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北三陸への道 5〜墓じまいの思い出〜
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集落の共同墓地の一画、自分の家の墓の隣に父方の本家のーー正確に言うと私の曾祖父で父の祖父の実家のーー墓があり、私達も毎年お盆のたびに家の墓と一緒に墓碑銘もない自然石の墓石を拝まされていた。
拝むこと自体に異論はないが「なんでだろうな」とは思っていた。
本家は元々実家と同じ町にあったが長内さんの前の代で盛岡に移ってしまい、墓の管理をする人がいなくなったので父がずっと代理で墓守をしていたーーということは一族の秘密でも何でもなく、質問するたびにきっと説明されていたのだろうが子どもの頭では理解するのに難しかっただけだと思う。
父も決して嫌々管理していたわけではないが、互いの家ですっかり代が替わってしまったため懸案事項ではあったらしい。曾祖母の葬式の時に来ていた本家筋の人たちとの間で話が進み、次の年にお坊さんを呼んでこちらの墓の「魂抜き」をすることになった。
私はちょうど颯也くらいの年で、両方とも中学の制服を着て参列した。その参列者の中に長内さんもいたはずなのだ。
長年住み暮らした土地から子孫の住む町に引っ越すこととなったご先祖様にとって、どちらがよかったのかはわからない。だが、結婚の予定も意志もあるのかどうかわからない独り者の晃夫とよそに嫁に出た私の姉弟にこのまま託されるよりはよほどしっかり祀ってもらえるだろう。
今住んでいる郊外の住宅地では特に、ご近所も親戚どうしのつき合いもお互い煩雑だからと必要最低限で、代が替わるとあっさり疎遠になりやすい。
おまけにこの少子化で直系の子孫ですら当てにならず、管理者不明のお墓も増えているそうだ。そもそも菩提寺自体が後継者問題を抱えていたりする。
「うちは一人っ子だし、自分と夫とそれぞれの実家の最低でも祖父母の代……って考えたら、そんなのとても背負わせられないわ。今の時代、海外に住むって事もあり得るんだし……」
当番を代わってくれたママ友が、話のついでにそんなことを言っていた。私より若い人が本気で「墓じまい」を考える時代なのだ。
律儀に三日間通夜をやり、家と墓の両方で三年間蝋燭を灯し続けるこの地域も長い間にはどうなっていくのかはわからない。少子高齢化と過疎化は全国よりも進んでいる。
次の世代や次の次の世代の枷にならないような方法を見つけていくしかないのだろうが、この地域に長年張り巡らされていた根のような物が徐々に切れていってしまうような寂しさはある。
「わざわざ来ていただいてありがとうございます」
改めて二人にお礼を言い、エレベーターでバスロータリーのある一階まで降りた。二人の方が新しい駅に慣れている様子で足取りに迷いがない。
拝むこと自体に異論はないが「なんでだろうな」とは思っていた。
本家は元々実家と同じ町にあったが長内さんの前の代で盛岡に移ってしまい、墓の管理をする人がいなくなったので父がずっと代理で墓守をしていたーーということは一族の秘密でも何でもなく、質問するたびにきっと説明されていたのだろうが子どもの頭では理解するのに難しかっただけだと思う。
父も決して嫌々管理していたわけではないが、互いの家ですっかり代が替わってしまったため懸案事項ではあったらしい。曾祖母の葬式の時に来ていた本家筋の人たちとの間で話が進み、次の年にお坊さんを呼んでこちらの墓の「魂抜き」をすることになった。
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律儀に三日間通夜をやり、家と墓の両方で三年間蝋燭を灯し続けるこの地域も長い間にはどうなっていくのかはわからない。少子高齢化と過疎化は全国よりも進んでいる。
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