私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

文字の大きさ
99 / 450
閑話

 ◆エリカのお願いは叶えられるか3◆

しおりを挟む


 アルファードにとって、まるで、時が止まって前に進んでいないかのように…………。
 そんな灰色の日々に、鮮やかな色彩(いろ)を与えてくれたのが、エリカだった。

 自分をただの美少年として扱い、下手をすると兄代わりにする。
 そんなエリカが、愛しくてたまらないアルファードだった。
 が、エリカを可愛がっている保護者は、オスカーだったりする。

 オスカーを怒らせて、あの無限ループもどきに突入するのはゴメンなので、優しい悪魔に、なんとしても許可をもらおうと思うアルファードだった。
 アルファードが、エリカのお強請りを叶えられるのかは……である。

 そんな苦悩をしているアルファードを、ひっそりと見て楽しんでいたのはオスカーだったりする。

 ハイエルフとしての《魔力》の使い方が出来るので、感覚が鋭いアルファードすら誤魔化すことが出来るのだ。
 もっとも、命の危険が無いので、アルファードの感覚に触れないでいるとも言うのだが…………。
 
 〔魔法学園ですか……ふむ…姫君は…
 この世界の理も常識も歴史も知らない

 文字だってわからない可能性がある
 だったら、学園で学ぶというのも
 選択肢のひとつですね

 その側に団長が居るなら良いでしょう
 どうせ、他の聖女候補の世話係り達も
 一緒に学園に行くでしょうから………

 私やマクルーファが付いて行けない時は
 フェリックスとジャスティーに付いて
 行ってもらえば良いでしょう〕

 オスカーは、消していた気配を露にして、アルファードの意識を自分に向けさせると、エリカに優しく笑って言う。

 「姫君、魔法学園に通いたいんですか?」

 オスカーの問い掛けに、素直なエリカはその心情のままに頷く。

 「はい、アルと一緒に通いたいんです
 ダメですか?」

 オスカーは、エリカの素直な言葉に、優しく笑って答える。
 やはり、エリカには優しいお兄ちゃんで通すらしい。

 「団長と一緒なら構いませんよ」

 了承の言葉をもらったエリカは、できれば…という感じで、聞いてみる。

 「だったら、オスカーさんも
 一緒に行きましょう……ねっみんなで」

 可愛く無自覚にお強請りするエリカに、オスカーは快諾する。

 「良いですよ
 その方が姫君を、守護しやすいですから」

 自分の希望通りの答えをオスカーからもらったエリカは、嬉しそうに言う。

 「やったぁー…アルも一緒に学校に通いましょう
 …うふふ…これで…私や聖女候補のみんなと
 ガールズトークができる

 側に居る護衛の人達はオスカーさん達に
 引き受けてもらえるし………」

 エリカの笑顔を見ながら、オスカーと嬉々として会話する側で、決定権の無いアルファードはちょっと情けない顔をしながら、側でうなだれていた。
 そんなアルファード(弟認定)の様子に、くすっと笑いながら、それでもエリカと話すオスカーはかなりの意地悪さんだった。
 やっぱり、妹に張り付こうとする虫は、排除したいらしい。

 「そうですねぇ~姫君や団長を待ってる間
 他の騎士団と親睦(苛める?からかう?
 脅す?遊ぶ?)をはかるのもイイですね」

 言葉の中に含まれるモノをその場に居る者達の中で、ただ1人感じていないエリカはにこにこする。

 「わぁ~楽しそうですね
 学園に通う時は何を着るんですか?」

 そのわくわくを隠さないまま、エリカは既に通うことが決定している前提でオスカーに聞くと。
 オスカーはサラリと答える。

 「制服がありますよ」

 それを聞いたエリカはにっこりとする。

 〔うわぁ~い…異世界なのに制服あるんだ
 いちいち、お着替えのコーディネイトを
 考えなくて済むんだぁ~……ラッキー…〕

 「嬉しいです
 こっちにも制服があるなんて」

 嬉々とするエリカに、オスカーは不思議そうに問い掛ける。

 「そうですか?
 毎日同じ物を着るのは飽きませんか?」

 皇族や貴族のお姫様達と違う反応に、オスカーはちょっと考えながら聞いたのだか…………。
 エリカは、着飾るということを好まないので、ケロッと言う。

 「いいえ、服装を考えなくてすむので
 私には楽ですね」

 そんな2人の会話に、マクルーファが乱入する。

 「貴族の女は、何かとドレスを作るぞ
 アイツラはドレスと宝石と男にしか
 興味が無いんだ

 この場合の男って、閨のことだけどね」

 サラリと禁句に近いことを口にしたマクルーファを、オスカーがたしなめるように言う。

 「マクルーファ、どうして、君は
 そう口が悪いんでしょうね

 姫君に対して与えて良い情報と
 必要ない情報があるんですよ」

 そんなオスカーに、日ごろ貸しの取立てだと言って、ポイポイと皇族や貴族の姫君達へと生贄として投げられているので、怖いもの無し状態で言葉を重ねる。
 そう、エリカの前では、自分に非道なことが出来ないと判断してのことである。
 いざとなったら、ケモ耳と尻尾を出して、エリカに懐いてやると密かに考えているマクルーファだった。

 「よく言う…貸しだって言って…
 あの肉食の獣の群れに俺をポイッと捨てて……
 団長と逃げるくせに………」

 マクルーファの中に溜まりに溜まった不満を感じて、オスカーはチラリッと2人を見てからイイ笑顔で言う。

 「判りました
 次からは、ギデオン様やレギオン様を
 エサにしましょう

 たまには新鮮なエサの方が
 良いでしょうから…………」

 そのオスカーの決定事項の言葉を聞いて、ギデオンとレギオンは身震いして言い返す。
 はっきり言って、姉姫や貴族の姫達が苦手なのだ。

 「「いや、それ違うでしょう
 僕達は、これでも皇子なんだよ
 もう少し配慮してくれても
 良いんじゃない?」」

 恐怖から、しっかりとハモッたままで言う2人に、オスカーはとても爽やかな笑顔を浮かべて、真っ黒なコトを言う。
 いや、2人にとってはお先真っ暗な話しを…………。

 「いやですねぇ~ギデオン様もレギオン様も
 皇位継承権は無いんですよ

 ただの皇族で、魔法騎士団団長の
 副官でしか無いんですよ

 ざっくり言えば、地位でマクルーファに負けて
 爵位と言う意味でも、公爵を継ぐ
 マクルーファの方が上ですよ

 それを団長の代わりの生贄にしているんです
 その代わりなんですから、評価していますよ」
 あんまりな発言、ギデオンとレギオンは手を取り合って泣きそうな表情になっていた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...