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012★どうやら、馬車はお城に着くようです
しおりを挟むその優しい声に、起きても大丈夫かなぁ~………と思って、逃避した妄想の海からゆっくり浮上してきた私に………。
「起きないと、キスするぞ」
ハルト君の恐ろしい言葉に、私は思考の海から完全に浮上した。
そして、ジーク君の膝にのっている恥ずかしさをごまかす為に、閉じていた瞼をゆっくりと開けてちょっとかすれた声で言う。
「私、眠っていたの?」
「「ああ、くーくー眠っていた」」
私の質問に、2人はイイ笑顔で答えてくれた。
そして、私は、自分が何処にいるかを改めて自覚して、真っ赤になってしまう。
「ごめんね。重かったでしょう。今度からは、すぐに起こしてね。でも、眠ったお陰ですっきしたわ。ありがとうジーク君」
もごもごと謝罪とお礼を言ってから、気を取り直して、私はジーク君の膝から慌てて降りようとする。
そんな私に、ジーク君はシスコンと〔おかん〕をミックスした性格?を、隠す気が無いのか?ゲロっと出して言う。
「どういたしまして……って、そんなに慌てて降りようとしないで良いよ。僕がそっと降ろすからさ。アリアの勢いそのままで降りたら、転ぶの確実だからねっ、ちょっとおとなしくしていて」
「…@*…××…@**?…」
そう言うとわたわたして何も言えない私を、1回ぎゅっと抱き込んでそのまま立ち上がり、クッションの山にそっと降ろしてくれた。
まだ、揺れている馬車の中で、私という荷物を持ったまますっと立ち上がり微動だにしないって、流石は弓の王子様だなぁ~なんて思ってしまう………。
いや、思いっきりの逃避です、はい。
そんな私の隣にジーク君が座って、私の腰に手を回してきた。
たぶんに私を支える為だってわかっても、オタク友達意外とはコミュ障なので、どうしたらよいかわからなくなりじたばたしてしまう。
そして、メンタルが弱い私は、意識が再び現実逃避を始めてしまう。
そんな私にお構いなく時間は過ぎて、ジーク君の隣りに座って、いくらかすると馬車が止まった。
そして、馬車の扉は、軽く3回ほど叩かれた。
どうやら、扉を開ける合図のようだ。
その時に、私は、あることに気が付いた。
だって、馬車が止まったと同時に、ハルト君が立ち上がったのだ。
そして、扉のすぐ脇に立って、外を警戒し始めた。
そう、ハルト君は、空手の王子様と謳われていたから………。
彼は、武器を持っていなくても戦える………。
っていうか、それが彼の戦闘スタイル。
私を守る為に、接近戦を得意とするハルト君が、身軽に戦えるようにってコトで、弓を持っていないジーク君が、抱っこしてくれていたんだって………それでわかった。
そんなピリピリした雰囲気の中、扉の外から声が掛けられた。
「城に着きましたので、速やかに馬車より降りてください」
その声は、馬車に乗る時に、どれに乗るかを教えてくれた神官様の声だった。
詰めていた息を吐き出して、ハルト君が扉を開けてするりと降りた。
ジーク君は、それでも動かない。
どうしてって思っていると、ハルト君の声がする。
「ジーク、アリアを起こして、荷物と一緒に降りて来いよ」
私達は、放課後に出会ったので、全員制服姿だった。
ついでに、学校指定のリュックを背負っていた。
今日は、体育(2こま)があったから、教科書やテキストが少なかった。
そこで、放課後に買い物をする予定だった私は、リュックにジャージの上下と、タオルと半袖の体操着や着替えを入れていたりする。
洗濯しなきゃいけないけど、着替えがあると思うとほっとした。
それに、朝に結構な雨が降っていたから、撥水機能のついた学校指定のフードつきコートを着ていたし、登校時に履いていたレインブーツは専用の袋に入れてリュックに入れていたし、傘はリュックのサイドに入れてあった。
今、履いているのは、学校指定のローファーだった。
こっちで雨が降った時に、コートも傘もレインブーツも役に立つだろうなぁ~と思ったのは確かだ。
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