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ただいま 4〜故郷の街並み〜
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「晃夫が今、来るすけ来るじょうすけ、駅さ入って火っこさあだって待ってろ」
父はそう言って申し訳無さそうにする伯母と長内さんを乗せて家に戻って行った。
故郷の駅舎は町を出た時の古びたコンクリート駅舎だ。北は八戸から青森、南は宮古から釜石、そして仙台まで路線がが繋がっている。山海の幸に恵まれながら山と海に隔絶された沿線住民の、近代以来の悲願だったはずなのだが、紆余曲折を経て昭和の半ばに全通した時にはもうモータリゼーションとマイカーブームがこの僻地にも到来していて、各駅停車のローカル線新は赤字路線化が確定していた。
私自身、高校の時友人とファンだったアーティストのコンサートのために八戸まで遠征したり、隣村に住む先輩の家に遊びに行ったりしたきりで、もう何年も駅舎の中に足を踏み入れてないーーいや、学生時代に新幹線の切符を買ったか。
駅の待合室には昔ながらのダルマストーブが置いてあり、ほっかむりをした祖母や母の年代の行商のおばさん達がーーすぐ横の売店のおばちゃんも一緒になってーー西陽の差し込む空間で四方山話に花を咲かせていた。
一応気になって中に入ってみたが、小綺麗に改装されていてストーブも彼女達ももうそこにはなく、バスの切符売り場の人の年配の駅員が暇そうにしているだけだった。
弟の晃夫が来るまで15分か20分くらいはかかるだろう。暖房は効いていて椅子は空いているから待つ分には差し支えないがずっと座りっぱなしだったし、せっかくだから雪の中の道を颯也と歩いてみるのもいいかと思った。
駅に来る道はどのみち一本だし、行き違うことはないだろう。
という訳で母子二人、シャッターを閉めっぱなしの店が記憶の中より目立つ、駅前の通りを危なっかしくつるつるしながら歩いて行く。
中学と高校生の頃は自転車通学だった。多少の雨はもちろん、降り始めの雪や道路が除雪された後ならカッパを着たりスリップに用心したりしながら自転車で行った。
とは言え、街中の道路以外は雪掻きし切れずに凍っている道の方が多かった。
ヘルメット着用義務化以前の時代なので、校則で決められていた中学生の三年間は渋々被っていたが、高校生になったらもちろん被らない。チェーンなんかも巻かないので今思えば危険極まりないのだが、運動神経がイマイチな私でも中学の最初の冬に一度派手に転んだくらいのものだ。
大人も子どももそれが半ば当たり前のような光景だったが、もしかしたら建前上は禁止されていたのかもしれない。
いよいよ雪が積もると歩いて駅まで出て、高校までバスに乗った。それが一時間くらいの道中だった。
それでも多忙な親に車で送ってもらうということはまずなかった。
かといって、雪の積もった日に焦ったとか必死に急いだ記憶もないし、遅れる生徒に始業時間を合わせてくれるという事もなかった。
大人も子どもも雪があるという前提で暮らしていたし、それが普通だった……そんな話をしながら母子二人、よたよたと歩く。
父はそう言って申し訳無さそうにする伯母と長内さんを乗せて家に戻って行った。
故郷の駅舎は町を出た時の古びたコンクリート駅舎だ。北は八戸から青森、南は宮古から釜石、そして仙台まで路線がが繋がっている。山海の幸に恵まれながら山と海に隔絶された沿線住民の、近代以来の悲願だったはずなのだが、紆余曲折を経て昭和の半ばに全通した時にはもうモータリゼーションとマイカーブームがこの僻地にも到来していて、各駅停車のローカル線新は赤字路線化が確定していた。
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駅に来る道はどのみち一本だし、行き違うことはないだろう。
という訳で母子二人、シャッターを閉めっぱなしの店が記憶の中より目立つ、駅前の通りを危なっかしくつるつるしながら歩いて行く。
中学と高校生の頃は自転車通学だった。多少の雨はもちろん、降り始めの雪や道路が除雪された後ならカッパを着たりスリップに用心したりしながら自転車で行った。
とは言え、街中の道路以外は雪掻きし切れずに凍っている道の方が多かった。
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いよいよ雪が積もると歩いて駅まで出て、高校までバスに乗った。それが一時間くらいの道中だった。
それでも多忙な親に車で送ってもらうということはまずなかった。
かといって、雪の積もった日に焦ったとか必死に急いだ記憶もないし、遅れる生徒に始業時間を合わせてくれるという事もなかった。
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