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第5章
第75話 偽家族
しおりを挟むその日から、絵衣子がりんの入浴中に勝手に入ってくることは珍しいことではなくなった。信太郎がリビングでテレビを見ている時ですら絵衣子は、
『りんちゃんとお風呂入ってきますね』と堂々と宣言して乱入した。
女同士ということが有利に働き、信太郎は疑うどころか、距離を縮めた二人を微笑ましく思っていた。
下手に騒いで父にバレてはいけないというりんの想いを逆手にとり、そんな状況の時、絵衣子はいつも以上に激しくりんの体を感じさせた。一生懸命に快感を我慢しているりんの表情が、絵衣子にはたまらなく好物だった。
それから三年が経ち、りんは高校生になった。進学した女子高は少し特殊な高校だった。校内には有名な女子カップルがいて、入学式から一週間でその情報は新入生のほとんどの耳に入った。というのも、そのカップルの片割れは入学式で壇上にのぼった生徒会長で、もう一方は部活紹介の催しで誰よりも目立っていたバスケ部の部長だったので、一年生の中で噂が広まるのは必然的だった。
二人とも飛び抜けて容姿がよかったので、ふわふわとした未成熟な心で恋愛を求める年頃の女子たちは、そんな二人に憧れると同時に、その真意も分からず自分も自分も……と密かに自らの相手を求めるようになった。
そんな中で、りんはある一定の子たちからの影の的になっていた。誰にも話したことはなかったけど、物心ついた時からりんの恋愛対象は女の子だった。今まではギリギリ隠せていたその香りが、漏れ出し始めていたのかもしれない。
まずパッと見が小柄で可愛らしく、その時点で自然と目に飛び込んでくる。次に、そういう心持ちで近づいてみると、意外なほど落ち着いた空気感が漂っていて少し混乱する。仕草や話し方もイメージとは違い常にクールで、冷たい性格なのかと思いそうになるけど、年齢や外見を差別することなく女の子になら誰にでも優しく振る舞う姿を見て、誤解しかけた自分を責めるようになる。少し距離が縮まり笑ってくれるようになると、天性の笑顔に女子たちはこぞって心を奪われ、やがてその黒い瞳の中に光が宿っていないことに気づくと、自分だけがりんの特別になりたいと願うようになった。
同じクラスの子はもちろん、委員会などで関わった先輩や、時には一切話したことのない別のクラスの子にまで、入学して数ヶ月と経たないうちに、りんは何人もの女子から告白された。その中に特別好きな相手はいなかったけれど、願ってもない女子との交際のチャンスに、ある先輩と付き合うことを決めた。
りんは絵衣子にも父にも話さなかったけれど、絵衣子はすぐに勘づいた。信太郎が出張へと出向いたある夜、りんは彼女からかかってきた電話に長い時間付き合っていた。友だちと電話中という手は、この頃りんがよく使っていた回避術だった。さすがの絵衣子も、無理に友人との電話を切らせるようなことまではしなかった。深夜近くまで電話をしてそのまま寝てしまうと、絵衣子に手を出されることはない。この日もそんな思惑でいた。
りんは声の音量に気をつけていて、誰かと電話中であることは聞こえつつも、話の内容までは分からない程度にいつも調整して話しているつもりだった。けれどこの時は、今までのようにただの友だちではなく、相手が初めての『彼女』だということが思春期のりんにも少なからず影響を与えた。いつもより部屋から漏れてしまった会話は、扉の前で聞き耳を立てる絵衣子にしっかりと届いていた。
見上げた壁の時計が深夜0時を超えているのを確認して、もうここまで来れば……と、りんは話を終わりに向かわせた。それに勘づいた彼女はまだ物足りないとねだったけれど、もう眠くて仕方なかったりんはなんとか説得をしてようやく『おやすみ』と電話を切った。
コンコン……
「……りんちゃん?」
電話が切れた瞬間に、背後の扉の奥から感情の読み取れない絵衣子の声がした。こんな時間に部屋を訪ねられるのは初めてのことで、りんは激しく動揺した。
「……はい」
理由をつけて入室を断ろうと考えているうちに、絵衣子は許可を取ることもせず勝手に扉を開けた。 ドアノブの音に反応し、椅子に座っていたりんが振り向くとすぐに、まっすぐに向かってきた絵衣子は、両手で頬を包んで強引なキスをした。
この頃になると、絵衣子の行為は日常茶飯事で、りんはすっかり義務のように拒むことを諦めていた。少しの時間耐えて絵衣子の欲を満たせばそれで終わる……それはこの数年でりんが悟った、一番速くスムーズに事を済ませられる方法だった。しかし、その日の絵衣子はいつもとは少し様子が違っていた。乱暴的なほどりんを求め、いつまでたってもキスを止めようとしない絵衣子に、りんは単刀直入に聞いた。
「絵衣子さん……どうしたんですか……?」
「分からないの?」
絵衣子は憎むような目で責めるようにりんに言った。そして、困った顔をするりんに、自分のシャツのボタンを外すことを指示を出した。言われた通りに従い、りんは絵衣子のシャツのボタンを全て外すと、今度はそれを開くように言われた。再び言うことを聞くと、白くて美しい絵衣子の豊満な胸が、下着にすら包まれていないそのままの姿で目の前に現れた。
「……して?」
まだ不機嫌の消えない絵衣子をなだめるように、りんはその胸に舌を這わせ絵衣子を感じさせた。
「あぁ……そうだよ……りんちゃん……りんちゃんはいい子だね……」
絵衣子は自分の胸にしゃぶりつくりんの頭を、赤ん坊を愛でる様に撫でた。
「ねぇ……美味しい?」
「…………はい」
「美味しい?って聞いたんだよ?」
「…………美味しいです」
「そう、美味しいの……可愛いね……じゃあこっちも欲しい?」
絵衣子が反対の胸を差し出すと、りんは迷わずにそれを口に入れた。りんにとって、絵衣子との行為は気が進むものではなかった。しかし、迫りくる体は自分が求める性の対象であり、絵衣子の体は皮肉なほどに美しく繊細で、その感触や反応は思春期真っ只中のりんの核を激しく刺激した。
絵衣子はしばらく自分の胸を舐めさせると、今度はりんのTシャツをまくりあげ、自分されたことを同じようにりんにした。
りんはとても反応が良かった。それは幾度となく飽きずに絵衣子の興奮を掻き立てさせた。片方してあげるだけでもとてもよがったけれど、同時にもう一方の乳首を指でいじってあげると、なかなか聞くことの出来ないりんの大きな声を聞くことが出来た。
いつも以上に執拗に強制的に与えられる快感で、りんがぐったりと背もたれに体を預け天を仰いだ時、絵衣子は右手の中指をりんの下着の中へ滑り込ませた。
ガタッ!!
りんは一瞬で椅子から立ち上がり、絵衣子から距離をとった。何も言わずとも、その行動が激しい抵抗を示しているのはあきらかだった。けれど、絵衣子はそんなりんの姿を見て、ほっとしたように穏やかな笑みを浮かべた。りんは今まで感じたことのない恐怖感を覚えた。それに気づきながら、絵衣子はじっとりとした視線をそらさず、りんの液で輝いた右手の中指をいやらしく舐めてみせた。
「あぁ、良かった……まだここは誰にも触られてなかったんだ……」
りんは絵衣子からさらに距離を取ろうとゆっくり後ずさった。すると、絵衣子は簡単にりんを捕らえ、ベッドの上に力づくで仰向けに押し倒した。
「絵衣子さん……これ以上は……もうやめて下さい……」
りんは震えた声と体で、期待は薄くとも、なんとか絵衣子に分かってもらおうと試みた。
「りんちゃんは私が恐い?」
「…………」
「私じゃなくて……下を触られるのが恐いのかな?」
りんが呼吸を荒げて表情を強張らせると、絵衣子はさらにうっとりとした。でも何かを思い出したようにすぐに恨めしい顔つきに変わる。
「りんちゃん、彼女出来たんだ?」
「……出来てないです」
「あのね、嘘だけはつかないで欲しいの。りんちゃんに嘘をつかれると、私……ここがすっごく苦しくなるの……」
絵衣子はりんの体にまたがりながらりんの冷えた手を取り、自分の胸に当てさせた。
「……彼女、出来たの?」
もう一度同じ質問が投げかけられる。
「…………はい」
強迫観念のように嘘がつけなくなった。
「彼女とキスした?」
「…………はい」
「……そっか、うん……そうだよね。正直に言ってくれてありがとう」
すると絵衣子はりんに覆い被さり、唇を合わせた。ぬるっと入ってきた舌が内側からもりんを渇望してくる。
「りんちゃんもちゃんとしてよ……」
自分も出来るだけ同じレベルで……と、絵衣子の舌に舌をからませ、早く満足してもらえるように必死に頑張った。すると突然絵衣子がフッと笑い出した。
「こんなキス、彼女とじゃ絶対出来ないよね?まだ舌も入れてないんでしょ?」
矢継ぎ早の質問に、りんは口をつぐんだ。
「……でも、 おっぱいは舐めたんだね」
絵衣子の言葉にりんは驚愕した。
それは図星だった。
つい先週、学校帰りに彼女の家へ行き、部屋で初めてのキスをした。りんは付き合うのはこれが初めてだと彼女に話していた。彼女にはこれまで二人の女の子と付き合ったという過去があって、キスもエッチもすでに経験済みだった。経験がある人にこそ気づかれてしまう気がして、りんは極力控えめなキスをしたけれど、それでも彼女には少しの違和感を与えてしまった。
「本当に誰ともしたことない?」
「……ないです……付き合ったことすらないし……」
一学年上の先輩の彼女は怪しみながらもりんの言葉を信じた。
「じゃあ、元々キスが上手いんだね!」
照れながらそう言った彼女の目を、りんは見ることが出来なかった。だけど、彼女はそれを恥じらいだと勘違いしてくれて、さらにはついさっきされた妙にいやらしいキスのせいで、みるみるうちにその気になってしまった。
「……そういうことは……するの嫌?」
彼女の言った『そういうこと』の意味はすぐに分かった。上目遣いでそう言われ、りんも一瞬でその気になった。いつもさせられてるノルマのような行為ではなく、彼女と今からするこの行為こそ、紛れもなく正しい行為だと、ある意味初めての経験に胸が高鳴った。色んな意味で火がついてしまったりんは、疑われてしまうかもしれないということを忘れ、手慣れた手つきのまま彼女の制服のシャツのボタンを外していった。その様子を彼女はやっぱり不可解に思ったけれど、陶酔したようなりんの表情を見ているとその可愛らしさに、きっとこの子には女子を喜ばせる才能が元々備わってるんだ……と都合のいい解釈をしてくれた。
下着を外すと、絵衣子とは全く違う形の胸が現れりんは一瞬たじろいだ。十代らしい張りが前面に出ていて、歳上なのに子どものようで、女らしさはまだまだ足りない気がした。それでもすぐにその先端を口に含み、舌で上下左右と強弱をつけて愛してみた。
「……やだっ……すご……い……こんなの、初めて……」
普段から長く舐め続けることを絵衣子に強要されているりんの舌は、疲れを知らないように元気よく動き続けた。そんなにも長く同じ場所を感じさせられた経験のなかった彼女は、それだけで骨が抜けたようになってしまった。胸ばかりを責められ、これ以上我慢が出来なくなった彼女はりんの右手首を掴み、
「……こっちも……して欲しい……」
と、りんの手を自分の太ももに置いて素直にねだった。経験のないことにりんがたじろぐと
「……りんがこんなに気持ちよくさせるからでしょ?責任とって!」
彼女が可愛らしい脅迫をしてきて、りんは覚悟を決めた。やり方もよく分からないけどそれを察した彼女かま「大丈夫、しながら教えてあげるから」と言うので、それを頼りしようとスカートの中へ手を忍ばせたその時、自分の体じゃないようにそれ以上手が動かなくなった。結局そこまでしか出来なかったりんを、我に返った彼女は「初めてなのにごめんね」と責めることなく抱きしめ、その日はそれで終わった。
「……どうしてそんなことが分かるんですか?」
不思議に思って尋ねた。
「さっき少しだけね、いつもと舐め方が違ってた……。だからそんな気がしたの。……でも良かった。どこまでしちゃったんだろうって心配してたけど、間に合ったみたいで。まだ指を入れたわけでもないのにこんなに震えちゃうなんて、まだしてないあきらかな証拠だもんね?」
何もかも見透かされている絵衣子に、りんは反論の気すら失った。
「ねぇ、どうしておっぱいまで舐めたのに彼女と最後までしなかったの?」
「……それは……」
「もしかして、私との約束を思い出してくれたから?」
「そうゆうんじゃ……」
「きっとそうだよ。りんちゃんは、自分で思ってるよりずっと私のことを想ってくれてるもん。だから出来なかったんだよね?初めてをまだ私としてないのに、他の人としちゃいけないって思ってくれたんだよね?そう約束したから……」
絵衣子はりんの左肩に人さし指と中指で触れた。その二本の指で小さな円を描くように傷一つない肩を愛した後、腕を伝ってゆっくり下へと滑らせてゆく。
「最近ね、早くしないと、彼女に私のりんちゃんを汚されちゃうって思って焦ってたんだけど、ここのところずっと信太郎さんの出張がなかったからなかなかりんちゃんと二人きりになれなくて……」
「……お父さんのこと……好きじゃなくなったんですか?」
ずっと避けてきた父の話題を、りんはついに口にした。すると、絵衣子はまるでその質問を待っていたかのように嬉しそうに笑った。
「違うよ?好きじゃなくなったんじゃなくて、初めから好きになんてなってないの。私ね、ある時信太郎さんにりんちゃんの写真を見せてもらった時からずっと、りんちゃんのことが頭から離れなくなったの。それで、『今度会ってみたいです』って信太郎さんにお願いして、あの日初めて本物のりんちゃんに出会った時からずっと、私はりんちゃんのことしか求めてないの……」
「…………意味が分かりません」
「じゃあ分かりやすく話してあげる。りんちゃんを私の物にしたくて、私は信太郎さんと結婚したの。これなら分かりやすいでしょ?」
「そんなこと!!」
「あり得ないって思う?でもそれが本当の真実だよ。それだけあなたは私に衝撃を与えたの……。正直言って私、申し訳ないけど信太郎さんのことはどうでもいいの。りんちゃんさえ側に居てくれれば……。でも、りんちゃんはお父さんのことが大切でしょ?傷つけたくないよね?だから、これからも上手にやっていこうよ。私は、りんちゃんが私にりんちゃんを捧げてくれるなら、信太郎さんのことも大事にする。今までだって私、ちゃんとそうしてきたでしょ?」
「……お父さんとした体で……私のことも抱くんですか?そんな酷いこと……」
すると絵衣子は、ツボに入ったように面白そうにクスクスと笑った。
「りんちゃんはほんとに何も分かってなくて可愛いなぁ……。安心して。私、信太郎さんと寝たことは一度もないから」
「そんなの嘘ですよ!何年も一緒にいて!!」
「じゃあ私達が一緒にベッドで寝てるところ見たことある?」
「それは……」
確かにりんは、今までその事を度々不思議に思っていた。絵衣子が一緒に住むようになっても二人の寝室は別々に設けていて、りんの知る限り、二人が抱きしめ合うところすら見たことはなかった。
「信太郎さんはね、出来ないの。……まだ信太郎さんと付き合う前ね、りんちゃんの近い存在になるためには、気が進まないながらも信太郎さんに対して色仕掛け的なことも必要だって、むしろそれしかないって思ってた。でも、そんな関係になる前に色々と相談を受けてた時、信太郎さんから聞いたの。奥さんが亡くなった直後から、体がそうゆう反応を全く示さなくなったんだって。りんちゃんのお母さんのこと、本当に愛してたんだと思う。素敵だよね……。とにかく、私にとっては願ってもない好都合だった。私は、自分も実は性的に欠陥があってそれが原因で普通の恋愛が出来ずに結婚も諦めてるって嘘をついた。同情してくれた信太郎さんは、お互いに支え合って、形上結婚するということを提案してくれた。だからね、私とお父さんは至って健全なの。本当にただ一緒に暮らしてるだけ。信太郎さんだって、私のことなんて女としては全く愛してなんかないんだよ?ただりんちゃんの為に世話係が必要で、それに好都合だった私を家に置いているだけ。そんなに娘のことを想ってくれる優しいお父さんを、りんちゃんは悲しませたくないでしょ?」
唇を噛むりんの耳を絵衣子は唇で優しく挟んだ。たったそれだけでりんが悶えそうになる体を必死に
誤魔化そうとしていると、
「私はね……りんちゃんの全てを奪うつもりなんてないよ。そこまで無理強いするつもりはないの。りんちゃんは好きに誰かと付き合ったらいいし、キスもエッチもしたらいい……でもね、初めては全部私にして欲しいの。そして、誰かと何かをしたなら、同じことを私にして欲しいの。そんなに難しいことじゃないでしょ?お願いだから、私のことを蔑ろにしないで……表で何をしてても、いつも私を一番大切にしてくれればそれでいいから……」
そこまで言うと絵衣子は、唇で弄んでいたりんの耳を音を立てて舐め始めた。
「彼女とエッチしたい?」
絵衣子が耳元で囁く。りんは黙ったままだった。
「それなら……私と先にエッチして。教えてあげるから。その方が彼女も喜ぶんじゃないかな」
絵衣子がりんの服を脱がしていく。りんはもう抵抗しなかった。あっという間に下着だけの姿にさせられた観念したりんを愛おしく抱きしめて、絵衣子は頬にキスをした。
「愛してるよ……りんちゃん……。誰よりも私が一番りんちゃんを愛してる……」
りんが何も返さないでいると
「今だけでもいいから……言って……お願い」
絵衣子は泣きそうな顔をしていた。
「愛してます……絵衣子さん……」
棒読みに読んだそのセリフに、絵衣子はたまらなくなって身をよじり、りんをきつく抱きしめた。
「……嬉しい」
高ぶった気持ちのまま、まずは舌でいつものようにりんの胸を味わった。そしてしばらくすると、胸を口に含んだまま、右手を下へと下ろしていった。りんの体が硬くなる。
「大丈夫だよ、痛くもしないし、怖いこともなにもないから。やさしくしてあげるからね」
そう言うとキスをしながら、下着の上から指で優しく触れた。
『あっ……』
触れた瞬間に指先が濡れ、絵衣子は顔を上げて歓喜の声を漏らした。
「こんなに気持ちよくなってくれてたんだね、りんちゃん……」
りんの反応を丁寧に観察しなから、絵衣子は少しづつ少しづつりんの体に指を教えた。絵衣子によって性の快感を目覚めさせられたりんの体は、気持ちとは裏腹に、悲しいくらい皮肉にも絵衣子の体に反応した。
絵衣子には自分の体の全てを知られている……まるで自分でしてるように、的確に気持ちのいい場所をいじられる。りんにはそんな感覚だった。始まってしまうと、心がえぐられる想いを抱きながら、それでもりんはその行為に溺れてしまった。そんなふうになっている時、絵衣子の肩越しに、必ず俯瞰でそれを見ている自分がいた。
やがて絵衣子の指が中へと侵入してきても、体中に違和感を感じながら、自ら腰を振った。時間をかけて指の気持ちよさをじっくりと体に教え込み、もう履いている意味がないほどに濡れた下着を剥ぎ取ると、絵衣子は不安気なりんの足をゆっくりと開いた。そして、なんの躊躇いもなく、断りもなく、小さく立った部分を舌先で舐めあげた。
「絵衣子さんっ……!!」
りんは咄嗟に絵衣子の名前を叫んだけれど、それは快感の共有でも愛でもなく、どちらかと言えば同じ罪を背負った共犯者と傷を舐め合うような思いに近かった。それでも絵衣子は、初めてりんが行為中に自分の名前を口にしたことに感動した。そしてその余韻を耳に残しながら、ご褒美にと延々とまたりんの体を感じさせた。
夜明けの見えない夜を受け入れながらりんは、歪んだ絵衣子の愛を完全に拒めない自分に、確実に気づき始めていた。
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