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離したくない③
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剛の瞳が、私の身体を隅々まで見詰めている。
腕を掴むその掌は熱く、強く、がんじがらめにして私の自由を奪い、彼の逞しい首が時折ゴクリと音を立てて、ズボンの中で恐らく猛っている彼自身
が、その存在を主張するように布を押し上げているのがわかる。
私を求めて、大きく反り返っているのだろうか?
布の上からでも分かるその大きさに、私は蕾の中が潤い溢れるのを止められない。
もし、このまま彼に貫かれてしまったら――
もう、二度と彼を息子、等と呼ぶことも、思うことも出来ない……
いや、最初から私は彼に恋していた。
淡い憧れは、やがて狂おしい恋慕に変わり、彼が成長するにつれ、私はいつかこうされる事を何処かで望んでいた……
恋しい人に、好きと告げられ、抱き締められて求められ、身も心も踊らない女が居るのだろうか?
何度も何度も、彼に気持ちをぶつけられ、その度に溺れてしまいそうになる自分を押し殺し、遣り過ごしてきた。
彼の気紛れかもしれない、一時の熱情に過ぎない――このまま、他の女の子に目を向けて、忘れてくれれば……
そう思っていた。
でも、毎日家で彼を見るたびに、どうしようもなく踊ってしまう心が、高鳴る胸が、私に叫ぶのだ。
――忘れる事など出来るわけがない――
――剛の求めるままに、堕ちてしまえ――
悟志に抱かれながら剛の澄んだ瞳を思い、彼にされた口付けを甦らせ身体を熱くして、悟志に
「もっと烈しくして」
とせがみ、突き上げられながら心の中で剛の名前を呼んでいた。
もう、既に私は悟志を裏切っているのと同じではないだろうか?
彼に何度となく触れられて、唇を交わして、愛を囁かれ、瞳を濡らしながら身体を疼かせているのだから……
「菊野さん……どうか、答えてください」
情欲の中に切なさを滲ませた瞳で、大好きなその低い声で尋ねられ、自分の想いを口走りそうになる。
誰よりも、貴方が好き――
愛しています――
と。
――どう思っているか、だなんて、一言で言えるわけがないじゃない……。
涼しげな、その切れ長の目元は、祐樹と瓜二つなようでいて全く違う。
悪戯を企んでいるような煌めきが、祐樹の瞳には常に宿っているが、剛の瞳は……
何処か寂しい。
何かを諦めてしまった色が沈んでいて、それがふと、強く輝く瞬間がある。
それが何なのか、私には分からない――
けれど、今、彼の瞳は確かに私を捉えて輝きを放っている。
眩しくて、ときめいてしまって、直視出来ないのに、貴方は私の頬をその手で包んで真っ直ぐに見詰めてくる。
そして、その声で聞くのね……
私が、貴方を好きかどうか、答えろって?
今直ぐに?
こんなに、私が胸を苦しいくらい鳴らして、貴方の前で限り無く裸に近い姿になって、恥ずかしいのに……
今、こうして貴方に見詰められているだけで、限界なのに……
剛が唇を噛み、俯いてから再び私を見詰め、そして苦し気に顔を歪めて天井を仰ぐ。
「……なんとか、言ってください……」
「……っ」
「何も言わないのに、そんな目で見詰められると……
気がおかしくなりそうです……」
剛は、真っ直ぐな前髪を指でかき乱し、切なげに長い溜め息を吐いた。
私は、彼の拘束から解放された腕で身体を隠す。
剛がそんな私を見て低く笑い、あっという間に腕をほどき、乳房の間に顔を埋めた。
「……あっ……ダメ」
「何も言ってくれないなら、犯します。今から……滅茶苦茶に……」
剛は、円を描くように双丘を揉みながら、突起を口に含み、転がし始めた。
甘い強烈な刺激が、電流となって私の中を駆け抜けた。
「ああっ……やあ――っ」
剛の荒い呼吸が肌に当たり、その熱さと、彼の長くしなやかな指が与える巧みな愛撫に正気を失って行く。
「やだっ……お願いっ……おかしくなっちゃっ……」
思わず叫んでしまうが、剛も私の胸の中で苦し気に呻いた。
「俺は……もうとっくにおかしい……
貴女を見ているだけで、身体中が熱くなってしまうんです……」
彼は、猛った下半身を再び私の窪みに押し付けた。
じゅくり、と蜜が滴り溢れる。
「や……やめて」
「止められない……
もう、遅いんです……
貴女を欲しすぎて、後戻り出来ない――っ」
剛の手が、ショーツを掴んだ。
「っ……ダメっ……ダメ!」
「力を抜いて下さい……これじゃあ、脱がせません」
「だから……ダメ!」
「ダメでも何でも……
貴女を抱きます」
「やあっ……」
脚を懸命に動かし、腰を捩って抵抗してみるが、本気になった剛の力に敵う筈もない。
彼は、私の腰を強く掴むと上半身で脚を押さえ付け、口にショーツの布を含み一気に引き裂いた。
「いやあ――っ……」
辛うじて、秘部を隠してはいるが、彼の指が伸びて、今にも取り去ろうとしていた。
「もう……諦めて下さい……」
「……やあっ……ダメ……」
「泣いてもダメですよ……」
イヤ、と言いながら、私の中は滴りが太股に伝ってしまいそうな程に潤って居るのだ。
剛にそれを知られたら、どうしよう……
恥ずかしくて、もう彼の顔を二度と見れない気がする。
そんな事を言ったところで、同じ家で顔を合わすのに……
頬は益々熱を持ち、涙は次から次へと溢れ、喉の奥から嗚咽が込み上げて、まともに喋る事も困難だった。
「……よし……さ……っ…………て……い」
剛は、小さな布で隠された秘所の周囲を、触れるか触れないか、という際どい手付きで撫で回しながら呻いた。
「……だから……そんな顔をしないで下さい……
無理矢理にでも、どうにかしたくて堪らないのに……出来なくなる……っ」
剛の表情は、困ったようにも、苦しそうにも、泣きそうにも見えた。
しゃくりあげ、咳き込みながら何とか話そうとする私を見て、深く長い溜め息を吐くと、物凄い力で抱き締めてきた。
目の前の彼の喉仏が上下するのを見ながら、私は呼吸を整えようとするが、剛に唇を塞がれて苦しさに彼の胸を叩いた。
唇を離すと、強く抱き締めたままで呟く。
「俺を……軽蔑して下さい……
罵ってもいい……
そうしてくれれば、容赦なく、貴女を犯すことが出来るのに……っ」
「く……くるしっ……」
「――すいません」
剛は腕の力を弱め、私を見るが、その瞳にはまだ獣が宿っている。
彼の鋭い視線は、私の唇、胸元、そして腹部へと移動して、視線だけでなく長い指が乳房をまさぐり始めた。
「んっ……やっ」
「もう、本当に……観念して下さい……っ」
硬くなった突起に口付けられ、泣きじゃくりながらも我慢できずに啼いてしまう。
「ああっ……あ」
「……ここがこうなると……
いい……証拠ですよね……」
剛の目がぎらり、と光り、更に巧みに刺激を加えてくる。
私は、彼の頭と髪を掴み、仰け反って悶えた。
「ダメ……それはダメ……っ……剛さ……許し……って……」
「許してあげたいですが……
無理です」
「――!」
「俺を、こんな風にした責任を、菊野さんに取って貰います……
その身体で……」
剛は、言うが否や、私の両の太股を掴み左右に拡げた。
「きゃっ……イヤ……ダメ……!」
引き裂かれたショーツが、今どんな状態なのか分からない私は、恥ずかしさから必死に脚を閉じようとしたが、剛はそんな私の抵抗を小さな笑い一つで跳ね返した。
彼の涼やかな笑みに撃ち抜かれ、身体に力が入らなくなってしまう。
呻くように、苦し気に顔をゆがめていたのに、それが嘘のようにこんな笑顔をするなんて――
私の胸の中に、ある疑問と嫉妬が沸くと、彼に確かめずにいられなくなった。
「剛さ……ん……教え……て……ああっ」
太股を掴んだまま顔を埋めようとする彼の髪が肌に触れただけで、私は大きく震えた。
剛はクスリと笑い、脚の付け根の際どい場所へキスする。
「あああっ……ダメ……っ」
「菊野さんは……いつもそうだ……
ダメって言いながら、俺に触らせる……
俺の方がいつも、泣く貴女に負けて……
最後までするのを止めてしまうんだ……」
「剛さ……ん……教え……て………?」
彼の目を見詰めるが、ぼやけてしまい、表情が分からない。
剛の大きな溜め息が聞こえてから、諦め気味な彼の優しい囁きが耳を擽った。
「ほらまた……そんな顔をして……
生殺しもいいところですよね……
何ですか……俺に、何を聞きたいですか……?」
言い方は優しいが、太股を掴む手を彼は離してくれなかった。
――ちゃんと、布で隠れているのだろうか?
もし見えてしまっていたら、とても恥ずかしい……
だって、自分でも分かる程に濡れてしまっている……
こんなの、剛さんに見られたら……――
思わず目を瞑りながら、彼に聞く。
「剛さんは……他の……
だ、誰かと……こういう事をした事が……ある……の?」
「――」
彼が息を呑む気配がする。
私は、目を開けられないまま続けた。
「……だって……
キスも……脱がすのも……さ……触るのも……
そんなに慣れて……っ!
余裕みたいに笑うし……っ……
き……清崎……さんと……本当……は……し、したんじゃないの……?」
最後の方は涙声になってしまい、私はまたしゃくりあげてしまう。
涙を掌で拭い瞼を開けると、目の前の剛は、鮮やかに頬を染めて私を見詰めていた。
「剛さ……ん?」
びっくりする私を彼は突然抱き締めて、頬と唇、額にキスをしてから、首筋にも口付けの雨を降らせた。
「や……っ……剛さんっ……擽った……い」
「――菊野さん……それは……妬いてくれているんですか……?」
彼は、乳房に顔を埋めたまま、呟いた。
「――!」
「俺が、他の女性と経験があるのか……心配なんですか?」
「……っ」
取り繕う為の言い訳を考える間を彼は与えない。
私の手を優しく取り、王子様のように恭しくキスをして言った。
「おれは……菊野さんが初恋です……
抱き締めて、肌に触れるのも……貴女が初めてです……
俺は……貴女しか、欲しくありません」
触れられた手が熱を持って、身体じゅうに回り、頬処か、目の奥までが焼けるようだった。
剛の真剣な告白――
小説やドラマにしたら、陳腐な安い台詞なのかもしれない……
けれど、恋い焦がれている貴方が口にすると、それはまるで魔法のように私の全てを溶かしていく。
自分を塞き止めていた壁が、跡形もなく崩れ去る。
彼の言葉が、嬉しくて仕方がない。
私のことを、初恋だって――
触れたいのは、私だけだって――
貴方が、言ったの?
今、私に……?
彼を今見詰めるこの目は、どんな色をしているだろうか。
きっと、恋する想いが溢れてしまっているに違いない。
隠さなくてはいけない、と自分を縛ってきたのに……
もう、無理かもしれない。
もう、止められないかも知れない……
剛は、手を取ったまま、狂おしく輝く瞳で私を捉えて離さない。
逸らせない私の目から、熱い涙が溢れ、唇も震える。
――好き……好き……貴方が……
剛の目が、大きく見開かれた。
「菊野さん……今、なんて……?」
「……っ!?」
今、私は、口に出してしまったのだろうか?
剛のぎらついていた瞳はいつしか優しい光を帯びて、潤んでいた。
頬は小さな子供のように薔薇色に染まり、唇は笑うように端が上がる。
「……ち……違っ」
弁解しようとしても、彼にきつく抱き締められ、その腕が震えるのを見た私は、もう何も言えなくなる。
肩先に顔を埋め、剛は私の髪をかき抱きながら呟いた。
「菊野さん……っ……
本当に……俺を……?」
「っ……!」
心臓が、大きく跳ねて暴れだした。
――言ってしまった……
とうとう、私は……
腕を掴むその掌は熱く、強く、がんじがらめにして私の自由を奪い、彼の逞しい首が時折ゴクリと音を立てて、ズボンの中で恐らく猛っている彼自身
が、その存在を主張するように布を押し上げているのがわかる。
私を求めて、大きく反り返っているのだろうか?
布の上からでも分かるその大きさに、私は蕾の中が潤い溢れるのを止められない。
もし、このまま彼に貫かれてしまったら――
もう、二度と彼を息子、等と呼ぶことも、思うことも出来ない……
いや、最初から私は彼に恋していた。
淡い憧れは、やがて狂おしい恋慕に変わり、彼が成長するにつれ、私はいつかこうされる事を何処かで望んでいた……
恋しい人に、好きと告げられ、抱き締められて求められ、身も心も踊らない女が居るのだろうか?
何度も何度も、彼に気持ちをぶつけられ、その度に溺れてしまいそうになる自分を押し殺し、遣り過ごしてきた。
彼の気紛れかもしれない、一時の熱情に過ぎない――このまま、他の女の子に目を向けて、忘れてくれれば……
そう思っていた。
でも、毎日家で彼を見るたびに、どうしようもなく踊ってしまう心が、高鳴る胸が、私に叫ぶのだ。
――忘れる事など出来るわけがない――
――剛の求めるままに、堕ちてしまえ――
悟志に抱かれながら剛の澄んだ瞳を思い、彼にされた口付けを甦らせ身体を熱くして、悟志に
「もっと烈しくして」
とせがみ、突き上げられながら心の中で剛の名前を呼んでいた。
もう、既に私は悟志を裏切っているのと同じではないだろうか?
彼に何度となく触れられて、唇を交わして、愛を囁かれ、瞳を濡らしながら身体を疼かせているのだから……
「菊野さん……どうか、答えてください」
情欲の中に切なさを滲ませた瞳で、大好きなその低い声で尋ねられ、自分の想いを口走りそうになる。
誰よりも、貴方が好き――
愛しています――
と。
――どう思っているか、だなんて、一言で言えるわけがないじゃない……。
涼しげな、その切れ長の目元は、祐樹と瓜二つなようでいて全く違う。
悪戯を企んでいるような煌めきが、祐樹の瞳には常に宿っているが、剛の瞳は……
何処か寂しい。
何かを諦めてしまった色が沈んでいて、それがふと、強く輝く瞬間がある。
それが何なのか、私には分からない――
けれど、今、彼の瞳は確かに私を捉えて輝きを放っている。
眩しくて、ときめいてしまって、直視出来ないのに、貴方は私の頬をその手で包んで真っ直ぐに見詰めてくる。
そして、その声で聞くのね……
私が、貴方を好きかどうか、答えろって?
今直ぐに?
こんなに、私が胸を苦しいくらい鳴らして、貴方の前で限り無く裸に近い姿になって、恥ずかしいのに……
今、こうして貴方に見詰められているだけで、限界なのに……
剛が唇を噛み、俯いてから再び私を見詰め、そして苦し気に顔を歪めて天井を仰ぐ。
「……なんとか、言ってください……」
「……っ」
「何も言わないのに、そんな目で見詰められると……
気がおかしくなりそうです……」
剛は、真っ直ぐな前髪を指でかき乱し、切なげに長い溜め息を吐いた。
私は、彼の拘束から解放された腕で身体を隠す。
剛がそんな私を見て低く笑い、あっという間に腕をほどき、乳房の間に顔を埋めた。
「……あっ……ダメ」
「何も言ってくれないなら、犯します。今から……滅茶苦茶に……」
剛は、円を描くように双丘を揉みながら、突起を口に含み、転がし始めた。
甘い強烈な刺激が、電流となって私の中を駆け抜けた。
「ああっ……やあ――っ」
剛の荒い呼吸が肌に当たり、その熱さと、彼の長くしなやかな指が与える巧みな愛撫に正気を失って行く。
「やだっ……お願いっ……おかしくなっちゃっ……」
思わず叫んでしまうが、剛も私の胸の中で苦し気に呻いた。
「俺は……もうとっくにおかしい……
貴女を見ているだけで、身体中が熱くなってしまうんです……」
彼は、猛った下半身を再び私の窪みに押し付けた。
じゅくり、と蜜が滴り溢れる。
「や……やめて」
「止められない……
もう、遅いんです……
貴女を欲しすぎて、後戻り出来ない――っ」
剛の手が、ショーツを掴んだ。
「っ……ダメっ……ダメ!」
「力を抜いて下さい……これじゃあ、脱がせません」
「だから……ダメ!」
「ダメでも何でも……
貴女を抱きます」
「やあっ……」
脚を懸命に動かし、腰を捩って抵抗してみるが、本気になった剛の力に敵う筈もない。
彼は、私の腰を強く掴むと上半身で脚を押さえ付け、口にショーツの布を含み一気に引き裂いた。
「いやあ――っ……」
辛うじて、秘部を隠してはいるが、彼の指が伸びて、今にも取り去ろうとしていた。
「もう……諦めて下さい……」
「……やあっ……ダメ……」
「泣いてもダメですよ……」
イヤ、と言いながら、私の中は滴りが太股に伝ってしまいそうな程に潤って居るのだ。
剛にそれを知られたら、どうしよう……
恥ずかしくて、もう彼の顔を二度と見れない気がする。
そんな事を言ったところで、同じ家で顔を合わすのに……
頬は益々熱を持ち、涙は次から次へと溢れ、喉の奥から嗚咽が込み上げて、まともに喋る事も困難だった。
「……よし……さ……っ…………て……い」
剛は、小さな布で隠された秘所の周囲を、触れるか触れないか、という際どい手付きで撫で回しながら呻いた。
「……だから……そんな顔をしないで下さい……
無理矢理にでも、どうにかしたくて堪らないのに……出来なくなる……っ」
剛の表情は、困ったようにも、苦しそうにも、泣きそうにも見えた。
しゃくりあげ、咳き込みながら何とか話そうとする私を見て、深く長い溜め息を吐くと、物凄い力で抱き締めてきた。
目の前の彼の喉仏が上下するのを見ながら、私は呼吸を整えようとするが、剛に唇を塞がれて苦しさに彼の胸を叩いた。
唇を離すと、強く抱き締めたままで呟く。
「俺を……軽蔑して下さい……
罵ってもいい……
そうしてくれれば、容赦なく、貴女を犯すことが出来るのに……っ」
「く……くるしっ……」
「――すいません」
剛は腕の力を弱め、私を見るが、その瞳にはまだ獣が宿っている。
彼の鋭い視線は、私の唇、胸元、そして腹部へと移動して、視線だけでなく長い指が乳房をまさぐり始めた。
「んっ……やっ」
「もう、本当に……観念して下さい……っ」
硬くなった突起に口付けられ、泣きじゃくりながらも我慢できずに啼いてしまう。
「ああっ……あ」
「……ここがこうなると……
いい……証拠ですよね……」
剛の目がぎらり、と光り、更に巧みに刺激を加えてくる。
私は、彼の頭と髪を掴み、仰け反って悶えた。
「ダメ……それはダメ……っ……剛さ……許し……って……」
「許してあげたいですが……
無理です」
「――!」
「俺を、こんな風にした責任を、菊野さんに取って貰います……
その身体で……」
剛は、言うが否や、私の両の太股を掴み左右に拡げた。
「きゃっ……イヤ……ダメ……!」
引き裂かれたショーツが、今どんな状態なのか分からない私は、恥ずかしさから必死に脚を閉じようとしたが、剛はそんな私の抵抗を小さな笑い一つで跳ね返した。
彼の涼やかな笑みに撃ち抜かれ、身体に力が入らなくなってしまう。
呻くように、苦し気に顔をゆがめていたのに、それが嘘のようにこんな笑顔をするなんて――
私の胸の中に、ある疑問と嫉妬が沸くと、彼に確かめずにいられなくなった。
「剛さ……ん……教え……て……ああっ」
太股を掴んだまま顔を埋めようとする彼の髪が肌に触れただけで、私は大きく震えた。
剛はクスリと笑い、脚の付け根の際どい場所へキスする。
「あああっ……ダメ……っ」
「菊野さんは……いつもそうだ……
ダメって言いながら、俺に触らせる……
俺の方がいつも、泣く貴女に負けて……
最後までするのを止めてしまうんだ……」
「剛さ……ん……教え……て………?」
彼の目を見詰めるが、ぼやけてしまい、表情が分からない。
剛の大きな溜め息が聞こえてから、諦め気味な彼の優しい囁きが耳を擽った。
「ほらまた……そんな顔をして……
生殺しもいいところですよね……
何ですか……俺に、何を聞きたいですか……?」
言い方は優しいが、太股を掴む手を彼は離してくれなかった。
――ちゃんと、布で隠れているのだろうか?
もし見えてしまっていたら、とても恥ずかしい……
だって、自分でも分かる程に濡れてしまっている……
こんなの、剛さんに見られたら……――
思わず目を瞑りながら、彼に聞く。
「剛さんは……他の……
だ、誰かと……こういう事をした事が……ある……の?」
「――」
彼が息を呑む気配がする。
私は、目を開けられないまま続けた。
「……だって……
キスも……脱がすのも……さ……触るのも……
そんなに慣れて……っ!
余裕みたいに笑うし……っ……
き……清崎……さんと……本当……は……し、したんじゃないの……?」
最後の方は涙声になってしまい、私はまたしゃくりあげてしまう。
涙を掌で拭い瞼を開けると、目の前の剛は、鮮やかに頬を染めて私を見詰めていた。
「剛さ……ん?」
びっくりする私を彼は突然抱き締めて、頬と唇、額にキスをしてから、首筋にも口付けの雨を降らせた。
「や……っ……剛さんっ……擽った……い」
「――菊野さん……それは……妬いてくれているんですか……?」
彼は、乳房に顔を埋めたまま、呟いた。
「――!」
「俺が、他の女性と経験があるのか……心配なんですか?」
「……っ」
取り繕う為の言い訳を考える間を彼は与えない。
私の手を優しく取り、王子様のように恭しくキスをして言った。
「おれは……菊野さんが初恋です……
抱き締めて、肌に触れるのも……貴女が初めてです……
俺は……貴女しか、欲しくありません」
触れられた手が熱を持って、身体じゅうに回り、頬処か、目の奥までが焼けるようだった。
剛の真剣な告白――
小説やドラマにしたら、陳腐な安い台詞なのかもしれない……
けれど、恋い焦がれている貴方が口にすると、それはまるで魔法のように私の全てを溶かしていく。
自分を塞き止めていた壁が、跡形もなく崩れ去る。
彼の言葉が、嬉しくて仕方がない。
私のことを、初恋だって――
触れたいのは、私だけだって――
貴方が、言ったの?
今、私に……?
彼を今見詰めるこの目は、どんな色をしているだろうか。
きっと、恋する想いが溢れてしまっているに違いない。
隠さなくてはいけない、と自分を縛ってきたのに……
もう、無理かもしれない。
もう、止められないかも知れない……
剛は、手を取ったまま、狂おしく輝く瞳で私を捉えて離さない。
逸らせない私の目から、熱い涙が溢れ、唇も震える。
――好き……好き……貴方が……
剛の目が、大きく見開かれた。
「菊野さん……今、なんて……?」
「……っ!?」
今、私は、口に出してしまったのだろうか?
剛のぎらついていた瞳はいつしか優しい光を帯びて、潤んでいた。
頬は小さな子供のように薔薇色に染まり、唇は笑うように端が上がる。
「……ち……違っ」
弁解しようとしても、彼にきつく抱き締められ、その腕が震えるのを見た私は、もう何も言えなくなる。
肩先に顔を埋め、剛は私の髪をかき抱きながら呟いた。
「菊野さん……っ……
本当に……俺を……?」
「っ……!」
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――言ってしまった……
とうとう、私は……
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