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お義母さん、ありがとう
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「いいよ、いいよ。せっかく遠いところに帰省したんだもの、一日くらいお祖母ちゃんの近くでゆっくりしたら」
「えっ……いいんですか?」
「うん。悠也も明日から学校行くって言ってるし、私はどの道また戻る気でいたし。もうすぐお母さん帰って来るんだから一日や二日あんじゃなかんべ」
義母を再召還することは免れないようだが、ありがたい気遣いに思わずホロリと涙がこぼれそうになった。
近すぎない距離にいるお陰で上手くいっているのかもしれないが、私は夫よりも義母に恵まれたようだ。
お言葉に甘えることに決め、また悠也に電話を代わってもらった。
「岩手のひいおばあちゃんのお葬式は無事に終わったんだけど、お母さんちょっと疲れちゃったみたいなの。明日はお休みして、二日に帰ってもいいかな」
私は「ふつか」と発音した。
悠也があっさり「いいよ」と答えてくれたのでホッとした。
悠也は「明日」「明後日」といった時間の把握の仕方や曜日の感覚が曖昧なので、予定の話はカレンダー片手に日付で伝えることにしている。
悠也にしても「ふつか」が「二日」である事を理解していないわけではない。が、規則性のはっきりしない慣用句的な物の数え方も苦手らしい。はっきり数値化されている方が間違えることがないので安心できるようだ。
多くの人は普段意識せずに使いこなしているが、日本語の表現というのは細かいところが意外と複雑で曖昧だ。
「ありがとう。悠也がお手伝いしてくれてお祖母ちゃんも助かってるんだって。もう少しだけ頑張ってちょうだいね」
「うんわかった。ひいおばあちゃん、どうなったの?」
これまで、颯也の事くらいしか聞いてこなかった悠也が気遣わしげに聞いてきた。これまでの時間で彼なりに「身近な人の死」「血縁の死」という重い事実を、実感が無いなりに噛み砕き、受け止めようとしていたのだろうか。
「ひいおばあちゃんはお葬式の後、お墓に入ったよ。お坊さんにお経を唱えてもらってみんなでお祈りして、極楽に行ったよ」
「ごくらくって天国のこと?」
「そう。たくさん歳をとっていたから、きっとものすごく疲れちゃってたんだね。夏休みにみんなで、ひいおばあちゃんの八十八歳のお祝いをしたよね。覚えてる?」
「うん」
「これからも長生きしますようにって願うお祝いでもあったんだけど、お願い事って叶えう時もあれば、叶わない時もあるんだよね。残念だけど」
「そうだね」
「お父さんも悠也もお葬式に出られたらよかったんだけど、お家でお葬式だったから難しかったんだよね。お盆の時、一緒にひいおばあちゃんのお墓参りに行こうね」
「わかった」
豊はさておき、環境が許せば悠也にも祖母を見送らせたかったーー祖母のためにも、悠也自身が「命」について実感を持って生きるためにも。だが、できる限りの最良の選択をしたと思いたい。
颯也に電話を代わると、彼も嬉しそうに悠也、豊、義母と順繰りに話していた。
「えっ……いいんですか?」
「うん。悠也も明日から学校行くって言ってるし、私はどの道また戻る気でいたし。もうすぐお母さん帰って来るんだから一日や二日あんじゃなかんべ」
義母を再召還することは免れないようだが、ありがたい気遣いに思わずホロリと涙がこぼれそうになった。
近すぎない距離にいるお陰で上手くいっているのかもしれないが、私は夫よりも義母に恵まれたようだ。
お言葉に甘えることに決め、また悠也に電話を代わってもらった。
「岩手のひいおばあちゃんのお葬式は無事に終わったんだけど、お母さんちょっと疲れちゃったみたいなの。明日はお休みして、二日に帰ってもいいかな」
私は「ふつか」と発音した。
悠也があっさり「いいよ」と答えてくれたのでホッとした。
悠也は「明日」「明後日」といった時間の把握の仕方や曜日の感覚が曖昧なので、予定の話はカレンダー片手に日付で伝えることにしている。
悠也にしても「ふつか」が「二日」である事を理解していないわけではない。が、規則性のはっきりしない慣用句的な物の数え方も苦手らしい。はっきり数値化されている方が間違えることがないので安心できるようだ。
多くの人は普段意識せずに使いこなしているが、日本語の表現というのは細かいところが意外と複雑で曖昧だ。
「ありがとう。悠也がお手伝いしてくれてお祖母ちゃんも助かってるんだって。もう少しだけ頑張ってちょうだいね」
「うんわかった。ひいおばあちゃん、どうなったの?」
これまで、颯也の事くらいしか聞いてこなかった悠也が気遣わしげに聞いてきた。これまでの時間で彼なりに「身近な人の死」「血縁の死」という重い事実を、実感が無いなりに噛み砕き、受け止めようとしていたのだろうか。
「ひいおばあちゃんはお葬式の後、お墓に入ったよ。お坊さんにお経を唱えてもらってみんなでお祈りして、極楽に行ったよ」
「ごくらくって天国のこと?」
「そう。たくさん歳をとっていたから、きっとものすごく疲れちゃってたんだね。夏休みにみんなで、ひいおばあちゃんの八十八歳のお祝いをしたよね。覚えてる?」
「うん」
「これからも長生きしますようにって願うお祝いでもあったんだけど、お願い事って叶えう時もあれば、叶わない時もあるんだよね。残念だけど」
「そうだね」
「お父さんも悠也もお葬式に出られたらよかったんだけど、お家でお葬式だったから難しかったんだよね。お盆の時、一緒にひいおばあちゃんのお墓参りに行こうね」
「わかった」
豊はさておき、環境が許せば悠也にも祖母を見送らせたかったーー祖母のためにも、悠也自身が「命」について実感を持って生きるためにも。だが、できる限りの最良の選択をしたと思いたい。
颯也に電話を代わると、彼も嬉しそうに悠也、豊、義母と順繰りに話していた。
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