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祖母の小屋 3
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それなのに週に一、二度は「凍み」系の味噌汁が出される。しかも仕事に出る母が毎朝、家族の人数×三食の計算で大量に作り置きして行くもんだから嫌々消費する側にとっては呪詛のように思えた。
その頃の父は雷親父で、子ども達には「嫌いだから食べ残す」という選択肢は無かった。せめてもの根回しで、一番嫌いな凍み大根だけは外してくれと母に嘆願したのだが毎回聞き流された。
大人になって「これもありかな」という程度に味覚が成長すると、今度は祖母が弱って「凍み」系の保存食を作れなくなってしまった。
よく言えば荒めの「高野豆腐」と思えなくも無い凍み豆腐や味わいの残る凍み菜はともかく、「凍み大根」に関してはほぼ繊維分しか残らないので食味的には「食べる物がそれしか無い」環境でなければ誕生しなかったと断言できる代物だ。
父だって戦後の貧しい時代にはそればかり食べさせられたのだろうと思うので、惰性と祖母への義理で食べているのだろうと何となく思っていた。
だが父は今でも「凍み大根」の季節になると真新しい農産物直売所に出かけては時々買ってくるので、本当に好物だったようだ。
祖母がそれらの加工も含めた農作業から完全にリタイアしてからはバトンタッチした父が農機具置き場兼食糧庫兼物置として使っているか、古い醤油で土を煮詰めたような独特の酸えた匂いは当時のまま今も漂っている。
祖母がいなくなった後もこの匂いだけはずっととれないのかもしれない。
その小屋の中は今、さらにカオスな状態になっている。葬儀会場のスペースを大急ぎで確保するために突っ込まれた祖母の部屋にあった長持ちや箪笥、鏡台などが場所を取り、言われた物を探すのも一苦労だ。
祖母の嫁入り道具だとすれば昭和の始めから戦中の物か。子どもの頃から見慣れた調度だが、あまりに見慣れすぎていてせいぜい「レトロだな」という感想しかない。
ひょっとしたら貴重な物なのかもしれないが、だからと言って形見分けでもらっていくわけにもいかない。
葬儀が終わればいずれ業者を呼んで粗大ゴミとして処分されてしまう運命なのだろう。
その頃の父は雷親父で、子ども達には「嫌いだから食べ残す」という選択肢は無かった。せめてもの根回しで、一番嫌いな凍み大根だけは外してくれと母に嘆願したのだが毎回聞き流された。
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よく言えば荒めの「高野豆腐」と思えなくも無い凍み豆腐や味わいの残る凍み菜はともかく、「凍み大根」に関してはほぼ繊維分しか残らないので食味的には「食べる物がそれしか無い」環境でなければ誕生しなかったと断言できる代物だ。
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だが父は今でも「凍み大根」の季節になると真新しい農産物直売所に出かけては時々買ってくるので、本当に好物だったようだ。
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その小屋の中は今、さらにカオスな状態になっている。葬儀会場のスペースを大急ぎで確保するために突っ込まれた祖母の部屋にあった長持ちや箪笥、鏡台などが場所を取り、言われた物を探すのも一苦労だ。
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