異世界召喚に巻き込まれました

ブラックベリィ

文字の大きさ
12 / 140

012★どうやら、馬車はお城に着くようです

しおりを挟む


 その優しい声に、起きても大丈夫かなぁ~………と思って、逃避した妄想の海からゆっくり浮上してきた私に………。

 「起きないと、キスするぞ」

 ハルト君の恐ろしい言葉に、私は思考の海から完全に浮上した。
 そして、ジーク君の膝にのっている恥ずかしさをごまかす為に、閉じていた瞼をゆっくりと開けてちょっとかすれた声で言う。

 「私、眠っていたの?」

 「「ああ、くーくー眠っていた」」

 私の質問に、2人はイイ笑顔で答えてくれた。
 そして、私は、自分が何処にいるかを改めて自覚して、真っ赤になってしまう。

 「ごめんね。重かったでしょう。今度からは、すぐに起こしてね。でも、眠ったお陰ですっきしたわ。ありがとうジーク君」

 もごもごと謝罪とお礼を言ってから、気を取り直して、私はジーク君の膝から慌てて降りようとする。
 そんな私に、ジーク君はシスコンと〔おかん〕をミックスした性格?を、隠す気が無いのか?ゲロっと出して言う。

 「どういたしまして……って、そんなに慌てて降りようとしないで良いよ。僕がそっと降ろすからさ。アリアの勢いそのままで降りたら、転ぶの確実だからねっ、ちょっとおとなしくしていて」

 「…@*…××…@**?…」

 そう言うとわたわたして何も言えない私を、1回ぎゅっと抱き込んでそのまま立ち上がり、クッションの山にそっと降ろしてくれた。

 まだ、揺れている馬車の中で、私という荷物を持ったまますっと立ち上がり微動だにしないって、流石は弓の王子様だなぁ~なんて思ってしまう………。
 いや、思いっきりの逃避です、はい。

 そんな私の隣にジーク君が座って、私の腰に手を回してきた。
 たぶんに私を支える為だってわかっても、オタク友達意外とはコミュ障なので、どうしたらよいかわからなくなりじたばたしてしまう。

 そして、メンタルが弱い私は、意識が再び現実逃避を始めてしまう。
 そんな私にお構いなく時間は過ぎて、ジーク君の隣りに座って、いくらかすると馬車が止まった。

 そして、馬車の扉は、軽く3回ほど叩かれた。
 どうやら、扉を開ける合図のようだ。
 
 その時に、私は、あることに気が付いた。
 だって、馬車が止まったと同時に、ハルト君が立ち上がったのだ。
 そして、扉のすぐ脇に立って、外を警戒し始めた。

 そう、ハルト君は、空手の王子様と謳われていたから………。
 彼は、武器を持っていなくても戦える………。
 っていうか、それが彼の戦闘スタイル。

 私を守る為に、接近戦を得意とするハルト君が、身軽に戦えるようにってコトで、弓を持っていないジーク君が、抱っこしてくれていたんだって………それでわかった。
 そんなピリピリした雰囲気の中、扉の外から声が掛けられた。

 「城に着きましたので、速やかに馬車より降りてください」

 その声は、馬車に乗る時に、どれに乗るかを教えてくれた神官様の声だった。
 詰めていた息を吐き出して、ハルト君が扉を開けてするりと降りた。
 ジーク君は、それでも動かない。
 どうしてって思っていると、ハルト君の声がする。

 「ジーク、アリアを起こして、荷物と一緒に降りて来いよ」

 私達は、放課後に出会ったので、全員制服姿だった。
 ついでに、学校指定のリュックを背負っていた。
 今日は、体育(2こま)があったから、教科書やテキストが少なかった。

 そこで、放課後に買い物をする予定だった私は、リュックにジャージの上下と、タオルと半袖の体操着や着替えを入れていたりする。
 洗濯しなきゃいけないけど、着替えがあると思うとほっとした。

 それに、朝に結構な雨が降っていたから、撥水機能のついた学校指定のフードつきコートを着ていたし、登校時に履いていたレインブーツは専用の袋に入れてリュックに入れていたし、傘はリュックのサイドに入れてあった。

 今、履いているのは、学校指定のローファーだった。
 こっちで雨が降った時に、コートも傘もレインブーツも役に立つだろうなぁ~と思ったのは確かだ。 






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...