ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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園長先生 4

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 果たして無人の園庭には私達が遊んだ覚えのある遊具がペンキを塗り替えたり、ブランコやシーソーの部品を取り替えただけでそのまま残っていたので驚いた。
 唯一、某人気機関車系キャラの遊具が渋々新調されたかのように置いてある。

 子ども達は歓声をあげて敷地内に突進した。

 園児が田圃に落ちないよう、フェンスだけは当時から張り巡らされていた。やんちゃ盛りの晃夫のような子達は乗り越えて勝手に抜け出してしまい、先生によく怒られていた。

 トタンの平屋だった園舎も綺麗な二階建てに改築されていた。二階から滑り台がついているのが羨ましいと思ったが、遊具ではなく避難用なのかもしれない。
 教会の庭も子ども達にとっては遊び場で区別した事なんかなかった。やんちゃな子達に釣られて大きな木に登っては自力で降りられずに泣いて、私は私でやはり先生によく怒られる子だった。

「ウサギ、まだ飼ってるかなあ」

 思い出に浸らながら子ども達をひと通り遊ばせた後、ふと気になった。

 正確に言うとウサギ小屋も保育園ではなく教会の庭にあった。
 園児の意識では毎朝礼拝する教会も遊び場の一部みたいなものだったが、一応神様に敬意を払ってはおり、脱走常習組も悪さをするようなことはなかった。

 自由放埒そうに見えて不思議とその辺は自分達で区別がつけられたし、長じて「荒れる学校」世代と呼ばれても高校生の頃には大半の子が落ち着いて地に足を着けていた。

 子ども達がウサギを見たいというので記憶を頼りにそちらに回ってみた。

「あれ、静子ちゃんでねえ?」

 牧師姿でも背広姿でもなく、作業着の園長先生が小屋の掃除をしていた。

 まだ(十何代目かの?)ウサギが健在だった事も、園長先生が自分でウサギの世話をしていた事にも驚いたが、これまで何百人と卒園児を送り出しているというのに四十路近い私が数十年ぶりでもちゃんとわかったのにはびっくりしたーー子どもの頃から今に至るまで父そっくりだと言われ続けてきたので、そのお陰もあるかもしれないが。

 この時も「ずいぶん大きくなって」と繰り返し言われたが、大きいどころかもういいおばさんだ。

 私の中の先生のイメージが当時のままであるように、みっこ伯母や園長先生の中の私は大人になろうが子どもを産もうが、小さな子どものまま上書きされずにそこにいるのかもしれない。

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