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11 エルノ・ブレンバリ教授の悩み
しおりを挟む教授になって二年が過ぎた。研究室の予算は今までの倍以上となり、配属される学生の数も増えた。実験効率が上がり研究データも着々と増えつつある。
また、昨年独立したヴァートレン師の魔力の液状化のアイディアは魔石開発の一助となり生成結果が安定して得られるようになった。
しかし教授という役職は、自分の研究だけでなく教授会議や学会参加や学会主催、学生への評価などの仕事が増え、研究に費やす時間は、以前より格段に減った。
学院の普通授業や研究室内の授業はまだいい。自分の性分から不特定多数の人に愛想よく振舞うのが嫌だ。
夕刻になると、頬の肉が攣る。
准教授までの方が良かった。
特にヴァートレン師とサクサが助教の時代は対外的な事もフォローしていてくれたので、研究に集中する事が出来た。いや決してヘルマンが無能ということではなく、助教の数が足りないのだ。ヴァートレン師が独立して、サクサが留学してしまった後に状況が変わり過ぎた。
……まてよ? 私は学者だ。考える事が仕事だ。
周囲の状況が変わったなら、自分の状況も変えるべきだ。一番自分が研究に集中しやすい状況を自分で作ればいいのだ。
まず、ヴァートレン師に戻ってきてもらおう。彼女の人当たりの良さと交渉の手腕は目を見張るものがある。また彼女が秘書を兼務していた時は、規律のある仕事が出来ていた。休憩もしっかり取らされていたし。よく気の付く良い嫁さんになると学長も言ってたではないか。
そうしてヴァートレン師の艶やかなブルネットの髪を思い出す。普段は低い位置でふんわりとしたシニヨンにまとめているが、たまに無造作に髪を下ろしている時などは、髪に触れた風が良い香りを運んできて触れてみたくてうずうずしたものだ。
……
…………
そうか!
ヴァートレン師と結婚すれば良いのか! そうすれば仕事でもプライベートでも心地良い生活が送れるではないか!
私の役職に群がる香水臭い色気過多の女性は苦手だが、彼女の様な清楚で頭の良い女性は一緒に居ても心地いい。
それに彼女との子供は魔力と知力に恵まれた子供に違いない!
そうと決まったら……
「きょーじゅー! 見つけましたよ~! ヘルマン先輩が凄く怒ってます! 私は怒りませんから出てきてください~」隠れていた司書準備室のドアが叩かれ思考が中断する。あの声はエンマだ。
……仕方ない、仕事するか。
久しぶりのスッキリした心地はなんだろう? やる気が出たということか? ヴァートレン師のおかげだな。
隠匿魔法を解除して部屋を出る。
とりあえず、やる事をすべて片付けてそれから彼女にプロポーズする作戦を考えよう。
久しぶりだな、こういう気分は。自然と口角が上がるのを止められない。
「教授……ニヤニヤしててキモイ……」後ろを歩くエンマのつぶやきは、エルノ・ブレンバリ教授には届かなかった。
◇◆◇◆
逃げて~リスベス逃げて~。いきなり結婚に持っていく所が朴念仁のスゴいところ。思い込みの強い男性は怖いよね。
私的にはこういう対等な結婚もアリだとは思いますが、それでは恋愛小説になりませんよね。
昨日から上手く文章にできなくて一度あきらめて床に就いたら、エルノ・ブレンバリ教授が下りてきて更新できました。エルノ・ブレンバリ教授怖い。
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