eyes to me~私を見て~second――愛は無敵――

ペコリーヌ☆パフェ

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躾られたBEST②

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「美名……もう大丈夫だぞ……どんなに怖い夢を見たのか知らんが……俺が居るからな」


 
 優しく大きな掌が頭をポンポンと叩く感触が堪らなく心地好く、美名は泣きたくなった。



「あ……あの男のひと……は」



 震える声で、勇気を出して聞いてみる。



「ああ……柳さんの上司で、ウエディング部門の一番偉い人らしいな」



「――そ……うなの」



 美名は、益々分からなくて戸惑う。


 そんな人が、何故あんな事を――?




 今、美名が目にした日比野は、物静かな優しげな面差しで、瞳の中に少し鋭さは見えたけれど、きちんとした普通の――
 
 いや、普通という表現は当てはまらない。

 整った眉に通った鼻筋、彫りの深い目元はミステリアスさを醸し出していて、背も高く手足も長い日比野は、俳優だと言われても不自然ではない風貌だった。







『君は美しい……』



 囁かれた低い声が蘇り、ぞくりと寒気が走る。



 あの時の彼と、今現れた彼が別人か、それとも自分が見た夢なのではないかと疑ってしまう程、信じられない。




 不意に、手首に小さな痛みが走り、美名はマットレスに沈んだ。



 手首を強く掴み、綾波が鋭い目を美名に向けている。



 こんな彼は久し振りで、胸がズクリと疼いた。



 綾波は美名の手首から手を離して、顔を歪めた。



「……悪い……乱暴にしたな……」



 美名は首を振る。



 綾波は、長い指で美名の頬に触れて真っ直ぐに見つめた。



「……お前、日比野さんが気になるのか」



「――!」



 美名の心臓が跳ね上がり、ドクドクと音を立て始めた。







「ち……ちが……」



 美名も綾波を見つめながら首を振るが、涙で目が盛り上がり溢れそうになる。



(どうしよう――本当に……さっきのが夢で無いとしたら……私――!)





「――なんてな、冗談だ」



 綾波は美名の額にいきなりデコピンした。




「痛っ……て、へっ……?」



 美名は額を押さえ怯えた目を向けるが、綾波は悪戯っぽく笑っている。



「全く……お前は直ぐに真に受けるな……アホか」



「な……なっ……酷……」



 美名の目からとうとう涙が溢れ、唇を結び、綾波の胸を拳で叩いた。



「うおっ……また殴るか」



 綾波は苦笑しながらも避けずに受け止め、まだ叩く美名を包み込む様に抱き締めた。



「も……うっ!剛さんのバカっ!バカバカ――!おかしな冗談は止めてよっ!バカバカバカ――!変態――!いじめっ子――!」




 美名は、綾波を責めながら心の中は安堵していた。


 あのまま問い詰められたら、誤魔化す事など出来なかった。





 
 綾波は、美名の髪をクシャクシャに弄ぶ。



「まあ……日比野さんはいい男だからな、お前、気を付けろよ?」


 彼は軽い調子で言ったが、美名はビクリと身体を震わせる。


「相当、具合が悪いんじゃないのか……?」


 綾波はそんな美名を優しい目で見つめると、肩まで毛布を掛けてやった。



「……何か欲しいものがあるか?柳さんに言って飲み物でも果物でも運んで貰おうか」



「――要らない……」



 美名が首を振るが、綾波はベッドの脇にある電話の子機を取りダイヤルを押す。



「まあ、何か口に入れとけ」



「――要らない……っ」



 美名は綾波の背中にしがみついた。







「おい……美名……これじゃあ電話が出来な……」



 美名は、困った様に笑い振り返る綾波の首に腕を廻して口付けた。



 美名は何かを振り払うかの様に目を瞑り、彼の唇を塞ぐと舌を割り込ませた。



「――っ」



 綾波は目を見開いて驚くがそれは一瞬で、忽ち甘く淫らな熱で全身が冒されて行く。



 美名のキスに綾波は烈しく反応し身体をたぎらせ、愛しい恋人の舌の動きを追い掛け、掴まえてなぶる様に咥内を掻き回す。



「――んっ」



 綾波の指が、背中から腰へ悩ましい動きでなぞり、美名は唇を貪られながら震えた。





 綾波は、唇を離し苦しげに息を吐くと、目を潤ませる美名を見つめながらネクタイを外し上着を脱いで放り、ベルトに手を掛け外していく。

 彼の呼吸が荒いのを察した美名は、最奥が一気に湿るのを感じた。



――早く、早く私を滅茶苦茶に愛して……あの人にされた事が、跡形もなく吹き飛ぶくらいに……



 美名も自ら胸のボタンを外し脱ぎ始めた。



 綾波の喉仏がゴクリと音を立てると、美名の両手を掴み、胸元に顔を埋める。



「あっ……」


 美名の甘い声に、綾波の理性は打ち砕かれた。



「お前を休ませようと……我慢していた俺の努力は無駄だったな……」



 低く笑い、美名の目を見つめながら、背中に手を廻して器用にブラのホックを外す。



 美名は綾波にしがみつき彼のシャツのボタンを外していくが、指が震えていた。





 
 綾波は、積極的に自分を誘う美名に甘く淫らに掻き乱されながらも、彼女が何かに動揺している事を見抜いていた。



 何かは分からないが、恐らくその何かを忘れるか打ち消したいが為に、抱かれたがっている――



(美名……どうしたんだ……何を怯えている……)



 綾波は、懸命にボタンを外そうとする美名の辿々しい細い指先に口付けし美名のブラを剥ぎ取るとワンピースを乱暴な手付きで脱がした。


 小さなショーツだけの姿の、優美な曲線に目を奪われると、綾波の身体の中心にある凶暴な獣はその身体の中を貫きたくて仕方ない、とでもいう様にビクリと震える。






 綾波は、秘園を覆う小さな布を剥ぎ取り、直ぐにでも貫きたい衝動に耐えきれず、思わず自分で硬くたぎった獣を握り締めて顔を歪めた。


「……く」



 美名は、目を見開いて綾波が自分の下腹部の物を自らの指で刺激を加え、呻くのを頬を染めて見てしまう。



「つ……剛さ……な、何をして……るの?」


 綾波は、手の動きを止めずに、呻いて美名を切なげに見た。


 身体には触れて来ないが、その鋭い目で犯されているかの様な錯覚をしてしまう。



 美名は、男が自らを慰める仕草を見るのは初めてで、ついじいっと見つめてしまうが、急に恥ずかしくなり顔を背けた。



「……だ、だから……何をしてるのよ……っ」



「……分かるだろ……くっ……」


 綾波は、息を乱して指を動かし、時折身体を震わせる。



「わ……わかるけど……何で今そんな……」



 美名は唇を震わせた。


(――そう、何故、直ぐに貫いてくれないの?私が、こんなに、剛さんを欲しいのに……)




「……いいのか」



 綾波の低い鋭い声がしたかと思うと、美名は肩を掴まれ、彼の方を向かせられ、唇を奪われる。





 唇を吸い舌を割り込ませながら、綾波は美名のショーツを膝まで降ろし、その細腰を強く掴むと欲のままに獣を突き立てた。



「ん……んん……ん!」



 烈しくお互いの咥内を掻き回しながら秘所をぶつけ合い擦り合う。



 美名の腕が悩ましく背中に絡み付時折爪を立てる感触に、綾波は彼女への愛しさを募らせた。


 快感にさらわれそうになりながら、綾波の胸の中には正体の見えない疑念の様な物がとぐろを巻いていた。



 本心は、美名を責めながら、何を考えているのか、不安なのかを問い詰めたい。



――だが、無理に抉じ開ける事をしたら、美名を傷付けてしまう……美名は、嘘を付くのが下手だ。時に、小さな嘘を可愛らしく誤魔化したりする仕草がたまらなく愛しいが、今、美名が抱えている不安はそんな生易しい物ではないのだろう。





 美名もまた、自分の中に生まれた不可解な疼きに戸惑い、綾波に抱かれる事で忘れようとしていた。



 不意に、綾波に顎を持ち上げられて熱く見つめられ、息が止まりそうになる程ときめく。



 出会ってから、何度も愛を囁きあって身体を重ねているのに、今でも変わらず彼に甘く痺れている。



 彼の瞳に、揺れる髪に、そのしなやかな腕に、時折見せる皮肉な笑みに、どうしようもなく魅せられてしまう。



 綾波は、打ち付けられるままの美名に焦れていた。


(――何か、言え……美名……でないと……無理矢理俺が聞き出す事になるじゃないか……)



「ああっ……」


 意を決して切り出そうとするが、腕の中の美名が身体を震わせて甘く喘いだ途端、綾波は堪らず律動を速めた。


 愛しい女に、ひと月触れずにいた。よく我慢出来たものだ。


 一度解き放たれた欲望は、爆ぜるその時まで押し止める事は不可能だ。


 綾波は、美名を愛する事だけで他に何も考えられなくなり、ベッドが壊れてしまう程に烈しく突き上げた。



 腰を引いても沈ませても熟れた蕾は潤って獣を締め付けて綾波を狂わせ、まともに考えが働かなくなりそうになる。



「う……っ……美……名……っ好きだ……」



「つ……よしさ……好き……」



 譫言の様に繰り返される恋の言葉は二人の身体の熱をますます上昇させて行く。







 美名は、目の前で髪を揺らし切なげに顔を歪め自分を見つめる恋人に、心の中で叫んでいた。



(剛さん――私……私、貴方がこんなに好きなの……に……他の人のキスで……変になるなんて…………どうしたらいいの……)



 波の様に揺れるベッドの上の二人は狂った様にお互いを求め貪った。


 綾波の指が熱く蕩けた秘園の入り口に挿し込まれ、巧みに掻き混ぜると美名は悲鳴を上げ彼の髪を掴む。



 高まった美名に獣が一際強く締められ、綾波は快感に呻いた。



「……そんなにイイのか……これが……ん?」



 爆ぜてしまいそうなのを歯を食い縛り食い止め、堪らなく疼く獣を宥める様に動きを緩やかにするが、美名が腰を動かし彼を追い詰める。






「美名……っそんなに……烈しくするな……っ」


 綾波は動きを止めたままで身体を震わせるが、美名は目を潤ませ腰の律動を止めずに柔らかい指を彼の腰に這わせ、そそり立つ獣の根本を持った。


「っ……お前……っそんな事を――」


 綾波は唇を歪ませると堰を切った様に突き上げる。



「あ……ああ……剛さ……っ」



 美名は、凄まじい彼の猛る熱を受け止め、その幸福に酔っていた。



 自分の下で揺れて喘ぐ美名が可愛くて堪らず、綾波はその唇を奪いながら腰を打ち付ける。



「ふ……ん……んんっ」


 愛らしい溜め息を吐きながら、口付けに応える美名の腕が綾波の首に廻され、髪を撫でている。



「――――っ」



 背中がゾワリと震え下半身に血流が一気に集まり、同時に秘園の壁が急激に綾波を締め付け、ついに爆ぜた。






 美名の中に熱い彼の精が放たれると、美名は身体をビクリと震わせ涙を流した。



「……美名」


 綾波は、快感の余韻からまだ醒めずに美名の乳房を弄んでいたが、彼女の涙に驚き指の動きを止めた。



 美名は、両手で顔を覆い身体を折りしゃくり上げる。



 綾波の胸には戸惑いと、自分の抱き方が乱暴だったのだろうかと心配も過るが、先程感じた美名の態度の違和感は間違っていなかったのだと思った。



 綾波は美名を最後の女と決めている。


 生半可な想いでプロポーズをしていない。


 今まで色んな事を乗り越えて来たのだからもう、ちょっとやそっとの事で動じないという変な自信があった。


 見ていて可哀想になる程に苦し気に泣きじゃくる美名を抱き締めながら、綾波は彼女が何を語るのか、或いは何も言えずにこのままなのかも知れないが、それでも総て受け止めよう、と心に決めた。



 
 美名は、乱れる息を必死で整えようとしているが、しゃくり上げるのが止まらずに呻いた。


「あ……う……っ……」


 綾波は、背中を擦ってやりながら静かに囁く。



「落ち着け……大丈夫だから……何か飲むか?」


 
 美名は涙を流しながらコクリと頷く。



 綾波は小さく笑い彼女の頬にキスすると、冷蔵庫の中のミネラルウォーターを出して蓋を開けてやる。


「あ……ありが……っ……ひっ……ん」



 美名は水を受け取るが、彼の目を見てまたしゃくり上げた。



「おいおい……そんなに泣いて干からびるぞ……いいから飲め」



「ふっ……ん……」



 美名は頷き口元に持っていこうとするが手が震えて上手く出来ない。



 綾波は溜め息を吐くと、ペットボトルに手を添えて彼女の口元に宛てた。





 綾波の手を掴み、無心に水を飲む美名を見る彼の眼差しはとてつもなく優しかった。


 最初水を飲むのに夢中だった美名も、途中から彼の顔を見て頬を赤らめる。


(もう……私ったら……見とれてる場合じゃないのに……)


 美名は半分残したままペットボトルを押しやった。


「もう、いいのか?」


「……」


 美名は、赤くなり俯いたまま黙っている。


 綾波は彼女の頭をガシッと掴むと拳でグリグリやり始めた。



「ひっ……い、痛い痛い――っ」


 美名はいきなりの彼の行動に面食らいながら彼の胸を押し、逃れようと身を捩るが、やがてフワリと暖かい腕が美名を包み込む様に抱いた。






 「……っ」


 不意打ちを突かれ、美名は息を止めてしまう。


 綾波は美名の長い髪を指に絡め、いつもの優雅な仕草で口付けた。



「……もう、泣き止んだか?俺の姫様?」



「……剛さ……」



 堪らなく甘い想いが込み上げて、美名は彼の胸に顔を埋めた。



「そういや、お前が泣くのは久々かもな……しょっ中ベーベー泣いてたからな……」



「べ……っ、そんなに泣いてないよ!……多分」



 美名が唇を尖らせ顔を上げると、吸い込まれそうな優しい彼の瞳が見ていて、美名の胸が痛みを覚える程にときめいた。



「いくらでも泣いても、怒っても……構わん 」



「――えっ?」



 綾波の長い指が、美名の頬に触れた。




「……ただし……俺の腕の中で……限定だぞ」



「……っ!」



 美名は茹で蛸の様に紅く染まった。





 綾波は、いつもする様に美名の髪を指に絡めたり二つに分けて揺らしたり、ふざけて美名の顔に巻き付けて遊んでいたが、美名は赤くなり俯いたままでいた。


 綾波は、三つ編みを作ってはまたほどく、という動作を繰り返しながらふと呟く。



「……どうだ美名……ここは気に入ったか?」



 美名は頷くしかない。都内一の高級ホテルの、恐らく最も豪華な部屋。何も文句などある筈は無かった。



「う……うん」



「まあ、こんな部屋に泊まれる事になったのは正直予定外なんだが……」



 長い指がうなじをそっと撫でて、美名はその心地好さにうっとりする。


「……でも……私……は」



「うん?」



「剛さんと……一緒なら……何処でも……幸せ」



「美名――」



 言ってしまってから猛烈に恥ずかしさが襲い、美名はシーツを引っ張り頭まで隠れてしまう。





「おい、何の真似だそれは」


 綾波がシーツを掴むが、美名は悲鳴を上げて避け、弾みでベッドから転げてしまう。


「いったあ……」



 壁に頭をぶつけて泣きそうな顔の美名だったが、綾波が側に来た途端、再びシーツを被って丸まってしまう。


「おい、美名、美名!何の新しい遊びだそれは」

 

 綾波が無理矢理シーツを引き摺り降ろすと、美名は真っ赤に目を潤ませている。

 頬も唇も深紅に染まり、裸の肩までがほんのり桜色だ。



 綾波は思わず息を呑むが、シーツを掴んだまま美名を真っ直ぐに見た。



「俺から逃げても無駄だぞ?」


「……っ」


「恥ずかしいのか?ん?」

「し……知らない」


 そっぽを向こうとする美名の顎を掴みこちらを向かせ、綾波は妖艶な光をその瞳に宿し、低く囁いた。


「知らなくないだろ……さっき俺に何て言ったか覚えているだろ……」

「……っ」


 綾波は、はにかむ恋人を滅茶苦茶に抱き潰したい衝動にかられ美名に手を伸ばすが、本当に潰してしまいそうで、沸き上がる恋情を抑えようと自分の拳を握り締めて堪えた。







 
 美名は、涙で盛り上がる目を綾波に向け、唇を震わせる。


「つ……剛さんっ……私」



「……うん、なんだ?どんな愛の言葉でも大歓迎だぞ?」



「ち……違っ……バカアッ」



「また言ったなバカて」



 綾波は、指で軽く美名の額を小突く。


 口付けて抱き締めて乱れさせて啼かせたい――


 そんな甘やかな欲望がまた身体の奥から溢れて来る。



 そう、当分は時間も何も気にしなくてもいいのだ。好きなだけ二人で抱き合って時を過ごす事が出来るのだから――




「わ、私っ!」


 すっとん狂な声で耳元で叫ばれ、綾波の鼓膜がビリビリと痛んだ。



「おい……姫様……お前の声は時として凶器になるって……そろそろ自覚してくれよ」






「ご……ごめんなさい」


 美名は掌で口を覆い小さく何かを呟いたが、綾波は聞こえず首を傾げて彼女の唇に耳を寄せて優しく訊ねた。



「何だ……?なんでも言ってみろ」



 美名は、彼の涼やかな瞳を直視出来ず俯くが思いきって震える唇を開く。



 言いたくなかった。けれど、黙っていたらもっと苦しい。



 美名は、綾波の形の良い耳に唇を寄せ、小さく告白した。



「私……ほ……他のひ……とに……キス……され……」



「――」



 笑っていた彼の頬が引き締まり、柔和に細めていたその瞳は大きく開かれ、美名を見詰めた。



「……っ」



 鋭い彼の眼差しに、美名はそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。




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