているのである。
キャット曰く、アゼルは俺の話をいろんな人にしたくてたまらないらしい。
なので誰かが話を振ろうものなら、イキイキと言いふらして止まないのがノーマルだとか。
どんなノーマルだ。
俺は頭の中ではいつもアゼルのことを考えてしまうが、あんまり言いふらしたりしない。
なのでアゼルはきっと、知らない間に知られている恥ずかしさがわからないと見た。
これがかなり恥ずかしい。
顔にはあまり出ない俺だが、穴があったら入りたくなる。
心を鬼にして仕返しをすべく、片っ端からアゼルのかわいい反応を語っているのである。
もちろん相談にも役立つよう、多少ゼオにも効きそうな反応をチョイスしているぞ。
とは言えアゼルはなにがツボなのかわからないくらい、急にスイッチが入るからな……。
キャットの力になれているのかは、不安なところである。
「そう言えば、目を逸らしたら負けゲームをしたりしたぞ。まだタローがいなかった頃だ。アゼルは連戦連敗で、いつも真っ赤になって目を塞いでいた」
「目を逸らしたら負けゲームですか……!? なんだか楽しそうです!」
それでも思いついたものを話して聞かせると、キャットは瞳を輝かせて身を乗り出した。
そうだな、あれは楽しかったとも。
照れ屋なアゼルが徐々に赤く色づいていくのを観察する、風情のあるゲームだ。
もしかしたら、ゼオも色づくかもしれない。
「よしキャット。俺の見立てでは、好感があればいかなゼオでも赤く染まると思うんだ。告白する前に好感度検査をしてみるのは、どうだろう? きっとモミジのように赤くなるはず」
「紅葉、じゃない紅ゼオ様狩りですか!? か、狩りたい……! 是非狩りたい……! そしてお部屋でニコニコ眺めたい……っ!」
「うんうん、気持ちはわかるとも」
俺の提案で赤く色づいたゼオを想像したらしいキャットの言葉に、深く頷く。
俺だって色づいたアゼルなら、いつまでもニコニコ眺めていられそうだ。
かわいいからな。
恋とはそういう魔法なのだ。
けれどキャットはふと我に返り、自らカァァ……、と真っ赤に色づいてしまった。
むむ。紅葉、じゃなくて紅キャットか。
「で、でも俺如きがそんなゼオ様と……うおおおお……っ! て、照れる! うううぅぅそ、そんなけしからん目付きをして、貴様猥褻物の自覚がないのか? 恥を知れクソムシがッ!」
「ん。緊張モードが出てるぞ? 紅キャット」
「ハッ!」
しまった! と言う顔をするキャットは、想像をしただけで高圧的になってしまう、いつものモードに入ったようだ。
もちろんまだまだ顔が真っ赤である。キャットもかわいらしいな。
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