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閑話
◆エリカのお願いは叶えられるか3◆
しおりを挟むアルファードにとって、まるで、時が止まって前に進んでいないかのように…………。
そんな灰色の日々に、鮮やかな色彩(いろ)を与えてくれたのが、エリカだった。
自分をただの美少年として扱い、下手をすると兄代わりにする。
そんなエリカが、愛しくてたまらないアルファードだった。
が、エリカを可愛がっている保護者は、オスカーだったりする。
オスカーを怒らせて、あの無限ループもどきに突入するのはゴメンなので、優しい悪魔に、なんとしても許可をもらおうと思うアルファードだった。
アルファードが、エリカのお強請りを叶えられるのかは……である。
そんな苦悩をしているアルファードを、ひっそりと見て楽しんでいたのはオスカーだったりする。
ハイエルフとしての《魔力》の使い方が出来るので、感覚が鋭いアルファードすら誤魔化すことが出来るのだ。
もっとも、命の危険が無いので、アルファードの感覚に触れないでいるとも言うのだが…………。
〔魔法学園ですか……ふむ…姫君は…
この世界の理も常識も歴史も知らない
文字だってわからない可能性がある
だったら、学園で学ぶというのも
選択肢のひとつですね
その側に団長が居るなら良いでしょう
どうせ、他の聖女候補の世話係り達も
一緒に学園に行くでしょうから………
私やマクルーファが付いて行けない時は
フェリックスとジャスティーに付いて
行ってもらえば良いでしょう〕
オスカーは、消していた気配を露にして、アルファードの意識を自分に向けさせると、エリカに優しく笑って言う。
「姫君、魔法学園に通いたいんですか?」
オスカーの問い掛けに、素直なエリカはその心情のままに頷く。
「はい、アルと一緒に通いたいんです
ダメですか?」
オスカーは、エリカの素直な言葉に、優しく笑って答える。
やはり、エリカには優しいお兄ちゃんで通すらしい。
「団長と一緒なら構いませんよ」
了承の言葉をもらったエリカは、できれば…という感じで、聞いてみる。
「だったら、オスカーさんも
一緒に行きましょう……ねっみんなで」
可愛く無自覚にお強請りするエリカに、オスカーは快諾する。
「良いですよ
その方が姫君を、守護しやすいですから」
自分の希望通りの答えをオスカーからもらったエリカは、嬉しそうに言う。
「やったぁー…アルも一緒に学校に通いましょう
…うふふ…これで…私や聖女候補のみんなと
ガールズトークができる
側に居る護衛の人達はオスカーさん達に
引き受けてもらえるし………」
エリカの笑顔を見ながら、オスカーと嬉々として会話する側で、決定権の無いアルファードはちょっと情けない顔をしながら、側でうなだれていた。
そんなアルファード(弟認定)の様子に、くすっと笑いながら、それでもエリカと話すオスカーはかなりの意地悪さんだった。
やっぱり、妹に張り付こうとする虫は、排除したいらしい。
「そうですねぇ~姫君や団長を待ってる間
他の騎士団と親睦(苛める?からかう?
脅す?遊ぶ?)をはかるのもイイですね」
言葉の中に含まれるモノをその場に居る者達の中で、ただ1人感じていないエリカはにこにこする。
「わぁ~楽しそうですね
学園に通う時は何を着るんですか?」
そのわくわくを隠さないまま、エリカは既に通うことが決定している前提でオスカーに聞くと。
オスカーはサラリと答える。
「制服がありますよ」
それを聞いたエリカはにっこりとする。
〔うわぁ~い…異世界なのに制服あるんだ
いちいち、お着替えのコーディネイトを
考えなくて済むんだぁ~……ラッキー…〕
「嬉しいです
こっちにも制服があるなんて」
嬉々とするエリカに、オスカーは不思議そうに問い掛ける。
「そうですか?
毎日同じ物を着るのは飽きませんか?」
皇族や貴族のお姫様達と違う反応に、オスカーはちょっと考えながら聞いたのだか…………。
エリカは、着飾るということを好まないので、ケロッと言う。
「いいえ、服装を考えなくてすむので
私には楽ですね」
そんな2人の会話に、マクルーファが乱入する。
「貴族の女は、何かとドレスを作るぞ
アイツラはドレスと宝石と男にしか
興味が無いんだ
この場合の男って、閨のことだけどね」
サラリと禁句に近いことを口にしたマクルーファを、オスカーがたしなめるように言う。
「マクルーファ、どうして、君は
そう口が悪いんでしょうね
姫君に対して与えて良い情報と
必要ない情報があるんですよ」
そんなオスカーに、日ごろ貸しの取立てだと言って、ポイポイと皇族や貴族の姫君達へと生贄として投げられているので、怖いもの無し状態で言葉を重ねる。
そう、エリカの前では、自分に非道なことが出来ないと判断してのことである。
いざとなったら、ケモ耳と尻尾を出して、エリカに懐いてやると密かに考えているマクルーファだった。
「よく言う…貸しだって言って…
あの肉食の獣の群れに俺をポイッと捨てて……
団長と逃げるくせに………」
マクルーファの中に溜まりに溜まった不満を感じて、オスカーはチラリッと2人を見てからイイ笑顔で言う。
「判りました
次からは、ギデオン様やレギオン様を
エサにしましょう
たまには新鮮なエサの方が
良いでしょうから…………」
そのオスカーの決定事項の言葉を聞いて、ギデオンとレギオンは身震いして言い返す。
はっきり言って、姉姫や貴族の姫達が苦手なのだ。
「「いや、それ違うでしょう
僕達は、これでも皇子なんだよ
もう少し配慮してくれても
良いんじゃない?」」
恐怖から、しっかりとハモッたままで言う2人に、オスカーはとても爽やかな笑顔を浮かべて、真っ黒なコトを言う。
いや、2人にとってはお先真っ暗な話しを…………。
「いやですねぇ~ギデオン様もレギオン様も
皇位継承権は無いんですよ
ただの皇族で、魔法騎士団団長の
副官でしか無いんですよ
ざっくり言えば、地位でマクルーファに負けて
爵位と言う意味でも、公爵を継ぐ
マクルーファの方が上ですよ
それを団長の代わりの生贄にしているんです
その代わりなんですから、評価していますよ」
あんまりな発言、ギデオンとレギオンは手を取り合って泣きそうな表情になっていた。
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