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十五皿目 正論論破愛情論

63(sideガル)

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 ガルはまず、現状を語るために必要な過去の基盤をシャルとリューオに説明した。

 なぜジズが生まれたのか。
 ジズの役目とは。

 そして、なぜ精霊族である自分がジズを助けるのかについて、だ。

 精霊族の最大の目的は、儀式を行うこと。ジズを神扉の中へ一人送り込み、その身を犠牲にしてでも鍵を掛けさせる。

 ジズごと神霊を封じて、千年の安寧を手に入れたい。
 しかしそれは抗うことを許されず決定された、犠牲の上で成り立つことだ。

 それが気に食わないガル。
 それを許さない魔王。

 二人が結託し、ガルの補佐の元、魔界軍を巻き込んで儀式をぶっ潰し、その上で丸く収めることになった。

 そして王であるアマダは儀式を遂行しようとしているだけで、なにも知らない。

 ジズの誘拐や魔王の洗脳を目論んだのは、左王腕──セファーだ。

 彼の計画の元、その弟であるジファーや精霊族は動いている。

 なので半端に計画の芽を潰すだけではなく、計画の最終段階で油断しているところを一気に叩き、完全に折らなければならない。

 そのために素知らぬ顔をしながら引っ掻き回すキャストが必要だったのだ。

 白羽の矢が立ったのはもちろん同伴者であるシャルとリューオ。

 魔王は頼りになる人材を選んだと言っていた。ついでにデロデロに惚気られた。本当に二重人格なんじゃないか?

 底抜けに愛している人間と対等に信頼する人間と言われ、ガルは色眼鏡じゃないかと勘ぐった。

 それ故に信用できるか試させてくれと言い、イズナとして潜入ついでに、魔王に様子を伝える係となったわけだ。

 説明は長くなったが、これで一応必要なことはちゃんと話した。

 リューオはよくわかっていない様子だったが、シャルが掻い摘んで説明すると、なるほどと理解する。

 ふむ……シャルは徹底的に補佐向きらしい。なんでも受け入れる素直な質から、チームを組めば誰とでもうまくやれる。

 裏方でのサポートを器用にこなせる、潤滑油だ。自己主張に欠けるので、リーダーには向いてない。

 リューオは目的を明確にすれば、脇目も振らず率先して先駆けてくれるだろう。

 こちらは補佐にもリーダーにも向いてないが、エースには向いている。

 ガルは密かに観察して仲間への見解を深めながら、素知らぬ顔でコーヒーを飲む。観察してクセを掴み、うまくやるのだ。

「「……うーん……」」
「ん?」

 そんなガルを、二対の目がじっと射抜いた。

 シャルはむむ、と悩ましげに。
 リューオはうげ、と面倒くさそうに。

 なんだこのコンビは。
 キョトンと首を傾げると、シャルはガルの体をそっと抱き寄せ、顎の下を指先でくすぐる。

 これはなかなか、うはは。気持ちいい。いいぞもっとやれ。うはは。

「うりうり」
「うはっうははっ」

 いつも思っていたが、彼はなでるのがやたらうまい。こちらの様子をよく見ているので、なで加減が絶妙なのだ。

 ふーむ。魔王が惚気ける意味もわかる。種族が違ったがために最期の最期まで友に友と言ってやれなかったガルだが、彼らは違う。

 流石、異種族夫夫の片割れ。
 これが種族の垣根を越えた懐柔術か。

 自然とニマッとした笑みを浮かべてされるがままになっていると、正面のリューオがガルの鼻先をつついた。

「精霊族ってのは、どうしてそう人様を観察して、あれこれ考えだけ走らせンだ? それで俺らのことが全部わかりゃしねぇだろ。悪かねェけど、ウゼーからやめろや」
「そうだな。精霊族は、なんだか気ままで自由に見えて、あまりに封鎖的だと思う。文化の違いだと理解しているが……俺たちは魔族と人間と精霊族の連合軍だろう? 枠に当てはめることはない」
「そうそう。人間は仲良しこよしが大好きってこった」
「うはは。……あぁん?」

 予想外の反応をされ、キョトンと首を傾げる。

 彼らがなぜそんなことを指摘するのか、ガルはすぐにはよくわからなかった。そう言われたのは初めてだったからだ。



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