ばあちゃんの豆しとぎ

ようさん

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通夜三日目 3〜葬儀は送り出す人、生きていく人の為にあるのだとよく言いますが〜

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 葬儀ほど突発的なイベントの割に、正確性や完遂度が求められるものはないだろう。たとえ数日の猶予があったとしても、一度にいろんなパターンを想定して一度に色んな事を考えておかなきゃいけない。

 豊の伯父の葬儀は平日だったのだが、伯父も従兄も顔が広くつき合いのいい人だったせいか平日にも関わらず予想以上に人が集まった。火葬の間、地元のJA会館を借りて行った「お清め(精進落とし)」の酒宴も席が足りなくなり、義母と豊の従姉妹達、私といった親族側の女衆一同は遠慮して隣の「食の駅」で軽食をとったくらいだ。

 呼ぶ人が決まっている年回忌法要とは違い、新聞の訃報などで知って誰がどれだけ集まるかわからない田舎の葬儀では、時々こういう事があるらしい。職場の単身の方の葬儀では、親族も少ないから火葬場までついて行ってくれと頼まれた事があったくらいなので、こんな事もあるのかと驚いた。

 従兄の妻さんがこちらに回り、買ってきた海苔巻きセットとペットボトルを配りながらしきりに謝っていた。故人の介護や入院中の世話を交代で担っていたというが、最後まで「裏方」に徹して公にねぎらわれる場がないのはちょっと気の毒な気がした。

 だがそこは全員、らいと空っ風に揉まれたかかあ天下の上州女である。義母も義従姉妹も伯父さんとこの嫁さんも全員、堰が切れたように喋る喋る……
 家族連れで賑わう野外のフードコートで海苔巻き片手にキャッキャウフフ(いや、ペチャクチャガハハ……かな?)する喪服の女の一団はかなり奇異な光景だったろう。

 ちなみに「かかあ天下」というのは「亭主関白」の男女逆転バージョンだとよく誤解されるが、むしろ逆である。働き者でしっかり者(そうならざるを得ない場合も含めて)の妻が、あんまりそうでもないくせに「酒飲みで口べえ口ばかり」で威張る夫をフォローしつつ、財布の紐と家庭内の決定権を密かに握っている……というのが実態だ。
 中山道などの街道沿いで培われた社交的な気質と、二毛作や生糸生産など女性でも働けば働くほど現金収入が得られた歴史風土が背景にあるという説がある。女性が朝市で家計を支えるという輪島の「とと楽」に近いのかもしれない。

 こういった地域色溢れるカテゴライズも、IT化やインバウンドに伴う産業構造の変化とジェンダーフリー化で徐々に死語化していく……のかどうか。

 ところで、社会人の心得として読んだマナー本などでは必ず、参列側の心構えとして「急な不幸に動揺し、多忙な遺族の心情を配慮して負担にならないよう云々」といった事があれこれ書かれてあった。
 葬儀が急な事であるのも誰かが喪主を務めなければならないのも仕方ない事にしても、参加者数を読み切れない酒宴というのはどうなのだろう。

 あまりに遠慮されて空席が目立つのもやり切れないし、かといってあぶれる人が出てしまうのも……などと頭を悩ませるのはかなりの負担ではないのか。

 外野から何を言われようと葬儀が内々に向けて簡素化していく流れは、やはり必然なのかもしれない。


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