私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

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第3章 恵里花のスーツケースの中身は?

017★ホットワインは魅力的?

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 ひと口…口にしたら…あまりの美味しさに…つい…味わうこともなく飲み干して後悔する彼らに、視線でもう一杯と強請られて、オスカー達は困ってしまう。

 そんな無言のやりとりをしながらも、彼らにとって得体の知れないゼリーを恵里花に進められるかもとしれないと思い、戦々恐々という表情を無意識で浮かべていた。 
 そんな彼らに、何も知らない恵里花は声を掛ける。
 そう、まさか喉ごしツルリのぷるぷるエネルギーチャージを怖がっているとは、思ってもいなかったから…………。

 「オスカーさん、床に寝ている神官様達と
 魔法使い様達に、これを飲ませてください」

 やっぱり、ソレは重症者に与えるモノだったかとオスカー達は思った。
 が、自分達は飲む方ではなく与える方だからと、自分を叱責して恵里花の差し出すゼリー入りのコップを受け取った。

 こうして、《魔力》枯渇を起こした神官及び魔法使い達は、騎士達により強制的にゼリーを食べさせられるコトになった。
 どんなに嫌でも、彼らは、オスカー達に差し出されるゼリーを拒否することは出来なかった。

 涙目で嫌そうにしている彼らに、自分達は食べる必要が無いので、にこやかに笑って騎士達が言う。

 「姫君が、貴方達の為に、わざわざ用意した
 異界渡りのエネルギーの入ったモノを
 拒否するんですか?」

 騎士達の嫌みったらしい言葉に、重症者は、涙目でギンッと音がしそうなほどの目つきでゼリーの乗ったスプーンを睨む。
 が、口惜しそうに静かに口を開けるのだった。

 1口2口とゼリーを口に含むと、重症者の顔色はどんどん良くなっていく。
 その様子を見て恵里花もオスカー達も、神官や魔法使い達もほっとする。

 こうして、恵里花の指示で命が助かった彼らは、これ以降恵里花を《聖女》として扱うのだった。
 そんな彼等だが、つい空のコップ(逃避でグイッと飲んでしまったホットワインが入っていた)に、視線を落としてしまう。
 その様子を見た恵里花が、オスカーに話し掛ける。

 「オスカーさん、神官様達や魔法使い様達に
 もう一杯ワインを飲ませた方が
 良いんでしょうか?」

 「そうですねぇ~………これから《結界》の
 補修に駆り出されることを考えると…………

 完全回復させるという意味を込めて
 与えてもよろしいと思います

 界渡りのアメを与えるよりは、安全かと」

 〔あっ…やっぱり…アメはダメですか……
 それじゃ、少しでも、回復できるなら……

 せめてもう一杯飲ませておきたいな
 あと、騎士様達にも………〕

 「そうですね…だったら、あの場に居た
 オスカーさん達を含む騎士様達も…
 一杯飲んでおいた方がイイと思います」

 恵里花の言葉に、《魔力》枯渇などで運ばれたり、連れて来られたりして者達が飲む、ホットワインをちょっと羨ましいと思っていたオスカーは、にっこりと笑う。

 「では、姫君のお言葉に甘えて…………」

 オスカーの言葉を聞いた者達は、嬉しさで自然と顔が綻んでいた。

 室内にいた者達は恵里花を除いて、全員がホットワインを飲んだ。

 その直後に、緑色の汚れを甲冑に付着させた騎士が静かなノックと共に入って来た。
 拳を握った右手を曲げて胸の前に付けて、騎士はオスカーに報告した。

 「副団長、神殿の中庭に出現した
 緑魔を排除しました」

 「ああ、マイケルか、緑魔なら
 きちんと燃やし終えたか確認したか?」

 「はい、サーチ(探査)で確認しました
 種子も残っておりません」

 「《魔石》は?」

 「こちらに回収しております
 予想していたサイズより大きかったので…
 含有する《魔力》量は…多いと思います…」

 マイケルは、自分の後ろに控えていた部下ドナルドに視線を向ける。
 するとドナルドは、《魔石》を入れる特殊な防御を付与された袋からくすんだ緑色の《魔石》を取り出し、マイケルに差し出す。

 それを受け取ったマイケルは、オスカーに差し出した。
 くすんだ緑色の《魔石》を、恵里花は物珍しいというか好奇心一杯の表情で見詰めていた。
 《魔石》を受け取ったオスカーは、恵里花に笑ってそれを差し出した。

 「姫君は《魔石》を初めてご覧になるのでは?」

 「ええ、初めてよ……ええとぉ《魔石》って
 素手で触っても大丈夫なんですか?」

 「大丈夫ですよ…《魔石》は、単に《魔力》を
 凝縮して貯めているモノですから……

 人間と違って…魔物は、余った《魔力》を
 《魔石》に変換して体内に
 留めておけるという能力を有しているんです

 その《魔力》を使えるから
 人間より強くなるんです

 人間は余った《魔力》を
 貯めておくことができませんから…………」

 「ふぅ~んそうなの…
 《魔力》を使い切った《魔石》に
 人間が自分の《魔力》を貯めて
 後でそれを使うことは出来ないの?」

 「出来ますが…………」

 「何か問題があるの?」

 「姫君の手にしているぐらいの大きさがないと
 我々の《魔力》を貯めることが出来ないんです
 理由はわかりませんが…………

 そして…《魔力》を注いだ人間以外は
 その《魔力》を取り出せませんので…」

 「う~ん確かに使い辛いですね……
 ところで…皆さん戦って来たんですから…
 ホットワインを飲みませんか?」

 《魔石》を持ってきた者達にもと、優しい声をかけられ、思わず許可が欲しくて副団長・オスカーの顔を見る。
 しっかり、眼力を込めて飲みたぁ~い飲みたぁ~いを送る。
 その視線をはっきりと認識したオスカーは、1つ嘆息してから命じる。

 「マイケル、お前が飲む前に
 この辺りを警備している騎士全員に
 交代で飲みに来るように指示しておけ」

 その答えに、彼が獣人だったら、盛大に尻尾を振っていただろう、幻影の尻尾が恵里花には見えた。

 〔えっとぉ~…そんなに嬉しいの?
 幻のお尻尾が見えるんだけど………〕

 そんなマイケルは、恵里花の視線に気付くことなく答える。

 「はい、指示しておきます」

 そして、マイケルは、一緒に報告に来た部下を連れて部屋を出て行ったのだった。







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