私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

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第3章 恵里花のスーツケースの中身は?

016★とりあえず、異界渡りの色々なモノが入ったホットワインを

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 ちなみに、2つのスーツケースの前で困惑した恵里花に、オスカーが本体と複写したモノを教えてくれていた。

 そして、困惑した恵里花の為に、オスカーはクリストファーとジャステイーに指示し、本体グループを右側に、複写グループを左側に、分けて置いてくれたのだった。

 恵里花は開いたスーツケース(勿論、複写した方)の中から、蜂蜜のパックと砂糖袋とワインが入ったものを、なんとか引き出す。

 〔蜂蜜に、お砂糖に、ワイン……それとぉ…
 あっ…アメの大袋……と、こんなものかしら?〕

 アメ袋と蜂蜜や砂糖と一緒に、ワインの入った非常用の水入れを、恵里花はテーブルに乗せたいと思ったが…一部のものが、重いので諦めた。

 そんな恵里花の行動を見ていたオスカーが、気遣いの声を掛ける。

 「姫君、重いものは、我々にお任せください」

 「えっあっありがとう」

 「いいえ、どういたしまして」

 爽やかな笑顔と共に、オスカーはワインをヒョイッとテーブルの上に置いた。
 勿論、他の砂糖や蜂蜜、アメの袋はフェリックスが運んでいた。
 すると恵里花は、忘れていたモノを欲しいと言い出した。

 「あのね、お湯割のワインを入れる器と
 かき混ぜるスプーンが欲しいの………

 それと…蜂蜜と砂糖を溶かしたら………
 ワインを入れて欲しいの…良いですか?」

 恵里花の要望に、オスカーは微笑みを浮かべて応じる。

 「直ぐに、用意させます…フェリクス」

 その成り行きを黙って見ていた神官が、口を挟む。

 「いえ、ここに、ありますから、大丈夫ですよ」

 イスに座っていた神官(サミュエルとフェルナンド)が、恵里花に言うと、立ち上がり棚の箱を2つを持って来た。
 そして、箱をテーブルに置くと、蓋を開けて見せた。

 そこには、綺麗に磨がかれた銀のコップが入っていた。
 もう1つには、銀のカトラリーセットが入っていた。
 それを見た恵里花は、2人にお礼を言う。

 「ありがとう……助かります……
 これに、ワインを入れますね
 だから、もうちょっと待って下さい」

 必要なモノが用意できたので、恵里花は樽のお湯の中に蜂蜜と砂糖を入れて、魔法で攪拌する。
 もう、考えることを放棄した恵里花は、バンバン魔法を使う。

 そして、カトラリーの中からスプーンを取り出し、甘さを確認する。
 予想よりかなり甘めだったが、恵里花はそのままワインを入れることにした。

 「こっちのワインを入れて下さい」

 恵里花の指示に、クリストファーとジャステイーが、ワインの入った樽を持ち上げ傾けてワインを静かに入れ始める。
 それを見ていた恵里花が、充分入ったと思いワインを入れるのを止めてもらおうとする。

 「そのぐらいで…………」

 「そのまま入れろ…縁から手のひら一枚分
 隙間が開いていれば充分だ」

 オスカーの指示に、恵里花は首を傾げた。
 そんな恵里花を見て、オスカーは苦笑する。

 「界渡りのワインを入れ過ぎるのは
 危険なのではないかと思いまして………

 出来るだけ、ワインを入れる量は
 少なくしておいた方が良いからですよ

 それに…界渡りの蜂蜜や砂糖も
 今、入れましたよね」

 オスカーの注意に、恵里花は、羞恥で頬をほんのり紅く染める。

 「ごめんなさい…忘れていました
 それと…アメを食べさせたいんですが…
 大丈夫でしょうか?」

 恵里花の質問にちょっと困ったなぁ~という表情をした後に、オスカーは提案する。

 「ワインを飲んでも回復が悪かったら
 与えるというのはどうでしょう?」

 オスカーの提案に頷いてから、恵里花は次の指示を出す。

 「確かに、その方が良いですね………
 では…私の持って来たワインを入れましょう」

 恵里花の指示に従って、非常用水パックからワインを、樽に入れるフェリックスだった。
 色々なモノが入った樽の中のワインを、恵里花はゆっくりと攪拌した。
 そして、オスカーにワインを配って欲しいと頼むのだった。

 恵里花のパパが家に連れて来る見目の良い青年達は、自分達は艦長(恵里花パパ)に、娘の婿候補に選ばれたと思い、当然のように傅(かしず)くので、お願いすることに慣れいるのだ。

 それが、わんこ属性の騎士達にはちょうど良いぐあいにハマッて、嬉々として恵里花の指示に従うのが当然と動く。
 そして、ソレを双方ともに気付いていなかった。

 恵里花は、自力で飲めそうに無い人用に、リュックサックから、簡単便利なエネルギーチャージのゼリー飲料パックを取り出した。 
 それを、ウェストポーチに入っていたはさみで切って、銀のコップに入れる。

 コップの縁近くになるには、もう2個ゼリー飲料が必要だった。
 それを、銀のコップに入れるとスプーンでかき混ぜてみる恵里花だった。

 〔う~ん………これ…一杯じゃ……
 死にそうな顔色の人達全員に与えるには……
 やっぱり少ないわよねぇ………

 まだ…あるから…あと…二杯分…用意しよう
 そうすれば…何人かで手分けして
 重症な人達に与えられるしね〕

 そう、恵里花はこの人ってば不味いんじゃない?と思った相手にのみゼリーをスプーンですくって食べさせる予定なのだ。

 その様子を見ていた恵里花以外の人間達の表情は、かなり引き攣っていた。
 彼らは、食べられる透明なゼリー状な存在を見たことが無かったから…………。
 彼らが見たことのある透明なゼリー状の存在とは…………。

 そう、あの有名なドラゴンクエス○というRPGを、楽しんだ人なら誰でも知っているモンスタースライムだけだったから…………。

 彼らが見ている食べられるゼリー状のモノは、茶色に染まった煮凝り(肉や魚を煮た後に冷えると出来るゼリー状のモノです。そうゼライスの原料です)だけだったから…………。

 ゼラチンというたんぱく質という意味では、同じモノなのですが、そんなコトを彼らがわかるはずもなく。

 エネルギーチャージゼリーをかき混ぜて、にっこりしている恵里花に、はっきりびびっていました。
 そう、彼らには心優しい慈愛の《聖母》いえいえ《聖女》の恵里花が、何の為にゼリーを用意したかを、不幸にもわかってしまったから………。

 それを忘れたくて神官達も魔法使い達も、もったいないなどということを言わずに、オスカー達に配られた甘味入りホットワインを静かに飲み干した。






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