ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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ただいま 3〜父の携帯電話〜

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 初代iPhoneとAndroidが登場する少し前、二つ折りの携帯電話フィーチャーフォンでインターネットが使えるようになりガラパゴスケータイガラケーとしての進化が始まった頃だ。

 携帯電話が「ビジネスマンと若者用の最先端の持ち物」として急激に普及した数年前、私は喧嘩とトラブルの絶えない兄弟育児の真っ只中にいた。
「コンピューターの2000年問題」など世間であれやこれや騒ぎ立てるのを他人事として聞いていたし、個人的には小学生の頃にブームになった「ノストラダムスの予言」の「恐怖の大王の1999年」が無事過ぎた事に心の片隅でホッとしていた。

 その後、各社の価格競争で家族割引なども登場し、あっという間に専業・共働きを問わず同年代の主婦やママ友の間でも携帯電話持ちが多数派になっても、私自身は「あれば便利なのかな」くらいで、未だにそれほど欲しいと思っていない。
 豊は仕事の都合で持ち歩いてはいるが。

 母の書棚にあった、創設者の花森安治氏が編集長をしていた頃の「暮らしの手帖」に掲載されていた「お母さんが読んで聞かせるお話」(藤城清治氏の美しい挿絵かついていた)のついでに辛辣な「商品テスト」記事を愛読するひねくれた小学生だったお陰で、企業やマスコミが喧伝し人々が飛びつく最新の流行や最先端の物に対して少し斜に構えてみたり懐疑的になるところがある。
 メール依存や有害コンテンツなど、未成年に対するマイナスの影響があるのも報道で知っていたし。

 ただ時折、休日や放課後に「誰とどこで遊ぶ」という見通しを持つ事もそれを言語化する事も難しく、公園や児童館にふらりと出かけてはその時々のなりゆきで、親の監視の緩い友達の家に上がり込んだり遠出したりして所在不明になり、夜半に度々クラスや子ども会の連絡網のお世話になってしまう悠也に関しては、「はしり」だったキッズケータイでも持たせた方がいいのか……と悩んではいる。

 平成の始めに買ったマニュアル車のグロリアを大事に乗り、「音響機器はソ◯ー、家電はナシ◯ナル」というマイルールを頑なに信じて昭和の頃の製品を愛用してもいる父が、世の流れに乗って早々に携帯電話を駆使しているのは別に不思議ではない。

 父の長年勤めた職場はこの町の電報電話局ーー現在のNTTで言わずと知れたdocomoの親会社なのだ。
 それに古い物が捨てられないだけで、根は新し物好きなのだ。しつこく使い続けていた家電類がこのところ順次寿命を迎えていて、新機種を選んで新調するためここ数年、帰省するたびに隠居生活が格段にグレードアップしている。

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