私は聖女になります、性女(娼婦)にはなりません

ブラックベリィ

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第8章 エリカは聖女候補達と一緒に学校に通いたい

101★守護騎士様が決まっていません

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 オスカーの言葉に、撫子が聞く。

 「私は、中央騎士団所属だけど
 守護騎士様は、まだ、決まってません
 どういう基準で決まるか知りたいです」

 それを聞いた牡丹も、コクコク頷きながら言う。

 「私も、それを聞きたいです
 ちなみに、私は帝都騎士団所属です
 守護騎士様は、まだ、決まってません」

 2人の言葉に、オスカーは眉を顰めて残りの4人に視線を向ければ………。

 「「「「私達も、守護騎士様は
 まだ、決まってません」」」」

 流石のマクルーファも、オスカー同様に眉を顰めて言う。

 「あいつら、何やっているんだ? 本当に
 俺達が魔の森から湧き出る魔物討伐の間
 聖女候補の《召還》したんなら…………

 護衛の為の守護騎士の1人も専属で
 付けるもんだろうに………はぁ~……」

 「本当そうですね…まったく……
 随分と弛んでいるようですから………

 ここは、各騎士団の団長と副団長に
 隊長達を交互にこちらに派遣させて
 ぎっちりとしごいた方が良さそうですね」

 頷きあう魔法騎士団の副隊長2人に、聖女候補6人は何を言って言いかわからずに黙り込む。
 が、そういう意味では、パパとお兄ちゃんとその部下達にひたすら甘やかされていたエリカは、そういう雰囲気にも慣れているので、ケロッと言う。

 「それで、聖女候補として《召還》された
 みんなの守護騎士様って、どうやって
 決めるの? 資格とかあるの?」

 エリカの質問に、オスカーが微妙な表情になる。

 「先ほど言いました通り、聖女の子は
 その高い《魔力》を確実に継承するので
 基本的には、皇子が付くことになって
 いるんですがねぇ…………」

 「どうかしたの?」

 「はっきり言って、実力が足りません」

 端的なだけに、その言葉には重みがあった。

 「そうなんだぁ……」

 「はい……と、いうところで、姫君……
 まことにすみませんが、深遠まで落ち込んだ
 アルファード団長を、姫君の口付けで優しく
 起こしていただけませんか?」

 オスカーのお願い?に、エリカはコクッと頷いて、自分を抱き込むアルファードに向き直り、両腕で抱きつくようにして、その頬に口付けながら言う。

 「アルぅ~…起きてぇ~…ねぇ~起きてぇ~
 エリカお願いがあるのぉ~…………」

 エリカは、パパやお兄ちゃんにお強請りがある時にやるように、そう言ってアルファードにお強請りをする。
 そういう行為が、かなりきわどいということの認識が皆無なエリカは、自分のお願いを聞いてもらう為に、平気でやるのだ。

 そして、どっぷりと落ち込んだアルファードは、極寒の真夜中のような心境に、春の柔らかい陽射しで呼ばれて、あっさりと浮上する。

 「お願い? エリカのお願いは何かな?」

 その姿を見たオスカーを含めた魔法騎士団の騎士達は、内心でにっこりしていた。

 〔何時も、迷宮の奥深くに落ち込むと
 3日は浮上しないのに…流石、姫君〕

 途端に、部屋どころか空間全てが重々しかった空気が軽く爽やかになる。
 それで、聖女候補達も、アルファードの《魔力》の圧力を感じていたことを自覚する。
 そして、現実逃避がしたい聖女候補達は別の話しへと向かう。

 「ねぇーねぇー…今のってさぁ……」

 桔梗が口を開けば、同じ感想を持った蘭が言う。

 「ほら死神マンガのぉ…………」

 「うんうん…〈霊圧〉でしょう……
 きっと、こんな感じなんだ……」

 「でも《魔力》だから《魔圧》?かな?」

 「いいんじゃない《魔圧》で、他に適当な
 言葉がないんだから……」

 エリカも、お兄ちゃんが好きなマンガだったので、その死神マンガを呼んでいたので、話題にきちんと乗る。

 「アルの《魔圧》って、かなり重いねぇ……」

 そうエリカが言えば、百合が笑って言う。

 「美少年だし、色が色だから
 シロちゃんね」

 そのセリフに、聖女候補はみんなでうんうんと頷く。
 勿論、ガールズトークがしたかったエリカは嬉しそうに笑う。

 〔これよ、これ…エリカだって…こういうの
 ずっとしたいって思っていたんだもん……

 でも、確かにアルの色だとシロちゃんだ
 瞳の色は違うけど…なんかすっごく嬉しい〕

 意味不明ではあるが、自分の腕の中でエリカが笑っていてくれるので、アルファードも無意識に微笑みを浮かべる。
 その優しい微笑みを見た瞬間、エリカを除く聖女候補6人は、内心で思いっきり握りこぶしをして、キャーっと叫んでいたのは確かな事実だった。

 そして、視線だけで…………。

 『エリカちゃんは、ヒナちゃんよね』

 と、勝手に決め付けていた。
 そう、妙なところで行動力があるという意味で…………。

 そんなどこか妖しい雰囲気が流れる中、アルファードはオスカーを見て言う。

 「落ち込んだ俺を呼び戻したってことは
 何かあったのか、オスカー?」

 アルファードの言葉に、肩を竦めて頷く。

 「はい、重大なことが判りましたので……」

 「なんだ?」

 「ウチ以外は、聖女候補に付ける守護騎士が
 まるっきり決まっていないようです」

 ソレを聞いた瞬間、再び《魔圧》が放たれて、空間そのものがズシッと重くなる。
 ソレに気付いたエリカが、アルファードに言う。

 「アル、重くて苦しいからソレ止めて……
 で、みんなの守護騎士様が決まってないなら
 アルが決めちゃえば?」

 勝手なことを言うエリカに、オスカーとマクルーファを除いた、室内にいる騎士達は肩を揺らす。
 そう、バランスがあるので、聖女候補全員を魔法騎士団の所属に出来ないという思いがあるのだ。

 が、異世界から《召還》されたエリカにしたら、頼りない者が守護騎士に付くくらいなら、魔法騎士団の騎士達の方が安心だという思いがあるのだ。
 勿論、それを言われた聖女候補も、この部屋に…というか、魔法騎士団の本部に入った途端に、そういう嫌なモノを一切感じなくなっていたので、その言葉には同意できた。

 




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