ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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北三陸への道 3〜みっこ伯母に会う〜

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 母の二番目の姉にあたる「みっこ伯母さん」こと満子伯母は仙台の服飾学校を出て衣料品の会社に就職し、家庭を持った。そのせいか垢抜けていて、この界隈では目を引くセンスの良さだ。が、悪目立ちして浮くほどではない。

 それに丸顔でも目鼻立ちがはっきりしているから、たしなみ程度の薄化粧が年を重ねていても上品に映える。この絶妙なセンスのよさは母方の女きょうだい共通のものだ。
 若い頃、東京あたりに揃って住んでいたら、姉妹のうち一人くらいはスカウトされて女優になっていたかもしれない……残念ながら、私は父親似でそのDNAのおこぼれにはありつけなかったようだ。

 みっこ伯母は面倒見のいい性格で毎夏、両親の好物である紫蘇巻きを実家宛に送ってくれる。私も大学時代、仙台の七夕見物に友達と行った時に泊めてもらった事がある。
 今回の葬儀に参列がてらはるばる手伝いに来てくれるという話は聞いていた。

「あやあや、遠いのさ、偉いごどやぁ。はぁ中学生さなる?」

 みっこ伯母は美人だが人の良さが滲み出ている笑顔で颯也に矢継ぎ早に話しかけた。
 字面ではわかりづらいのだが、みっこ伯母は仙台に嫁いで40年以上になるので、これでも訛りは少ない。
 ただ北三陸に戻ってくるとやっぱり言葉も戻るらしい。

「学校ば休んだの?大変だったやぁ。ひっこ様が来たものぉ、お婆ちゃんも喜んでさるべ」

 颯也は私の両親とのコミュニケーションに不自由する事はないが、祖母のようなコテコテの南部弁は半分くらいしかわからないらしい。伯母のように高い声でまくし立てられるのも厳しいらしく、「通訳……」と目で訴えてくる。

「いいから黙って大人しくしてろ」

 と、私も目で圧を返しつつ、笑顔で代返。

「いや、颯也は来年中学生です」

「そうそう、颯也ちゃんだったねえ。 んでもはあ、中学生だふうで でももう、中学生なのね。こないだまで赤ちゃんだとばりばかり 思ってだったのさ、おらも年っこ取るはずだぁやぁ思っていたのに、私も年をとるはずだ

離れているせいか、最後のセリフは私も子どもの頃、会うたびに言われていた記憶がある。つい吹き出した。

「ギリギリやだ伯母さん、皆そうですよ。私だってもう40近いし」

 やはり字面ではわかりづらいのだが、私も改札を出たあたりからイントネーションだけは北三陸流だ。

(※ちなみに読み手の支障を考えて表記上はだいぶ省略しているのだが、会話文はほぼ濁点をつけて発音するのが正しい)
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