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027★12公侯家面々side7
しおりを挟むだが、しかし、ちょっとの自己満足の償いになるモノを、幼馴染みの侍従に手渡して、ほっこりとしているひまは無かった。
なぜなら、事態(生贄のセシリア姫が逃げている)に気付いた神官戦士達が、ワラワラとあちらこちらから現れたからだ。
私は、慌てて騎士達に神官戦士達の行動を阻害し、誓約の神殿外まで守護せよと命令を変え、指示を飛ばす。
生贄の誓約を行なう神殿の警護をする騎士達は、代々王都騎士団が担っているので、神官戦士達とは、仲がとてつもなく悪かったりする。
そのお陰で、騎士達は嬉々として、セシリア姫を捕らえようとする神官戦士達の邪魔に励みに行く。
その始まった攻防に、私はホッとする。
神官達について回る神官戦士達は、ろくに魔物討伐なんてコトをしない為、我が王都騎士団の騎士達に比べて貧弱で胆力も無い。
その上で、神官に成れなかった者達が就く職なので、神霊術を発動するのに、どうしても足を止めてしまうのだ。
我が王都騎士団の騎士達や辺境の騎士団達は、動き回りながら魔術を放つコトが出来るので、神官戦士達に負けるコトは万にひとつもない。
そんな中で、宮廷魔術師長の三男ファイが、場所をわきまえずに、魔術を使おうと呪文を唱え始めて、私は慌てる。
もちろん、それに気付いた貴族達は顔色を変えて、我さきにとその同線上から逃れようとわたわたする。
がしかし、事態は思わぬ者の手で打たれる。
ラインダ侯爵家長男ネスドが、手じかにいたキアラとアンリを殴り倒し、無防備に背を見せるファイを殴り倒していた。
そんな、大事になる直前を力ずくで止めたネスドに、第1王子は叱責をする。
「何をしている、ネスド
キアラ、アンリ、ファイを
何でお前がなぐるんだっ
あの性悪な、セシリアが
逃げてしまうではないかっ」
その立場も場所もわきまえない言葉に、私は暗澹たる思いを味わう。
いや、我ら12公侯家以外の下級貴族にいたる大半が、己の自己満足の為だけに、このような場所で魔術を使おうとするコトを止めたネスドを褒めるどころか、叱責するとは‥‥‥。
(はぁ~‥‥‥地位剥奪の上
国外追放を命じたコトも
忘れているのか?
本当に、お花畑だな
ここまで使えないとは‥‥‥)
あのゴミクズ夫婦を除く、12公侯家の面々はせつなさに、それぞれ溜息を吐いて思った。
これでは、第2王子も似たようなモノだろうなぁ‥‥‥と。
先代王は、本当に賢王と呼ぶに相応しい方だったのに‥‥‥と。
帝国などの大国とも同等以上に渡りあい、我が国の地位を上げた、本当に賢王だった。
王妃となった、我らの12公侯家の姫を大切に愛しみ、毎日のように魔力を注ぎ、王妃が人間としての意識を保てるようにしてくれた。
また、2人の側室と王妃を仲たがいさせず。
王子を2人、姫を2人と生ませた。
その上で、姫も王子も我ら12公侯家に、きちんと降ろして下さった。 現王同腹の王子は、男子が生まれなかった下位の侯爵家に婿として降りたが‥‥‥。
(現国王は、我が子可愛さに
我ら12公侯家に降下させず
第1王子の双子の
片割れである姫を
2つも下と年を偽り
生贄の義務を負わぬ
男爵家に、無理やり
突っ込んでいようとは
流石に、思わなかったわ)
そんな中で、ネスドがはっきりと第1王子に、換言する声が響く。
「ヒューズ殿下
ここは、誓約の神殿です
ファイは、場所もわきまえず
魔術を放とうとしました
現在、この神殿には
12公侯家の方々を含む
おもだった貴族達の当主
当主夫人、次期当主候補が
いらしてます
こんな、大勢の視線が
あるようなところで
淑女に、暴行に及べば
未来はありません」
ネスドの換言によって、セシリア姫への言われない憤りに燃えていた第1王子は、ようやっと私達12公侯家や、危うくファイが放つ魔術の犠牲になりかけた貴族達の冷たい視線に気付いたようだった。
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