ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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北関東で祖母の訃報を聞く 3

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 用件を知るには実家の電話にかけるしかないが、両親は「早寝早起き朝ご飯」で六十数年通してきた典型的かつ健康的な田舎者夫婦なのでさすがに寝てしまっているだろう。体調を崩しているならなおさら忍びない。

 次の朝一番に電話することに決めて床に入ったところ、ものの五時間後に起こされた。長男のサッカークラブの連絡が朝早くに入ることがあるので、早朝には着信音量が戻るよう設定してある。

 なして電話さ出ながったどうして電話に出なかったの

 少々非常識な時間に掛けてきておいて「おはよう」でも「久しぶり」でもなく私を責める母は初めてなので驚いた。確かに私自身、マメに近況報告するような殊勝な娘ではないがーー
 怒っているというよりは輪を掛けてくたびれ果たような口調だった。でも怒ってはいるのだろう。

「何時でも構わないから急いで折り返せ」

 と留守電に一言付け加えてくれさえしたらこっちだってそうしたのにーーそう言い返したいのをぐっと堪えた。母にとっては留守電にメッセージを残すという行動自体、未だにハードルが高いらしい。

「ごめん。職場の新年会で。夜遅かったから朝かけ直そうと思ってた」

 と答えると今度は長いため息が返ってきた。

あのやぁあのね、お祖母ちゃんが亡ぐなったんだよう」

「……えっ?ほんとう?」

 四十路間近の私の祖母だから、それ相応に高齢だ。「ついにきてしまったのか」という思いもあるがやはりショックだった。

 若い頃、戦後の窮乏期に生活のために無理を重ね、六十代で既に海老のように腰の曲がっていた祖母の姿を思い出した。
 長年、血圧を下げる薬を飲んでいたのは知っていたが他に持病があるとは聞いたことがないし、記憶にある限り入院歴もない。

「葬式は来週の月曜だ」

「いつ?どうして?やっぱり具合悪かったの?」

 矢継ぎ早に聞きながら頭の隅では、子どもたちの忌引きや学校のスケジュール、パートのシフトのことなどを忙しく考えていた。日程に余裕があるのはありがたい。

んねでぁいいえ。昨日の昼間、昼ご飯食べるまで何とも無がったのさ、いぎなりぱたんと倒れて……」

はあもう死にてえ」「おじいさん迎えさ来てもらいてえ」などと暇さえあれば息を吸って吐くようにぼやく祖母だったので、子ども心にも長生きしないのではないかと何となく思っていた。
 が、気づくと去年無事に米寿を迎えていて、私たち一家が帰省した夏休みに誕生日より少し早めのお祝いを、一緒にしたばかりだった。
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